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第2章 一年次・4月(3)

「だから、もしOKしたとして、どういうことになるのかよく分かってなくてさ。学部同じだし、同じ授業取ってたら一緒に受けるものなのか、とか」  そう考えるとちょっと気が重くて、と言う茂の気持ちは高志にも何となく分かった。 「じゃあ、もしそういう面倒みたいなのがないとしたら、どうなんだ?」 「どうって?」 「女子として、あり? なし?」 「えー……どうかな、もっと話してみないと」 「じゃなくてさ。キスしたり触ったりできるのかってこと」 「それは……できると思う、多分」  茂は頷く。それはそうだ。そうでなければ端から悩まないだろう。 「だったら、試しにっていうかそんな感じでOKしてみたらどうだ? 相手にもちゃんと伝えたうえで」 「うーん、でも失礼じゃない?」 「向こうだって、断られるよりは試してみるって言われる方が嬉しいだろ。それで好きになれそうかどうか見てみろよ。もし向こうが細谷のペース乱すやつだったらその時に断ればいいし」 「……かな。でも、何か下心100%って感じ」 「そりゃ、彼女が欲しいって突き詰めればそういうことなんじゃねえの。普通だろ」 「うーん、そっかな」 「授業とかは、しんどいなと思ったら俺を理由に使えよ。協力してやるから」  高志がそう言うと、茂は高志を見て笑い、「ちょっと、藤代くんが優しいんだけど」と言った。それは二人が出会った懇親会で茂が言った台詞だったが、気に入ったのか、その後も茂はたまに冗談で同じ台詞を口にすることがあった。 「そうだな。前向きに考えてみるよ。ありがとな」 「おう」  女子と付き合ったことがないと茂が口にした時、高志は少しだけ驚くと共に、何故かそこに自分への信頼のようなものを感じた。自分達の年代なら普通そういうことは他人に言いたくないだろうと思ったし、特に茂は、自分のことについて赤裸々に話す方ではなかったからだ。それを敢えて相談してくれたのなら、何か力になりたい、と高志は思った。  誰とでも上手に付き合える茂は高志にとって一目置くべき人間だったが、ここ数か月を一緒に過ごす中で、もしかしたら茂の方も同じように高志の中の何かを認めてくれていたのだろうか。そう思うと少し嬉しかった。

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