109 / 149
第4章 8月-再会(5)
「昨日はどうだった? 上手くいった?」
次の日、外で待ち合わせた希美にそう聞かれ、高志は頷いた。
並んで歩きながら、二人は近くのショッピングモールへと向かっていた。そこにはワンフロアを占めるインテリア雑貨専門店があった。ソファも何もない高志の部屋に来ると、いつも希美は直接床の上に座る。それが前から気になっていた高志は、何か下に敷いて座れるものを買うことにした。そしてどうせなら希美に選んでもらおうと思い、今日の機会に誘ってみたところ、希美は上機嫌で了承した。
「ああ。大学の時みたいに普通に話せた」
「楽しかった?」
「うん」
そう答えた高志は、金曜日のことを思い出した。
「そうだ。ごめん、次の金曜、またそいつと会うことになって」
「そうなの?」
希美が少し不思議そうに聞いてくる。確かに二週連続で会うのは少し奇妙に聞こえるかもしれない。
「大学時代、そいつ下宿してたからよく部屋に遊びに行ってたんだけど、俺が独り暮らししてるって言ったら、今度はうちに来たいって言い出して」
「そうなんだ。泊まるの?」
「いや、さすがに泊まらないと思うけど」
「じゃあ、また土日に会える?」
「多分大丈夫。また泊まる?」
希美は頷きかけたが、ふと気付いたように首を振った。
「ううん、帰るかも」
「あ、そう?」
何か予定でもあるのかと特に気に留めなかったが、希美が小さな声で、「多分、来そうだから」と言った。
「ああ」
高志が理解して頷くと、希美は高志の顔を見上げてくる。
「……高志くんて」
「え?」
希美は何か言いかけたが、残りの言葉を飲み込んだ。首を振ると、手を繋いでくる。
「……暑い?」
「いや、いいよ」
そのままショッピングモールまで歩いた。
目指す店に行き、厚めのフロアクッションを二つ買った。
ともだちにシェアしよう!