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第1話
「お兄ちゃん、俺の恋人になって」
「…………へ?」
陽太 はぽかんと和希 を見上げた。
和希は陽太の義理の弟だ。陽太の父と和希の母が再婚して、義兄弟になった。陽太が十三歳のときだった。
はじめて顔を合わせるときは緊張した。嫌われたらどうしよう、陽太が兄になるのを嫌がられたらどうしよう、泣かれたら、拒絶されたら、そんな不安でいっぱいだった。
しかしそんな心配は杞憂に終わった。
顔合わせの日。母親に連れられて我が家にやって来た和希は、陽太を見るなり抱きついてきて、「お兄ちゃん」と呼んでくれたのだ。
この頃の和希は陽太よりも小さくて、そして天使のように可愛らしかった。いや、間違いなく天使だった。
お兄ちゃん、お兄ちゃん、と愛らしい声で陽太を呼び、抱っこをせがみ、陽太の傍にぴったりとくっついて離れない。
そんな可愛い義弟に陽太はメロメロだった。
気づけば和希の我が儘を断れなくなっていた。
我が儘と言っても、アレが欲しいコレを買ってだとか、陽太のオモチャや陽太の分のおやつまで欲しがるとか、そういったことは全くない。
寧ろ陽太が和希に多くおやつを与えようとすると「お兄ちゃんと半分こがいい」と嫌がり、オモチャは独り占めすることなくなんでも陽太と共有したがった。
和希は陽太に常にべったりで、そんな和希が可愛くて、義母に「あまり甘やかさないでね」と言われても和希に甘えられたら陽太はなんでも言うことを聞いていた。お風呂も一緒に入り、一緒のベッドで眠る。それが当然になっていた。
だが、和希が中学に上がると、お風呂だけは別になった。和希が一人で入ると言い出したからだ。
その頃には陽太より小さかった和希はすくすくと成長し、身長は同じくらいになっていた。そしてあっという間に抜かされた。
兄なのに義弟よりも小さいことを陽太が嘆くことはなく、ただ義弟の成長を喜んだ。体は大きくなっても、和希は陽太に変わらず甘えてくれたので、陽太が和希を可愛がる気持ちも変わらなかった。
お風呂には一緒に入らなくなったが、変わらず和希は陽太と一緒に寝たがった。
和希に一緒に寝たいと言われれば陽太はもちろん断らない。和希が成長するにつれベッドは狭くなっていったが、和希と同じベッドで眠るのを嫌だと思うことはなかった。
狭いベッドで和希は腕や足を陽太に巻き付けてくるが、それも甘えられていると思えば嬉しかった。
眠る和希の手がパジャマの裾から入ってきて指が偶然乳首を撫でたり、和希の膝が陽太の股間をやんわりと押してきたり、その度に陽太は変な声を上げそうになるが我慢して、和希に抱きつかれたまま眠りにつく。
陽太は和希が可愛くて可愛くて堪らなくて、友人にその可愛さを自慢すれば大抵引かれた。「未だに一緒に寝てるとか……。てかそんなべったりだとウザくね?」なんて失礼なことを言われる。陽太は和希を疎ましく思ったことなど一度もない。きっと両親よりも和希の反抗期を恐れているのは陽太だ。「兄貴ウザイ」とか和希に言われたらショックで立ち直れないだろう。
そんな和希が中学三年生に進学して、そのときにはもう和希と並んで歩けば確実に陽太の方が年下に見られるほどに体格に差が開いていた。見上げるほどに大きくなっても、見惚れるような美形に成長しても、陽太にとって和希は可愛い義弟のままだ。
和希は頭がよくて、だから偏差値の高い有名高校を受験することになった。
もちろん陽太は和希を応援したい。しっかりサポートするつもりだ。
だから和希に、「高校に合格できたらご褒美くれる? 俺、どうしても欲しいものがあるんだ」と言われて迷いなく頷いた。どんなに高価な物でも、和希が望むのなら手に入れてあげようと心に決めていた。
そして和希は見事受験に受かった。ご馳走を用意して、家族全員でお祝いした。
陽太は誇らしくて、何度も繰り返し和希を褒めた。
和希の部屋に呼ばれ、並んでベッドに座って、「お兄ちゃん、ご褒美くれる?」と言われて、「もちろん」と答えた。
「なにが欲しいんだ、和希?」
問いかけると、和希はにっこりと微笑んだ。顔立ちはすっかり大人っぽくなったが、陽太に見せる笑顔はあどけなくて可愛い。
思わず頬を緩ませる陽太に、和希が言ったのだ。
「お兄ちゃん、俺の恋人になって」
と。
恋人になって、と言われた気がする。でもきっと聞き間違いだろう。
「ごめん、和希、なんて?」
「俺の、恋人に、なって」
「んん?」
「お兄ちゃんの恋人になりたい」
おかしい。何回聞いても「恋人」という単語が聞こえる。
「和希、恋人が欲しいのか……?」
それをご褒美にねだられても、さすがに用意するのは難しい。
「お兄ちゃんの、恋人になりたいって言ってるんだけど?」
「……それってつまり、俺の、恋人に、なりたいってこと……?」
「さっきから、そう言ってるよ?」
にこにこと笑顔を絶やさぬまま、和希ははっきりとした口調で告げる。
ひょっとして冗談なのだろうか。それに気づいて、陽太は声を上げて笑った。
