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第21章 三年次・12月(7)

「……腰上げられるか」  指を抜いてそう声を掛けると、茂は少しだけ躊躇った。いったん四つん這いになりかけた後、やがて両手を自分の下半身に伸ばして頬と左肩で上半身を支える。一瞬、自分でするつもりかと思った高志は、茂が自分の手でそこを覆い隠そうとしていることに気付いた。  茂の背後に回って、高志は膝立ちした。肩を落として腰だけを上げた姿勢のため、茂のTシャツの裾から背中が少し覗いている。その体はどうやっても男の体にしか見えなかった。広い肩から直線的に細くなるその輪郭は、初めて会った時に高志の目を引いたその細い腰へと繋がっている。背骨のラインがきれいに窪んでいる。無駄な肉の一切ない薄い体の中で、臀部だけが丸く盛り上がっている。女のものとは違う、みっしりと詰まった筋肉で形作られた丸みだった。  高志はその狭間へ自分のものを近付けると、手で支えながら先端を挿入した。茂の体が強張るのが分かった。 「痛かったら言えよ」  高志はもう一度そう言うと、注意深く茂の反応を見ながら、少しずつ深く進めていった。数分かかって、そこはようやく半分ほど高志を受け入れた。 「大丈夫か」  茂は浅い呼吸を繰り返している。左頬を床に付け、少しだけ見えるその横顔は苦しそうに見えた。ぎゅっと目を閉じ、眉根を寄せている。 「もっと楽な姿勢とれよ」  高志は思わずそう声を掛けた。 「……もう背中しか見えないから」  高志の言葉に茂は薄く目を開き、それからゆっくりと腕をついて頭を上げた。そして交差させた腕の上に顔を埋める。 「藤代……お前、萎えてないなら……」  顔を伏せたまま、茂が囁くように言う。 「動いて……そこで最後までイッて」  茂がそう言った後も、高志はしばらく動かなかった。茂の苦しそうな呼吸が落ち着くまで待ち、それからようやく、埋まっていたそれをまた徐々に抜き始めた。少し抜いてまた挿入する。少しだけ深くまで入れてみる。繰り返しながら、ほんの少しずつ速度を上げたが、茂が呻き声を洩らすとまた速度を落とした。ごく緩慢なその動きは、それでも相当な快感を高志にもたらした。自分の腰が勝手に動き出さないように、高志は常に自制しながら動いた。  そうしてひたすらゆっくりと抽挿を繰り返しているうちに、いつからか、時折洩れる茂の呻きがその色を変えたように聞こえることに高志は気付いた。様子を窺いながら更に動いていると、茂の浅い呼吸に痛み以外の何かが含まれている気がした。 「もう痛くないか」 「……」 「気持ちいい?」  高志がそう聞くと、茂はしばしの無言の後にかすかに首を振ったので、「痛いだけだったら、もう抜く」と言うと、茂はもう一度首を振った。 「気持ちいいんだったらそう言えよ。安心するから」 「……」  茂は、それでも黙って高志の抽挿を受け止めていたが、やがて聞こえるか聞こえないかの声で、「……気持ちいい」と言った。  それを聞いて、高志は無意識に張っていた気を少し緩ませた。また少しだけ速度を上げて、茂の様子を見る。高志の動きに合わせて洩れる茂の呼吸にも、徐々に短い喘ぎが混じるようになってきた。それを遠くに聞きながら、いつしか高志は自分自身の快感を追い始めた。止まらずにひたすら動き続ける。茂の中で動くのがどうしようもなく気持ち良かった。その快感が強ければ強いほど、どうして自分はこんな風に親友を犯しているんだ、と強い罪悪感と背徳感を覚える。もう前みたいには戻れないだろうと頭の片隅で思った。それが、この本来得るべきでない快感の代償だった。高志はただただ腰を動かし続けた。そして昂まりきったところで最後に射精した。出しながら緩く動き続け、出し切ったところでようやく動きを止めた。  何回か速い呼吸を繰り返した後、高志は自身をなるべくそっと抜いたが、茂はしばらく動かなかった。  茂の体に触れようと思いながら躊躇していると、ようやく茂が体を起こした。立ち上がろうとしても体に力が入らない様子だったが、そのまま何とか歩いて、バスルームに消えた。高志は黙ってその背中を見ていた。

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