315 / 822

37.デパートを満喫しよう!(2)

「ねぇねぇお兄ちゃん」 「ん?」 「これ、どんなおもちゃなの?」  日曜朝の女の子向けアニメ、『魔法少女プリティクッキー』が大好きで、いつも放送開始の三十分前にはテレビの前でスタンバイしているミオ。  そんな微笑ましいショタっ娘ちゃんの目に真っ先に留まったのは、あらゆるお菓子のイラストと、パティシエ姿で微笑む露原(つゆはら)エリナちゃんが描かれている、大きな箱だった。 「なになに? えーと、商品名が『プリティ・スイーツ・メーカー』だから、たぶんこれはクッキングトイだな」 「くっきん……ぐとい?」 「クッキング、トイね。簡単に言うと、材料さえあれば、これ一つで本物のお菓子を作る事が出来るんだよ」 「え! お菓子が作れるの!?」  甘いもの大好きなミオが、お菓子というフレーズを耳にしたからか、やや興奮ぎみに聞き返してくる。 「作れるのは間違いないんだろうけど、問題は、何のお菓子が出来上がるかなんだよなぁ」  俺が子供の頃は、実際にホットケーキが焼けるミニチュアの電気コンロなんかも売ってたもんだが、これはどういう類の玩具なのかな。  おもちゃの箱を手に取った俺は、かがみ込んでミオの目線に合わせ、裏面に載せられた商品説明を一緒に読み始める。 「んーと、『プリティクッキーがお菓子屋さんに大変身。自分だけのオリジナルチョコを作っちゃお!』だって。お兄ちゃん」 「へぇ、チョコか。て事は、一旦チョコを溶かして、専用の型に入れて固めるタイプのおもちゃみたいだね」 「それ、ボクでもできそう?」 「大丈夫じゃないか? このおもちゃは対象年齢が八歳以上だから、十歳のミオなら問題ないと思うよ」 「そうなんだ! ボク、これ欲しいかも……」  あれだけ食いつきの良かったミオの口から、「かも」という言葉が付け足された背景を察するに、この子はおそらく金銭面の事を考えて、俺に気を遣っているのだろう。  おもちゃ自体は二千円ちょいというお手頃価格なのだが、子供たちのお小遣い事情を考えると、やはり高く感じるのかも知れない。  かくいう俺が子供の頃も、駄菓子屋で百円使うなんて相当な豪遊だったもんだから、その気持ちはよく分かるよ。  でも、こういうクッキングトイは〝知育〟に役立つし、何よりミオが初めて興味を示して欲しがっているおもちゃなんだから、記念にプレゼントしてあげたいよなぁ。

ともだちにシェアしよう!