「あははは、なんだよ、驚かせんなよ、何回も聞き返しちゃって、俺完全に冗談通じないヤツじゃん、恥ずかしい。で? 結局和希の欲しいものってなんなんだよ?」
「あははは、冗談じゃなくて本気だから。お兄ちゃんに俺の恋人になってほしいの」
穏やかに笑っているが、和希の目は笑っていない。
真剣な空気を察知し、陽太は笑みを引っ込めた。
「え? え? 本気でって……え?」
「俺をお兄ちゃんの恋人にして」
真面目な面持ちで言われて、陽太は狼狽する。
「いやいや、恋人って……無理だろ、俺たち、兄弟で、男同士で……」
「そんなの恋人になれない理由にはならないよ」
「いやいやいや、充分理由になるからっ」
「……つまり、お兄ちゃんは俺の恋人になってくれないんだ?」
「それはそうだろ? 和希は俺の弟で、恋人にはなれないんだから」
陽太の言葉に、和希は酷く傷ついた顔をした。目に見えて落ち込み、彼の纏う空気がどんよりと重くなる。
「高校に合格したら、ご褒美くれるって約束してくれたのに……」
「うっ……!?」
「俺、ご褒美のためにいっぱい勉強頑張ったのになぁ……」
「うぅっ……!!」
「お兄ちゃん、約束破るんだ……」
和希の責めるような口調に、陽太の胸はずきずきと痛んだ。
「ショックだなぁ……。お兄ちゃんに嘘つかれるなんて……」
「う、嘘なんて、俺は……っ」
「だって、ご褒美くれないんでしょ?」
「そ、それは……」
「まさかお兄ちゃんがそんな人だったなんて、俺、悲しいよ……。こんなんじゃ、もう高校にも行く気になれない……」
「ええ!?」
「もうなんにもやる気が起きない……引きこもりになりそう。それとも非行に走るかもしれない……お義父さんと母さんを悲しませることになるなぁ……」
「いやいやいやいや、落ち着け、和希! ごめん! お兄ちゃんが悪かったから!」
「……から?」
「和希の恋人になるから!」
項垂れる和希の腕を掴んで、そう口にしていた。
途端に、和希の顔がパッと輝く。
「ほんと?」
「あっ、う、えっと……」
思わず恋人になると言ってしまった。
言ってしまってから、陽太はどう乗り切るべきか必死に考える。
「ででででも、恋人っていうのは、好きな人同士でなるものだから……」
「お兄ちゃん、俺のこと好きじゃないの?」
和希は泣きそうに顔を歪める。
その表情にズキリと心臓が痛み、陽太はぶんぶんと大きく首を横に振った。
「そんなわけないだろ! お兄ちゃんは和希が大好きだ!」
愛すべき自慢の義弟なのだ。
和希は蕩けるような笑顔を浮かべる。
「うん、俺もお兄ちゃん大好き。俺たち好き同士だから、恋人になれるよね」
「えええっ……」
もしかして和希は家族愛と恋人への愛の違いをわかっていないのだろうか。恋愛とか関係なく、単純に好きだから恋人になりたいと、そんな風に考えてこんなことを言い出したのだろうか。
「か、和希、俺たちは好き同士だけど、恋人にはなれないんだよ……」
途端に、和希の瞳が潤む。
「どうして? お兄ちゃん嘘ついたの? やっぱり俺のこと好きじゃないんだ?」
「違う! 俺は和希が好きだ!」
「何番目に?」
「そんなの一番に決まってるだろ!」
陽太の言葉に、和希は嬉しそうに微笑んだ。
「嬉しい、俺もお兄ちゃんが一番好き。大好き。すっごく好き。お兄ちゃんだけ」
「あぅ……」
「お兄ちゃんも俺と同じ気持ちなんだよね?」
「う、うん、あの、でもな……」
好きっていうのは家族としてで……と続く陽太の言葉は遮られた。
「じゃあ俺たちはもう恋人だね」
「ええ!?」
「嬉しい、お兄ちゃんと恋人になれて」
「あ、や……っ」
「頑張って勉強してよかった」
「はぅ……」
「お兄ちゃんと恋人になりたくて、一生懸命勉強したんだよ」
「うぐ……」
「お兄ちゃんが恋人になってくれてよかった。これで高校生活も楽しめるし、勉強もまた頑張れるよ」
「う、う、うん……」
どうしよう。もう恋人になれないなんて言えなくなってしまった。
和希は勘違いしているだけなのに。家族愛を恋愛と思い込んでいるだけなのに。
いつか間違いに気づいたとき、後悔するのは和希だ。だから、ちゃんと拒まないといけないのに。
陽太はこんなときでも和希を拒絶できない。
和希を傷つけたくない。ここで恋人になれないと突き放せば、和希を悲しませてしまうことになる。
そんなこと、超ブラコンの陽太にはできなかった。
どうしよう。兄である陽太がちゃんと間違いを正さなければならないのに。
本当に幸せそうに笑う和希を見ると、なにも言えなくなってしまう。
「お兄ちゃん」
砂糖菓子のように甘い声音で和希が陽太を呼ぶ。
そして、優しく抱き締められた。それは兄弟としてのスキンシップとは違う、恋人の触れ合いだった。
「お兄ちゃん、キスしていい?」
「ええ!?」
「もう俺たち恋人だもん。してもいいよね?」
「だだだダメだ、そんなの!」
それはいずれ和希が好きになった女の子にするもので、決して義理の兄にするものではない。
ぶんぶんと首を横に振れば、和希は深くショックを受けたように顔を伏せる。
