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【side:???】
人と話すのが嫌いだった。
人に見られるのが嫌いだった。
人と同じ空間にいるのが嫌いだった。
人が嫌いだった。
でもそれは仕方ないことなのかもしれない。
お母さんが言うにはぼくはどうしようもないグズでヤクタタズのゴミらしいので、そんなぼくが自分よりもヒデテいる人にレットウカンを抱いて嫌うのは当たり前のことだと思う。
だけど、唯一ぼくには人並みに得意なことがあった。
お母さんたちにも秘密の得意なこと。
学校の図書館で見かけた手芸の本をこっそり借りて、破られて使い物にならなくなった服だった布で継いでつくるのはぼくの話し相手だ。
最初は見れたものじゃなかった。
だけど、そのときのぼくにとって出来上がった人形のような布の集まりは特別なものだった。
元より体が丈夫ではないぼくは同性の友達というものに人一倍憧れていた。
走って遊び回れる友達。
人と仲良くするなんて願望がどれほどオコガマシイ考えか知っていた。
それでも諦めきる事ができなかったぼくはせめて、ぼくの話を聞いてくれる相手をつくることにした。
初めて作った人形は、明るくていつも笑顔のクラスの人気者をモデルにした。
「そうだ……名前……」
名前はなににしよう。名前は大切だ。なんたってイノチを吹き込むというくらいなのだから相当だろう。
ああ、そうだ。これにしよう。
ぼくの好きな『幸せ』と『喜び』という漢字で…………。
「……幸喜」
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