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第20章 三年次・11月(2)
翌日、高志と茂は大教室で定位置に座って授業の開始を待っていた。隣の席では茂が専門学校のテキストを広げ、一文を読んでは暗唱することを繰り返している。
最近は茂が忙しくて、伊藤達とはしばらく会っていなかった。だから昨日伊藤に会ったのは久し振りだった。
……そう思っていた。
『藤代くん、この前のぷよぷよ会来なかったけど、もしかしてまた彼女でもできた?』
昨日、伊藤は笑いながらそう言った。
高志は頬杖をついて茂の横顔を見つめる。
茂は、笑顔を見せながら心の中では一線を引けるやつだ。それは知っていた。
ただ、自分が一線を引かれる立場になるとは思っていなかっただけだ。
――本当に、相手に何も悟られないようにできるんだな。
普通に毎日他愛もないことを話して、お昼も一緒に食べて、前と同じように隣の席で授業を受けて。だから全く気付かなかった。
自分は違うと思っていたから、最近あまり遊べていないのは忙しいからだとばかり思っていた。でも違ったんだな。茂が自分と遊ぶのをやめただけだ。高志だって、この前みたいに茂を怒らせてしまえば距離を置かれるのも当然で、何も特別じゃない。
そんなことを考えながら茂の横顔を見ていると、テキストから顔を上げた茂がふと高志を見、その視線に気付いた。
「ん?」
「……いや、別に」
高志は頬杖をついたまま薄く笑うと、視線を逸らした。
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