「お兄ちゃん、俺とキスするの嫌なの……?」
「そんなわけないだろ!」
震える声音で尋ねられ、思わず大声で否定していた。
和希はほっとしたように顔を綻ばせる。
「ほんと? よかった」
「はぅ……」
「じゃあキスしてもいいよね」
「ううぅ……」
駄目だと思うのに、やはり陽太は拒めない。
嬉しそうに陽太の頬を撫でる和希を見たら、抵抗などできない。
ゆっくりと和希の顔が近づいてきて、陽太はぎゅっと目を瞑る。
和希の密やかな笑い声が耳に届いた。
「可愛い、お兄ちゃん……」
うっとりとした囁きと共に、唇が重ねられた。
ちゅっちゅっと可愛い音を立てて、啄むようなキスを繰り返される。
唇が離れていき、陽太はそっと瞼を開けた。
「お兄ちゃん、顔真っ赤だよ、可愛い」
紅潮する頬を愛しげに撫でられ、陽太はますます強い羞恥に駆られる。
「キス、はじめてだよね?」
「え……?」
「……は?」
きょとんと見上げれば、和希の顔から表情が抜け落ちた。暗く淀んだ空気が和希から漂ってくる。
強く肩を掴まれ、陽太は和希の異様な雰囲気に怯えた。
「はじめてじゃないとか言わないよね? だってお兄ちゃん今まで恋人なんてできたことないでしょ? 恋人じゃない人とキスしたの? ねぇいつ誰と? まさか無理やりされたの? そうだよね? お兄ちゃんが恋人でもない人とキスなんてするわけないもんね? ねえ誰? 誰がお兄ちゃんの唇奪ったの?」
「えっ、あ、いや……和希だけど……」
「え……?」
和希はぽかんと陽太を見下ろす。
じゃれあいのように、何度か和希にキスされていた。もう数年前のことだから、和希は忘れてしまったのだろうか。
「お兄ちゃん、俺とキスしたの覚えてるの?」
「そりゃ、覚えてるよ。和希にされたこと、俺が忘れるわけないだろ」
「お兄ちゃんちゅー」ってキスしてきた幼く可愛い和希のことを忘れるわけがない。
和希は感極まったように頬を紅潮させた。
「お兄ちゃん!!」
「ふむんん……!?」
ぶつかるような勢いで、再びキスをされた。そのままベッドに押し倒される。
唇を舐め回され、隙間から舌を捩じ込まれ、めちゃくちゃに貪られた。可愛さとはかけ離れた濃厚なキスに、陽太はただ翻弄される。
舌に舌が絡み付く。粘膜の触れ合う感覚に、ぞくりと体が震えた。
「ふあぁっ、んん……っ」
唾液が溢れ、それを和希は音を立てて吸い上げる。唾液と共に舌もじゅるじゅると味わわれた。
和希のキスに陽太はされるがままだ。彼の舌の動きは巧みで、とてもはじめてとは思えない。
陽太にはキスがはじめてかどうかであんなに問い詰めてきたくせに、もしかして和希ははじめてではないのだろうか。陽太の知らない内に、誰かとこんな深いキスを交わしていたのだろうか。
そう考えて、胸がチクリと痛んだ。
反射的に、和希の胸に手をついて顔を離す。
和希は首を傾げて陽太を見下ろした。
「お兄ちゃん? ごめん、苦しかった?」
「別に……」
「お兄ちゃん、どうしたの? もしかして俺のキス下手だった? 気持ちよくなかった?」
陽太は顔を背け、ぼそぼそと言った。
「そうじゃなくて……なんか、慣れてるから……」
「なにが?」
「……キス」
「あー……」
和希は口籠る。
その反応に、陽太の予想通りなのだと確信する。
「やっぱり他の人としてるんだな。それなら、そのキスした人と恋人になればいいだろ」
つい拗ねたような口調になってしまう。
和希は慌てた様子で口を開いた。
「違うよ、お兄ちゃん。俺、お兄ちゃんとしかキスしてないよ?」
「嘘だ。すごく慣れてるだろ」
「それはお兄ちゃんが寝てるときにいっぱい」
「え?」
和希を見上げれば、彼は間を埋めるようににっこり微笑んでから、また口を開く。
「……いっぱいイメトレしたからね。お兄ちゃんに気持ちいいって思われたくて……下手くそなキスして、お兄ちゃんにがっかりされたくなかったから」
「がっかり、なんて……」
和希に対して、そんな風に思うことなどあるわけないのに。
「俺、お兄ちゃんにしかキスしない。お兄ちゃんとしかキスしたくないもん」
「…………」
「お兄ちゃん、俺のこと信じてくれないの?」
しゅんと落ち込む和希に、陽太は慌てて首を横に振った。
「まさか! 信じるよ!」
「よかった」
和希は嬉しそうに笑い、陽太の唇を撫でた。
「お兄ちゃん、やきもち焼いてくれたの?」
「え……?」
「俺が他の人とキスしてるかもって思って、怒ったんだよね?」
「いや、それは……」
やきもち? そんなはずはない。だって和希は弟で。だから、別に嫉妬なんてしない。和希がキスしてるかもって思って、なんかモヤモヤした気持ちになったけどそれは単に和希にそんな相手がいることを知らなくて教えてもらえなかったことをちょっと寂しく感じてそれでなんか責めるようなことを言ってしまっただけで……と、陽太は自分で自分に言い訳をする。
「嬉しい、大好き、お兄ちゃん」
「んうぅ……っ」
自分の気持ちを整理している間に、またキスをされた。
ぴちゃぴちゃと口の中を舐められ、上顎をつう……っと舌先でなぞられ、ぞくぞくっと背中が浮き上がる。
