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第23話 最愛※

 ゆっくりとベッドに押し倒し、かぶりつくようにルーカスの唇にキスをする。  自分の中の野生の本能が、目の前の獲物を食い尽くせと言っているようだった。 「悪い。手加減は出来ないぞ」 「だい、じょーぶ、です……僕の体、全部ヴァイスさんでいっぱいにして……全部、全部、上書きしてください……」  今まで知らない男たちに抱かれてきた感触を、忘れたい。  主人から受けてきた愛撫の感触も拭い去りたい。  愛した人に、愛されたい。  愛してくれてる人を、愛したい。 「しっかり俺を覚えろよ」  ヴァイスが服を乱暴に脱ぎ捨てる。  服の上からでも感じられた引き締まった体が、目の前に暴かれてる。  今からこの体に抱かれるんだと思うだけで、少年の体は熱を宿す。欲望を滾らせる。  体が、本能が、求めているのだ。  この人が欲しいと。  オメガのこの体は、彼の子供を宿せる。  孕みたい。脳が、そう叫んでいる。 「……ドキドキしすぎて、心臓が壊れちゃいそうです……」 「俺も、こんなに興奮したことはない……」  ヴァイスはルーカスの服を脱がし、白い胸に舌を這わせていく。  柔らかな肌に触れ、胸の先を飴のように舐め回していった。  生温かい舌が触れるたび、敏感な部分に触れるたび、体がビクビクと跳ねる。  こんな感覚、知らない。性行為は初めてじゃないのに、まるで初めて知るかのような感覚。  なにこれ。なにこれ。  ルーカスの頭の中は未知なる刺激で困惑している。今までのは何だったのだろうと思うほど、彼の愛撫は尋常じゃないほど気持ちいい。 「ふ、あ、あッ、ああああ、あッ」 「凄いな。お前から甘い匂いがして、気が狂いそうだ……」 「ぼ、くも……きもち、よくて、変になりそう……」  脳が、体が、溶けてしまいそうになる。  体だけじゃなく、心も喜んでいる。  ただ欲をぶつけるだけの行為とは違う。  ヴァイスは自身の指を軽く舐めて、ルーカスの後孔に触れた。  既にもう愛液で溢れたそこは、簡単に彼の指をくわえ込んでいった。 「トロットロだな……」 「う、そ……」 「ほら。ちょっと動かしただけでグチャグチャいってる」  指を動かし、わざと音を立てる。  いやらしい水音に、ルーカスは羞恥心を煽られる。  今まで、発情期《ヒート》のときだってこんな風になったことはなかった。  強制的に発情させられているはずなのに、ここまで体が反応することはなかった。  自分の体がこんなにも興奮しているんだということが露になって、今更ながら恥ずかしい。 「や、ぁ……」 「なんで恥ずかしがるんだ」 「だ、って……」  両腕で顔を隠すルーカスに、ヴァイスはクスッと笑った。  経験の全くないヴァイスより、本人が望んでないことだったとはいえ経験豊富のルーカスの方が顔を赤くしていることが面白くて、ついイジメたくなってしまう。  だが残念なことに経験のないヴァイスには余裕などない。  人よりも優れた嗅覚ゆえに、ルーカスから発せられるフェロモンで酔ってしまいそうになる。  まるで蜂蜜のような、むせかえりそうなほどの甘い匂い。こんなものを当てられて、耐えられるはずがない。 「挿れるぞ……」 「うん……」  後孔に熱いものが宛がわれる。  彼の大きな屹立が、少年の狭いナカを押し広げるように入ってくる。  それだけで、ルーカスの体はビクビクと痙攣するように震えた。 「あ、あああッ!」 「っ、く」  まさか挿れただけで果てるとは思わず、自身の屹立から零れた白濁のそれに、ルーカスは恥ずかしさで瞳に涙を溜めた。 「あまり絞めるな……俺まで出るところだったぞ」 「だ、だって……こ、こんな、きもち、いいの、知らない……」 「これくらいで満足されたら困るんだよ」  ヴァイスは腰を動かした。  きつく、きつく少年の小さな体を抱きしめながら、求めるがままに快楽を貪っていく。  ルーカスもヴァイスの背中にしがみついて、彼の熱を求める。 「は、あぁあ、あッああん! き、もち、い、いっ! い、っああ、あ!」 「っ、俺も……お前のナカ、すげー気持ちいい……」  抑えられない嬌声。  まるで獣の交尾のよう。 「ルーカ、ス……お前を、俺のものに、する……」 「んっ、うんっ! 噛んで、かんで……かんでっ!」  ヴァイスはルーカスの頭を抱え、細い首筋に歯を立てた。  うなじを噛みつかれた痛みと、背筋が震えるほどの刺激。  噛みついた痕から滲む血を舐めながら、ヴァイスはルーカスの首を甘く噛んだり吸い付いたりして自分の印を残していった。 「ヴァ、イス、さっ、あ、もう、イっちゃ、また、イっちゃう……!」 「俺も……もう……っ!」 「ああッ、あ、あ、あああ、あ!」  互いに体を大きく震わせて、絶頂に達した。  ナカに注がれた白濁と、彼の生気。  心が満たされる感覚に、ルーカスは嬉し涙を零す。 「ヴァイスさん……すき、だいすき……」 「ああ。俺も、だ……」  ルーカスを抱きしめたまま、ヴァイスは気を失った。  寝息を立てる彼をベッドに寝かせ、そっと頬に口付ける。 「……ありがとう、ヴァイスさん」  ルーカスはうなじに触れた。  僅かな痛みが、彼のものになったという事実を証明してくれている。  最愛の人。  今度は自分が彼を守る番。  ルーカスは鈍い腰の痛みに耐えながら、服を着替えて外に出た。  森に誰も近付かないように、人払いの魔法をかけなくてはいけない。  今ならできる。彼から貰った力のおかげで。

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