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第5章 9月-旅行(4)

「あ、いた」  高志が再び展望台に戻ると、自分を探していたらしい茂と目が合った。高志は手にしていたプラカップを差し出す。 「ごめん。コーヒー買ってた」 「え? あ、サンキュ」 展望台のすぐ横には、大学時代に二人でよく行った購買棟のカフェと同じ系列のコーヒー店があった。高志が差し出したコーヒーは、茂がその頃よく頼んでいたものだった。 「どこ行ったかと思ってた」 「悪い。買ってすぐ戻ってくるつもりだったんだけど、混んでて思ったより時間かかった」 「いや、全然いいけどさ。後で払うな」  受け取ってそう言う茂に「いいよ」と返して、高志は自分のコーヒーを一口飲んだ。茂もストローに口をつける。 「お前、結構ずっと見てたな。気に入った?」 「ああ、何かきれいだなと思って」 「夜になるとライトアップされてる。そこの観覧車も」 「へえー。帰りなら見られるかな」 「明日もう一回見に来るか?」 「うん。時間合えば見たい」  頷く茂に、高志は「今はもう見終わった?」と聞いた。 「うん。もう充分見た」 「んじゃそろそろ行くか」 「うん」  踵を返した高志の後に茂も続く。高志は歩調を少し落として茂の横に並んだ。 「この後、このまま高速で行ってもいいんだけどさ、下道に降りたら海沿いを走れるけど、どうする?」 「そうなんだ。じゃあ下で行く? どうせ時間あるしな」 「昼飯は? 四国に入ってからうどん食う?」 「それなんだけどさ。鳴門大橋の手前の道の駅に、あわじ島バーガーっていうのがあるみたいなんだけど、今日か明日かどっちかで食べてみたい」 「へえ。じゃあ今日の昼はそこで食うか」  車に乗り込むと、室内の空気は熱されてむっとしていた。高志はすぐにエンジンをかけてエアコンを強くし、ゆっくりと車を発進させた。

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