「んぁっ……んふぅ、んんっ……」
唾液が流れ込んできて、溢れそうになって慌てて嚥下する。
んくんくっと懸命に喉を鳴らす陽太を、和希は恍惚とした表情で見下ろしていた。
「エッチな顔で俺の涎飲んでるお兄ちゃん、可愛い」
「はっ、んっ、ふぅ……っ」
「俺の涎、美味し?」
「ん、うんっ……」
正直味なんてわからなかったけれど、和希の唾液が不味いわけがないからこくこくと頷く。
すると和希は興奮したように息を乱した。
「はあっ、かわいっ、お兄ちゃん、もっと飲んでっ」
「はんんっ、んっ、ん~~っ」
陽太の開いた口に、和希の舌を伝ってとろとろと唾液が垂れてくる。
陽太は嫌悪感もなくそれを受け入れ、言われるままに飲み込んだ。しかし仰向けの状態ではすぐに苦しくなって、口の端から零れてしまう。
「ふぁっ、まっひぇっ、あふれひゃうぅ……っ」
「お兄ちゃんの可愛いお口が、俺の涎でどろどろに汚れてる……っ」
感嘆の声を漏らす和希の瞳は欲にまみれていた。
だらしなく口を開けて唾液を流す顔はみっともないだろうに、なぜそんなに嬉しそうに頬を紅潮させて見つめてくるのか。
疑問だったが、陽太はそれどころではなかった。ごくんっと口内に溜まった唾液を飲み干して、息を整える。
「はあっ、はーっ、ふぅっ……」
「顔真っ赤で可愛い。ごめんね、苦しかった?」
「ん、大丈夫……」
顎に垂れた唾液を和希が指で拭ってくれる。
キスが終わってぼうっとしていると、和希の手が服にかけられた。
「和希……?」
「お兄ちゃん、服脱ごうね」
「え? なんで……?」
「邪魔だからだよ」
邪魔? どういう意味かと考えている隙に、手早く衣服を脱がされる。
「和希……?」
「大丈夫だよ。お兄ちゃんはそのまま横になってて」
「いや、そのままって……」
服を脱がされた理由を訊きたいのだが、その前に和希の手が陽太の体に触れた。
出会った頃は陽太の方が大きかったのに。いつの間にか陽太よりも大きくなっていた彼の掌が、肌を撫でる。伝わる体温はとても熱くて、熱を移されるように陽太の体温も上昇していく。
「っは……ん……和希……?」
「大丈夫、リラックスしてて」
和希はこちらを安心させるようににこりと笑う。
まさかマッサージでもしてくれようとしているのだろうか。
よくわからなかったが、体から力を抜く。
そのとき、和希の手が陽太の胸を覆った。両方の平らな胸を、まるで女の子にするようにむにむにと揉まれる。
「っちょ、なっ、和希……!?」
「はあっ、お兄ちゃんのおっぱい、すべすべで気持ちいい……」
「なに、してっ……俺、女じゃない……っ」
「そんなのわかってるよ」
女の子のように柔らかくない薄い胸を、和希はうっとりとした顔で揉み続ける。
「や、やめろよ……俺、男なんだぞ……?」
「嫌?」
「嫌、ではないけど……っ」
「男だと、胸揉んじゃダメなの?」
「だ、だって……柔らかくないし……揉むような胸じゃないだろ……こういうのは、女の子にすることで……」
「男とか女とか関係ないよ。俺はお兄ちゃんのおっぱいが揉みたいの」
発言内容と似つかわしくない真剣な顔で和希は言う。胸を揉み続けながら。
「俺の可愛い恋人の、お兄ちゃんのおっぱいだから揉みたいの。恋人のおっぱいを揉みたいって思うのは普通でしょ?」
「う、う、う、うん…………?」
「お兄ちゃんは俺の恋人なのに、俺に女の子の胸揉んでほしいの? そんなのおかしいよね? そんな風に思うってことは、お兄ちゃん俺のこと好きじゃないってことになっちゃうよ?」
「違う! 俺は和希のこと好きだ!」
反射的に声を上げれば、和希は嬉しそうに微笑んだ。
「そうだよね。じゃあ、俺におっぱい揉まれて嬉しいよね?」
「……うん、嬉しい…………」
否定できず頷けば、和希は更に嬉しそうに目を細める。
「よかった。俺もお兄ちゃんのおっぱい揉めてすごく嬉しい」
花が綻ぶような満面の笑みを見て、和希が嬉しいならそれでいいかと思ってしまう陽太は相当の兄バカだった。
胸を揉む和希の指先が、乳首を掠める。その瞬間、痺れるような感覚が全身を駆け抜けた。
「ひあっ……!?」
思わず大きな声を上げてしまい、喘ぎ声のようなその甲高い声音に陽太自身驚いてしまう。
和希は嬉しそうに目を細めた。
「お兄ちゃん、ここ、気持ちいいの?」
「ひゃうんっ」
くりっと乳首を押され、今度こそ明確な嬌声が漏れた。
和希の瞳がギラギラと輝く。
「はあっ、可愛い、ちょっと触っただけなのに、エッチな声上げちゃうんだね。もっと聞かせて」
「んあっ、あっ、待っ、あっ、和希、んっあっあっあんっ」
くりっくりっくりっと連続で乳首を捏ね回され、断続的に喘ぎ声が上がり、止められなくなる。
「やあぁっ、ま、待っ、へんっ、へんだからっ、あっあんっ、待って、待って和希……っ」
一回手を止めてほしいのに、和希は愛撫を止めてくれない。
「変じゃないよ。俺に乳首弄られて気持ちいいんだよね? ほら、もう固くなってる。ぷくって膨らんでるよ」
「んあぁっ、やっ、なんでぇっ、あっ、俺、男なのに、こんな、あっあぁっ」
