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第1話 始まりの朝
それは彼の八歳の誕生日のことだった。
とある大陸にあるマーラーなる古っくさい帝国の貴族、サイラス公爵家の三男、ラフィアン・ガルネク・サイラスはパーティーの最中に、階段から盛大に転けて気を失った。
そして、三日間こんこんと眠り続けて、思い出した。前世を。
前世の名前は#須藤裕一__すどうゆういち__#。彼はつい先頃まで、地球の日本の地方都市で限りなくブラックに近い会社に勤めていた。
納期の近いゲームの開発で三徹した後、帰宅時に車のハンドルを切り損ねて、トラックと衝突した。
そして、恋愛ゲーム『麗しの青い薔薇』の中に転生した。
なぜ、すぐに解ったかというと......。
それは彼が納品を迫られていた腐女子向け、早い話がBLの恋愛ゲームだったからだ。
そして、彼の今世、ラフィアンは帝国の第二王子の婚約者。いずれ現れる男ヒロインに婚約者を奪われて、断罪されて辺境に送られる、ありがちな役どころだった。
ーふ~ん......ー
目を覚ました彼は思った。
「もう一回寝よう」
彼はパサリと頭からシーツを被った。β版は出ているが、このゲームはまだ開発中なのだ。エンディングも決まっていない。
そして彼は、このゲームが大嫌いだった......。
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