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第10話

お仕置きを秘かに期待した航平だったが、その日、樹は珍しく、航平を全裸にはせず、テレビを見よう、と言い出した。 航平はというと、 (...放置プレイって奴なのかな) と思ったが、樹は飴と鞭、の飴の部分を試したくなったのだ。 大型のテレビがあるというのに普段、たまに映画を見る程度でテレビはせいぜいニュースくらいしか見ない樹は、 「...どんなジャンルが好きでいつも見てるんだ?」 航平を見ず、視線は画面を向いたまま、リモコンを操作し、忙しなく番組を変える。 「え...あ、バラエティとか、たまに...」 「バラエティ...こっちか?それとも、こっちか?」 再度、忙しなくバラエティらしき番組を変え、尋ねる。 「あ、さっきのとか...」 「こ、こっちか?」 膝を抱え、まっすぐな瞳で画面を見つめる隣の樹に不意に視線を移す。 (...どうしたんだろう...なにか粗相をしてしまい、怒っているのかな) 「見ないのか?」 「あ、いえ」 互いに無表情、無言でバラエティ番組を見た。 「...面白かったか?」 「え、あ、はい」 実はちっとも頭に内容は入って来なかったのだが、隣の樹も同じくだった。 それからも三日連続、樹から虐められることはなく、飽きられたのだろうか、と不安に駆られた。 勇気を出し、航平は樹に尋ねた。 「あ、あの、樹さま。僕に飽きてしまわれたんでしょうか...」 しょんぼりと項垂れる航平に樹は目をパチクリさせた。 「い、虐めて欲しいのか...?」 耳まで真っ赤に染め、航平は頷いた。 それから、毎日ではなくなったが、航平を全裸にし、首輪だけの姿にし、スパンキングされ、掘られては喘ぎ、すっかり樹の下僕と化した航平がいた。 月日は過ぎ、夏。 「...夏休み、なにか予定はあるか?」 「いえ、特には...」 「そうか、俺も特にはない、その...」 動揺しているかのような樹を見つめた。 「で、出掛けないか、その、二人きりで」 「...はい。樹さま」 航平に笑顔が浮かんだ。

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