「男とか関係ないよ。お兄ちゃんは俺の恋人なんだから。彼氏の俺に乳首弄られて感じちゃうのは当たり前でしょ」
「ええっ!? あっ、んんっ、そんな、ぐりぐり、しちゃ、潰れちゃ、あっあっあっ」
これが本当に当たり前のことなのだろうか。頭が働かない。気持ちよくて、なにも考えられなくなる。
「はあっ、もう可愛いお兄ちゃん。潰れないよ。ほら、俺の指押し返すくらいツンツンに尖ってるんだから」
「んゃあぁっ、恥ずかし、ぃあっ、あんっ」
「気持ちいい? 気持ちいいよね? 気持ちいいって言って」
「あぁっ、あっあっ」
「言ってよ、お兄ちゃん」
「ひんっ」
ぴんっと強く乳首を弾かれ、強い刺激に体が跳ねた。
「あっ、きもち、いいっ」
その言葉を口にすれば、和希はうっそりと微笑んだ。
「よかった、嬉しい。もっともっと気持ちよくなってね」
「ひぁんっ」
艶かしく突き出された和希の舌が、赤く膨らんだ乳首を舐め上げた。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら舐められ、指で弄られるのとは違う快感に陽太は身悶える。
「あぁっあっ、きもちぃ、んんっ」
「舐められるの気持ちいい? じゃあこれは?」
「ひあぁっあっあぁんっ」
ぱくりと口に含まれ、敏感な突起を吸い上げられる。刺激された部分から、ぞくぞくと全身に快感が走り抜けた。
「ふあっあんっ、きもちいっ、あっ、和希ぃっ」
頭の片隅に義弟に乳首を吸われて気持ちよくなってしまっていることを信じられない自分がいるが、戸惑いも混乱も強烈な快楽に霞んでいく。気持ちよくて、それしか感じられなくなっていく。
「俺に乳首吸われるの気持ちい?」
「いいっ、和希に、ちくび、されるの、あんっ、きもちいいっ」
「はあっ、もう堪んない、可愛すぎ、寝てるときに散々弄って感度上げといたから乳首だけでめちゃくちゃ感じちゃって可愛い声で喘いじゃってほんと可愛い、お兄ちゃんお兄ちゃん大好き可愛い」
「あぁんっ、そんな、両方いっぺんにされたら、あっあっあんっ」
片方は唇で舐めしゃぶられ、もう片方は指で挟んで扱かれる。
快楽に悶えていた陽太に、和希の声を聞く余裕はなかった。
びくんびくんっと体が跳ねる。下半身に熱が蓄積していく。
陽太がもじもじと腰を捩れば、和希は嬉しそうに目を細めた。
「お兄ちゃん、苦しそうだね。下も脱ごうか」
「んぇ……?」
胸から顔を上げた和希は、陽太の下肢に手を伸ばす。陽太はそれを慌てて止めた。
「あっ、待っ、ダメだ……っ」
「どうして?」
「だ、だって……っ」
陽太のぺニスはすっかり反応してしまっている。義弟にキスをされて胸を弄られて勃起してしまっているのだ。そんなの恥ずかしくて見せられない。
「お兄ちゃん、俺達は恋人同士なんだから、隠しちゃダメ。恥ずかしいところも全部見せて」
「そ、そんな……」
「見せられるよね? 俺のこと大好きなら」
「うぅ……」
そんな風に言われたら拒めない。
抵抗がゆるんだ隙に、ズボンと下着を下ろされた。
反り返ったぺニスがぷるりと飛び出し、それを見た和希が笑みを深める。
「お兄ちゃんのおちんちんおっきくなってるね。俺におっぱい弄られて気持ちよかったんだ」
「や……ご、ごめ……」
陽太は後ろめたいような気持ちになって思わず謝る。
「どうして謝るの? お兄ちゃんが気持ちよくなってくれて嬉しいのに」
にこにこしながら、和希は陽太の足からズボンと下着を引き抜いた。
裸にされて陽太は焦る。
「か、和希……っ」
「今度はおっぱいとおちんちん一緒に弄ってあげる。そしたらもっと気持ちよくなれるでしょ?」
「えっ、ちょ、待っ、んんっ」
止める間もなくぺニスを握られた。同時に、乳首をねぶられる。
「んあぁっ、ダメ、両方、しちゃ、あっあっあんっ」
制止の声を無視し、和希は乳首をしゃぶりながらぺニスを扱く。
ぐにぐにと舌で突起を押し潰され、同じように鈴口を指の腹でぐりぐりと擦られる。
「あっ、ひんんっ、んっ、あっあっあっ」
滲み出す先走りを塗り広げられ、和希の手の動きに合わせてくちゅくちゅと濡れた音が響く。
気持ちよくて、はしたない喘ぎ声が漏れ続けた。
「はあっ、お兄ちゃん、腰かくかくしてる。マジエロい。エロくて可愛い」
「んやあぁっ、あんっあっあっ、やだぁっ」
腰が情けなくへこへこと動いてしまうのを止められない。激しい羞恥に涙が浮かぶ。堪らなく恥ずかしいのに、体は快感に素直に反応を示してしまうのだ。
こんな痴態を義弟の前でさらしたくなんてない。見られたくないのに、和希はまるで目に焼き付けるかのように陽太を凝視しているのだ。
「やぁっあっあんっ、和希ぃっ」
「はあはあっ、やっぱ起きてるときの方が反応いいなぁ。名前呼ばれるの堪んない」
ぶつぶつとなにかを呟きながらも、和希は愛撫の手を休めない。
ぺニスを上下に擦り立て、乳首にちゅうっと吸い付く。
「あぁんっ、ダメ、そんなにしたら、あっ、もう出るぅっ」
「いいよ、出して。ほら、俺におちんちん扱かれてイッてみせて」
