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第1話

お互いの仕事の忙しさもあり、やっと二人の時間が出来た。 しかし、目の前の男はスマホ片手にパソコンと向き合っている。 仕事なんだか遊んでるんだか、何度声を掛けても空返事、上の空。 苛立ちよりがっかりしてしまい、僕はそっと立ち上がって部屋を出た。 この日を楽しみにしていたのは僕だけだったのか? そしてマンションを出て大通りに向かってる途中でスマホが鳴る。 画面に表示される名前に眉をひそめた。 それは先程まで目の前にいた人物だった。 何回かのコールで応答した。 『佐智、どこにいんの?』 「どこって…今、タクシー乗るとこ」 『は?待てって。今行くから』 来なくていいと僕は声を荒げ「もういい…」そう言って通話を切った。 懸なんてもう知らない。 このすれ違いが後悔に繋がるなんて…。

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