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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(28)
ショタっ娘ちゃんの黄色い声援を受けた俺はコルク銃を脇に抱え、弾込めを行う。
射的自体は苦手じゃないんだが、ただ撃ち落とす景品にも謎の安定感があるからなぁ。
あとはいい景品ほど的が小さくなるってのもあるし、ミオが喜んでくれるような成果を上げられるかどうか。
「弾込めはこれでよしと。ところで、このお店で一番いい景品って何ですか?」
「一番はA賞の携帯ゲーム機だよ! お次がそこにある、巨大ワンちゃんのぬいぐるみね。それから、C賞が猫ちゃんコスプレセットで……」
「コスプレセット! 了解、C賞狙います」
景品の説明を聞いていた俺が食い気味で返事をすると、射的屋のお姉さんは驚いた表情で言葉を詰まらせる。
なぜ欲しいのか分からないから、そういう反応になるのだろうが、そりゃミオに猫ちゃんの格好をさせたいからに決まっている。
かねてから、お魚大好きなうちの子猫ちゃんに、猫耳と尻尾、それから肉球付きの手袋を付けてもらって、いっぱい甘えさせたいと思っていたのだ。
そのためのグッズ探しが捗々 しくなかっただけに、この好機を逃してしまうと、また俺の野望が遠ざかってしまいかねない。
何としてでもあの日までには、猫ちゃん変身セットを獲得したいのだ。そのためにも、今日この場で、目標のC賞を撃ち落とさなくては。
とはいえ、C賞の的もなかなか小さいなぁ。果たして残り二発で、うまく当てられるだろうか。
もっとも、このチャンスをものにできるのならば、金に糸目はつけないつもりなんだけど、やっぱりミオにいいところを見せたいよなぁ。
俺の腕がなまってない事を祈るしかないな。
「う。外した……」
「あー残念! 今度はよく狙ってね、お兄さん」
「照準合わせはうまくいったはずなんだけど、微妙な手ブレがあるのかなぁ」
「ねぇお兄ちゃん」
「ん、何だい? ミオ」
コルク銃に最後の弾を込め、C賞に狙いを付け、いざトリガーを引かんとしていると、ミオが無邪気な顔でこんな事を尋ねてきた。
「コスプレってなぁに?」
「え、えーとな。例えば、プリティクッキーの変身セットがあるだろ」
「うん」
「簡単に言うと、あれの猫ちゃん版みたいなものかな」
「んー? じゃあお兄ちゃんは、猫ちゃんに変身したいって事?」
「それ、思い浮かべるだけでゾッとするな……さすがに俺には似合わないよ」
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