「あっあっあっあっ、だめ、だめぇっ」
「ダメじゃないよ、俺の手に出して、俺の手の中でぴゅっぴゅってして」
「んうぅっ、あっ、んんっ」
唇を噛み締めて必死に耐えようとするけれど、我慢は続かなかった。
射精を急き立てるように激しく擦られ、陽太は遂に限界を迎える。
「あっあっあっ、~~~~~~っ」
びくびくと体を震わせ、陽太は吐精した。
顔を真っ赤にして義弟の掌に精液を吐き出す陽太を、和希はうっとりと見つめる。
射精を終え、陽太は荒い呼吸を繰り返しながらぐったりとシーツに身を沈めた。
あだっぽい空気を纏う陽太から目を離さずに、和希は手についた彼の体液を舐める。指の間まで舌を這わせ、一滴残らず味わった。
目を閉じていた陽太はそれに気づかなかった。
「お兄ちゃん」
呼び掛けられ、陽太は瞼を開ける。ぼんやりと見上げれば、微笑む和希がそこにいた。
「気持ちよかった?」
「うん……」
ぼうっとしたまま頷く。
「良かった。今度はお兄ちゃんが俺のこと気持ちよくしてくれる?」
「うん」
よくわからないまま頷く。自分がされたことを和希にもすればいいのだろうか。そう思って体を起こそうとすれば、和希に脚を広げられた。
「和希……?」
「お兄ちゃん、自分で脚持って」
「え……?」
それがどれだけ恥ずかしい体勢なのか気づかずに、陽太は広げた自分の脚を抱えた。そうすれば陰部が丸見えになる。
「えっ!? なに……!?」
「あっ、離しちゃダメ。ちゃんと持ってて」
和希は自分の痴態に気づいて焦る陽太の手に手を重ね、押さえる。
「やっ、和希、こんなん、恥ずかしいって……っ」
「うん、恥ずかしがってるお兄ちゃんすごく可愛い。もっと見たい。見せてくれるよね? 恋人の俺だけには見せられるよね? 俺のこと好きだったら見せられるよね?」
「うっ、うぅ……」
「あー、可愛い、お兄ちゃん大好き」
和希はにっこりと、自分の方が何倍も可愛い笑顔を浮かべる。
やっぱり陽太は逆らえず、込み上げる羞恥をこらえて和希の眼前に陰部を晒す。
すると、ぬるりとした感触が後孔に触れた。
「ひっ、な、なに……!?」
「ローションだよ」
「そ、じゃなくて、なんでそんなとこ……」
世界一可愛くてカッコいい義弟にそんなところを触られている事実が信じ難く、陽太は混乱した。
「そんなとこ、触っちゃダメだっ」
「どうして?」
「ど、どうしてって……」
「お兄ちゃん、俺のこと気持ちよくしてくれるって言ったよね?」
「え? う、う、うん?」
「だったらちゃんと解さないと。俺のちんぽ入らないでしょ?」
「ち、ちん……!? は、入らないって、は、え、な、なにを、どこに入れるって……!?」
「俺のちんぽを、お兄ちゃんのお尻おまんこに入れるんだよ」
「んなぁ……!?」
陽太は耳まで真っ赤に染めて口をパクパクと開閉する。
「んな、なに、なに、な、あぁっ……!?」
ぬぷ……っと、和希の指が後孔に差し込まれる。
「ここ、お兄ちゃんのお尻おまんこ。ここに、俺のちんぽを入れるの」
「ん、やぁっ……ぉ、まん、こ、じゃ、ないぃっ」
義弟の口から飛び出したとんでもない淫語に赤面していやいやと首を振る陽太に、和希は息を荒げる。
「はあっ、お兄ちゃんの口から『おまんこ』とか、あー、すごい興奮する。早く突っ込んでめちゃくちゃに犯したい」
和希はローションを継ぎ足し、急いた手付きでアナルを解していく。
「あっ、そんなとこ、弄っちゃ、あぁっ、ダメ、あっあっ、ひあぁっ」
和希の指が内部の膨らみを擦った瞬間、痺れるような快感に襲われた。
和希はまるで慣れているかのように執拗にそこを押し潰す。
「んゃっ、あぁっあっあぁんっ、なに、そこ、あっあっ、へんっ、やぁっ、そこ、弄るの、やあぁっ」
「変じゃなくて気持ちいいんだよ、お兄ちゃん。ほら、おちんちんも気持ちよさそう」
「ひああぁんっ」
再び頭を擡げていたぺニスの裏筋をぺろりと舐められ、陽太は背中を弓なりに反らせる。
きゅうっと締まる直腸を、和希の指がぐちゅぐちゅと掻き回した。
「んぁっ、あっあっあんっ」
「お兄ちゃん、指増やすよ?」
「ああぁっ」
にゅぷっと二本の指が挿入される。
後孔を弄られる違和感は、前立腺を擦られる快感に掻き消された。
「お兄ちゃん、お尻おまんこ気持ちいい? 指でくちゅくちゅされて気持ちいい?」
「んっ、あっ、そんな、あっ、あぁっ」
「気持ちよかったら、ちゃんと教えて。じゃないと不安だよ。お兄ちゃんをちゃんと気持ちよくできてるのか、痛い思いさせてないのか、わからなくて怖い」
顔を曇らせる和希を見ると、その不安を解消させてあげなくては、と兄バカの陽太はどんな状況でもそう思ってしまうのだ。
「ひっ、うぅっ、きもち、いいっ」
「ほんと、お兄ちゃん」
和希の表情が嬉しそうにぱっと輝く。和希には笑っていてほしい。和希を喜ばせたい。そんな気持ちでいっぱいになる。
「うんっ、きもちいいっ、あぁっあっあっ、ゆび、和希の指、きもちいっ、あんっ」
「はあっ、嬉しいよ、お兄ちゃん」
和希は愉悦の滲む瞳で陽太を見つめ、激しく腸壁を擦り上げる。
