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46.花火で遊ぼう!(9)
「えーと。チワワの件は今度話すとして、とにかくハッキリしているのは、ロケット花火の起源には諸説あって、どれが本物なのかは分からないって事だな」
「そうなんだ。お兄ちゃんたちのお話を聞いてたら、お祭りの時に遊ばせてくれた、お水が入ってるヨーヨーを思い出しちゃった」
「ああ、そういやあっちも出自が不明だったね」
「義弘。チワワって何だ?」
「親父、今はその話を掘り返さないでくれ……」
頭上に〝はてなマーク〟が浮かぶ親父を小声で制すると、俺はミオの手を引き、花火セットが詰まった袋のもとへ連れて行った。
ロケット花火の起源とその歴史に関しては、ミオにとって納得できる回答ではなかったかも知れない。
ただ、頭を切り替えて、すぐ次に遊ぶ花火を選び始めたその様子を見ると、どうやらミオが求める答えの、一定のラインは満たしたようである。
「ん? これ何だろ。ススキ花火って書いてあるよー」
ミオが袋から取り出したの紙製のケースには、四本の花火が収納されており、表面には『納涼! 三色ススキ花火』と銘打たれていた。
火と火薬を扱う遊びで、何が納涼に繋がるのか俺には分からないのだが、たぶん気持ちの問題なのだろう。
「ケースに『三色』って書いてあるから、これは遊んでいる途中で火花の色が変わるタイプなんだろうね」
「火花の色が変わるの? 面白そう!」
ススキ花火の特徴を聞いて興味を引かれたミオは、花火が詰まったケースを大事そうに胸に抱き、キラキラと目を輝かせ始めた。
「どうやら気に入ったみたいだから、次はそれで遊んでみようか」
「うん! お兄ちゃんも一緒に遊ぼ?」
「え? いや俺は……」
とまで言いかけたところで、俺が遠慮するのを素早く察知したミオは、ススキ花火のケースを抱っこしたまま俺の顔を見上げ、Tシャツの袖をキュウと引っ張ってくる。
「お兄ちゃーん。ねぇねぇ」
「わー、分かった分かった。俺も花火は久しぶりだし、今日は目一杯遊ばせてもらうよ」
「ほんと? よかった。じゃあ、はいこれ」
色よい返事を聞いて喜びを抑えきれないミオは、総量の半分にあたる二本のススキ花火を取り出すと、手持ちする部分を俺の方に向けて渡してきた。
……例えば包丁や果物ナイフ、ハサミなど、刃のある道具を人に渡す時は、握りの部分を渡したい人に向けて差し出すのが一般的なマナーである。
ミオはそのマナーと安全性を学んでいたからこそ、花火にも応用を利かせ、自分なりの安全な渡し方を心がけたのだと思う。
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