「んひあはぁっ、あんっあっあっあぁっ」
「お兄ちゃん、ほら、お兄ちゃんのお尻おまんこに俺の指、もう三本も入ってるよ? ぐちゅぐちゅって出し入れしてるのわかる?」
「はひんっ、んぁっ、ぅんっ、ゆび、和希の指、いっぱい、ぐちゅぐちゅってぇっ、あひっ、いいっ、きもちいいっ」
「はあっ、堪んないなぁもう」
「んああぁっ」
じゅぽんっと指を引き抜かれる。刺激を失ったアナルが、物欲しげにひくひくと収縮する。
ぺニスを勃起させ、後孔をひくつかせ、潤んだ瞳でこちらを見上げる陽太を和希は舐めるように見ていた。
肉食獣のような獰猛な眼差しの和希と目が合い、陽太はぞくりと背筋を震わせる。
和希は着ていたシャツを脱ぎ捨て、それから見せつけるように男根を取り出した。反り返った肉棒が飛び出し、陽太は目を瞠る。
最後に一緒にお風呂に入ったときに見た数年前よりも遥かに大きく成長していた。
「お兄ちゃんのせいで、俺のちんぽこんなバキバキになっちゃった」
「お、俺のせい……?」
「そうだよ。お兄ちゃんがエロくて可愛いから」
エロくもないし可愛くもない、と主張する前に、アナルにそのガチガチの陰茎を押し付けられた。
「ちんぽ痛くてもう我慢できない。入れていい? お兄ちゃんのお尻おまんこでちんぽ扱いて気持ちよくしてくれる?」
和希の切なげな瞳に見つめられ、そんなでかいの入るわけないだろ、なんて拒絶することはできなかった。兄バカで弟を心から溺愛する陽太にとって、なによりも優先されるのは和希だ。
陽太は脚を抱え直し、入れやすいように後孔を広げる。
「ん、ほら、いいぞ、入れて……」
「っ……」
「ひああぁああっ」
ずぷんっと、一気に剛直を捩じ込まれた。
「ひはっ、はっ、あぁっあっあっひんっ」
「もうっ、お兄ちゃんのせいで入れる前にイくところだったよっ、あんまり煽るようなことしないでっ」
「んひっ、ひあっ、あっ、ご、ごめっんんっ」
よくわからなかったが責められているのだと気づいて陽太は謝った。
すると和希は焦った様子で陽太を宥めだす。
「ああ、ごめんね、謝らないで、違うんだよ、寧ろもっと俺のこと煽るようなエロくて可愛いことしてくれた方が嬉しいんだ、俺が未熟だから、余裕なくてごめんね」
「んんっ、あっあっあんっ」
よくわからなかったが和希が謝る必要はないと伝えたくて、陽太は和希の背中を撫でる。
すると和希はぎゅうっと陽太を抱き締め、上擦る声で何度も陽太の名前を呼んだ。
「はあっ、お兄ちゃん、陽太、陽太っ」
「はひんんっ、んっ、あっあっあぁっ」
「好き、好き、陽太っ」
「んひあぁっ」
ぐぷぷっと、更に奥へと肉棒が押し込まれる。
奥まで入れてはギリギリまで引き抜かれ、また奥を突き上げられる。硬い楔に前立腺を何度も抉るように擦られ、陽太は強すぎる快楽に怯えた。
「ああっ、まっ、待って、あひっ、ひっ、かずきぃっ、待って、あっあっああぁっ」
「ごめん、待てない、お兄ちゃんの中、気持ちよすぎて腰止まんない」
ぐちゅっぐちゅっぐちゅっと卑猥な水音を響かせ、和希は激しく腰を振り立てる。
余裕のない表情で、夢中になって快感を貪る和希に、陽太はきゅんと胸を締め付けられた。
謝る必要なんてない。我慢なんてしてほしくない。させたくない。陽太は和希の兄だ。思う存分甘やかしてやりたい。
「んっ、いいっ、好きにして、いいからぁっ、もっと気持ちよくなってっ、和希ぃっ」
「お兄ちゃんっ」
和希は感極まったように陽太を呼ぶ。
強く腰を押し付けられ、ぐぽっと最奥に亀頭がめり込んだ。
「んひぃっ、ひあっあっあぁっあっあっ」
「お兄ちゃん、好きっ、大好きっ」
「んんんぅっ、ふぅっ、んっ」
深く唇を重ねられ、動き回る舌に口腔内を蹂躙される。
ずぼっずぼっと何度も奥を貫かれ、陽太は強烈な快楽に翻弄され続けた。
もうなにも考えられず、必死に和希にしがみつく。
互いに舌を絡ませながら、二人は強く抱き締め合った。
「んっ、はあっ、気持ちいい、陽太、陽太の中、すごく気持ちいいよっ」
「はひっ、あっ、俺も、いいっ、きもちいいっ、かずきぃっ」
「もう出そう、出すよ、陽太の中に精液出すからねっ」
「うんっ、いいよ、出して、あんっ」
「はあっ、好き、好き、お兄ちゃん……っ」
「ああぁっ、あっ、あっあっん────っ」
一際強く腰を打ち付けられ、ごりっと最奥を抉られる刺激に陽太は絶頂を迎えた。
びくびくと身を震わせる陽太の胎内に、大量の精液が注ぎ込まれた。
和希は陽太にキスをする。めちゃくちゃに陽太の口内を舐め回しながら、腰を揺すって最後の一滴まで精液を出し切る。
「んんはぁっ、あっ、かずき……」
唇を離され、陽太は荒い呼吸を繰り返す。
ぐったりする陽太の頬を労るように撫で、和希は微笑んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん」
そう言って、ゆっくりと体を離す。埋め込まれていた陰茎が、ぬぽんっと抜けた。射精したばかりだというのに、それはまた頭を擡げている。けれど和希は、それ以上なにかをしようとはしなかった。
「か、和希……」
「気にしなくていいよ、お兄ちゃん。はじめてなのに激しくしちゃってごめんね」
膨らんだ男根を気にしながら呼び掛ければ、和希は苦笑を浮かべ謝った。
和希は陽太の体を気遣って、我慢しているのだ。それに気づいて、陽太の兄心が疼いた。愛する義弟に我慢なんてさせたくない。我慢してほしくない。満足させたい。和希には好きなことを好きなだけ、思う存分させてやりたい。
兄バカの陽太は和希にはとことん甘く、甘やかさずにはいられないのだ。
「和希、俺は大丈夫だから……だから、和希がしたいなら、また、しても、いい、から……」
「お兄ちゃん、無理しちゃダメだよ」
「無理じゃない」
陽太は和希の為ならなんだってできる。どんなことだってしてみせる。
そんな使命感に駆られ、陽太はくるりと体を引っくり返した。四つん這いになり、腰を突き出す。
ごくりと、和希が唾を飲み込む音が聞こえた。
「お兄ちゃん……?」
「ほら、ここ……和希の、ち、ちんぽ、入れて……精液、出なくなるまで、出して……」
陽太は両手でアナルを広げる。綻んだそこから、とろりと和希の精液が垂れた。
「お兄ちゃん……!」
「っあ──────!!」
ばちゅんっと激しく楔を突き入れられた。一気に最奥まで貫かれ、陽太は目を見開き悲鳴を上げた。
和希に強く腰を掴まれ、壊れるほどの勢いで肉筒を抉られる。
「陽太、陽太っ、なんでそんなにエロくて可愛いのっ、折角我慢してたのにっ、お兄ちゃんが煽るから、もう止まんないっ、お兄ちゃんのお尻おまんこにちんぽ嵌めてずぼずぼしまくってこのぎゅうぎゅう締まって気持ちよすぎる俺専用お尻おまんこに出なくなるまで射精するからっ」
「んひっ、ひっ、あっあっあっああぁっ」
ずろろ……っと引き抜かれては、また奧を穿たれる。肉のぶつかる生々しい音が室内に響き続けた。
陽太は涙と涎で顔をぐちゃぐちゃにしながら、和希に与えられる強烈な快楽を享受する。
「ひはぁあっ、はひっ、ひぅんんっ」
「あー、すご、奧吸い付いてくるっ」
「あぁっあっ、そこっ、いっぱいぐりぐりされたら、あっあっあっひっ、いくっ、いくぅっ」
ぐちゅぐちゅと腰を回し、亀頭で最奥をぐりゅぐりゅと捏ね回され、陽太は全身を痙攣させ絶頂に達した。
「はあっ、きっつ……っ、すっごい締め付け、陽太、ここ気持ちいいの?」
「あっひっ、ひあっ、あっあっあんっ、んひぁっ」
「もう、気持ちよすぎて答えらんない?」
「はひっひっんんっ、んあっああぁっ」
「あーっ、俺のちんぽでまんこ穿られてあんあん喘いでるお兄ちゃん可愛いっ」
「んひいぃっ、ひあっあっあっんっ、ひあぁっ」
ごりごりと奧を抉られ、陽太は何度も絶頂へと追い上げられる。いってもいっても終わらなくて、頭がおかしくなりそうだった。
「い、くぅっ、また、いくぅっ、んあぁっあっああぁっ」
「はあっ、お兄ちゃんの中、気持ちいっ、もう俺もイきそうっ」
「ひうっ、んあっあっあっあっあぁっ」
射精に向け、和希が容赦なく腸壁を擦り上げる。がつがつ中を穿たれ、陽太はまた訪れる絶頂に体を震わせながら喘ぐことしかできなかった。
「好き、好きっ、陽太っ、イくっ」
「んんんっ、ん~~~~っ」
亀頭をぐぽっと奧に嵌め込まれ、そこにどぷどぷと精液を吐き出される。
陽太の体から力が抜け、上半身がぺたりとシーツに沈む。腰は和希にがっちり掴まれているので、二人の体は繋がったままだ。
荒い呼吸を整えながら、気づく。埋め込まれた和希の陰茎が、また体積を増していくことに。
もちろん、陽太は前言を撤回するつもりはない。けれど、このままでは体がもたない。
ゆるゆると腰を動かしはじめる和希に、陽太は焦った。
「か、かずっ、ま、待っ」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「んっ、あっ、ちょ、いっ、一回、ぬ、抜いっ、ちょっとだけ、や、休ませっ、んんっ」
「だーめ」
「んひああぁっ」
和希が後ろから覆い被さってくる。うつ伏せに寝そべる陽太の背中に彼の体重がのしかかり、剛直が深く捩じ込まれた。
「もう止まんないって言ったよね? ほら、俺のちんぽもうガチガチなのわかるでしょ? お兄ちゃんのお尻おまんこで扱いて射精させてくれるよね?」
「ひはっ、あっあっあっひっ、ひうぅっ」
和希の熱い吐息が耳にかかる。そのまま耳を舐めしゃぶられ、腰をぐいぐいと押し付けられ、最奥を抉られ、陽太は再び快楽の波に飲み込まれていく。
「ね、お兄ちゃん?」
「うっ、ううぅ~~っ」
もちろん陽太は拒まない。超ブラコン兄バカ陽太は、愛する義弟が望むなら、惜しみなく自分の身を捧げられるのだ。
和希は陽太への気持ちを勘違いしている。いずれ和希はそのことに気づく。そのときに後悔してほしくない。そう思っていたのに、こうなってしまってはもう手遅れなのではないか。
陽太は可愛い義弟にめちゃくちゃにされながら、頭の片隅でどうしよう、と懊悩したのだった。
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