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第7話 二度目と、初めて(11/13)

次第に、互いの先端から溢れた雫でレイの手が濡れてゆき、静かな部屋に水音が響き出す。 ふと、俺は思ったことを口にした。 「レイは一人の時、いつもこんな風にしてるのか?」 「っ!?」 そう驚くような質問でもないだろうに、レイはその青い瞳を大きく揺らした。 レイはじわりと頬を染めて、おずおずと答える。 「お……、俺も、前ルスにしてもらった時、そう思った……」 ああ、なるほど、それで動揺したのか。 レイが嬉しげに目を細めると、金の睫毛がふるふると揺れる。 俺が同じ事を考えた程度の事が、そんなに嬉しかったらしい。可愛い奴だ。 俺は、レイの額にかかる髪を掬い上げ、口付ける。 レイはうっとりと俺の仕草を見つめて、熱い息を吐いた。 いつの間にか、俺のそれへも熱が随分と溜まっている。 もう少し、強い刺激が欲しくて、思わず腰を揺らしそうになる。 レイが、追い詰められた表情で、焦りを浮かべて言った。 「……っ、俺、イキそ……なんだけど……」 レイの言葉に「ああ、俺もだ……」と答えれば、レイはその手を速めた。 ゆるゆると与えられていた快感が、急激に強まる。 レイの小さな声が漏れる。 「んっ……ぁ……っ」 お前は、自分でしてても声が出るのか? そう頭の隅で思いながらも、間近で漏れたレイの甘い声に、俺も否応なく昂まる。 速度を上げても、レイの手は優しく大切そうに俺の物を包んでいる。 「……っ、もっと強く、握ってくれ……」 俺の求めに、レイはキュッと握って応える。 レイは、自身の手から与えられる快感に、また小さく声を漏らした。 「……ぅぁ……ん……」 ああ、こんな風にレイが自分でしている姿を見るのも、中々いやらしくて良いな。 レイは、俺と共にイこうとしているのか、切なげに眉を寄せ、背を逸らすようにして必死で快感に耐えている。 俺よりも白いその肌が色付いて、手を動かす度に、肩が小さく揺れている。 窓から細く差し込む月光に金の髪をキラキラと揺らしながら、荒い息を堪えるようにして、俺に奉仕するその姿に、ぞくりと熱の塊が俺の背を駆け上がる。 ……こいつの内側を、もう一度、存分に掻き回したいな……。 胸に渦巻く熱い欲に、どくりと俺の物が脈打てば、レイが切なげに啼いた。 「ぁ……ぅ……っ、俺、も……っ、イっ……イクっっっ……っ!!」 びくびくっとレイの物が波打つ。その刺激に誘われるように、俺も達する。 「っ……」 小さく震えるレイが、俺の吐精にあからさまにホッと表情を緩めた。 レイの手は俺とレイの精でドロドロになっていたが、まだゆっくりとそれを大切そうに扱いていた。 最後まで出せるようにと思ってくれているのだろうが、俺はまだお前を寝かせるつもりはないぞ。 「へへ……一緒に、イけたな……」 美しく整った顔を、ふにゃ、と崩して、レイが幸せそうに笑う。 俺と共にイけた事が、そんなに嬉しいらしい。 「……まったく、可愛い奴だ」 耳元で囁いて、その薄く柔らかな唇へ口付ければ、レイは切なげに息を漏らした。 ベッド脇の小さなテーブルから布巾を取ってやれば、レイはそれで俺の腹から拭い始める。 いや、お前の手が先だろう。 レイは、俺の下腹部を丁寧に拭い、俺のそれを拭き始め、ピタリと動きを止めた。 「……ルス……、さ、もしかして……」 レイの顔は、明らかに引き攣っている。 俺のそれは、レイに拭かれる間にまたじわりと起き上がっていた。 「何だ?」 こいつの問いは分かっていたが、こいつの口から聞きたくて、俺は先を促す。 「や……えっと、まだ……ヤる気だったり、すんの……?」 「そうだと言ったら?」 口端を不敵に持ち上げて低く答えれば、レイは潤んだ瞳で俺を見上げて、ゴクリと喉を鳴らす。 中々可愛い反応をするじゃないか。 「え……、と、ダメって事はないんだけどさ、今夜はもう、こんな時間だし、明日に……」 俺を傷付けまいと気遣いながらも、やんわりと逃げようとするその姿は、余計に俺の欲を煽る。 逃げの言葉を続けようとする唇を強引に奪えば、びくりとレイの肩が揺れた。 「ん……っ」 レイは俺の胸を遠慮がちに押し返そうとするが、俺はレイを逃すつもりはなかった。 片腕をレイの背に、もう片方の腕でレイの頭を引き寄せ、深く深く口付ける。 閉じられた唇を割り入り、レイの歯列を舌先で求めるようになぞれば、レイは躊躇いがちに、ほんの少しだけ口を開いた。 ……レイは、決して俺を拒否しないな……。 思わず、どこまで許されるのか、確かめてみたくなる。 どこまで犯し尽くせば、こいつは俺に、やめてくれと言うのだろうか。 どれほどの目に遭えば、泣いて許しを乞うのだろうか。 何となく、こいつなら何をしても、俺から離れないのではないかという気さえする。 ……いや、いかんな。深夜だからだろうか。 それとも、まっすぐに俺を愛してくれるこの男が、可愛らし過ぎるせいだろうか。 俺は、ほんの少し歪んだ感情を抱えたまま、その僅かに開かれた入口から、口内へと無理矢理舌をねじ込んだ。 「……ぅ、ん……っ」 レイは俺の強引な口付けを仕方なく許すように、じわりとその口を開く。 奥まで侵入した舌で、レイの口内を思う存分蹂躙すれば、レイは小さく震えて俺の中に甘い喘ぎを零した。 「ん……んんっ、ぁぅ……ん……ルス……っ」 飲み込みきれなかった雫を口端から溢しながら、縋るように俺の名を呼ぶレイの姿に、俺はたまらなく煽られる。 レイの後ろへと腕を回し、二人分の体重を受けてずっしりとベッドに沈むレイのそこへと指を無理矢理進める、辿り着いたそこは、俺の注いだ物をまだ名残惜しげに溢しながら、小さくひくついていた。 何だ、俺に抵抗してみせた割には、随分と物欲しそうじゃないか。 俺は指を三本揃えてそこへと侵入する。 「ぁあっ!」 びくり、とレイの俺よりも細い腰が揺れる。 俺が膝の上に乗っているから、跳ねるほどには動けなかったのだろう。 離れてしまった唇と唇の間を、まだ細い糸が繋いでいる。 頬を赤く染めて、すっかり潤んだ瞳で、レイは俺をとろりと見つめている。 「もう一度抱いてもいいと、お前は頷いたろう?」 言えば、レイはハッとした顔をしてから、自身の態度に罪悪感を覚えたのか、しょんぼりと瞳を伏せた。 「そ……だよな……悪ぃ……」 どうしてこう素直なのか。 そして、どうして、俺にそう気を遣うのか。 俺は、どうしようもないレイに苦笑しながら告げた。 「レイ……俺に遠慮をする事はない。もう身体が辛いなら、そう言えばいいし、眠いなら、そう言えばいい」 「いっ、いや、まだへーきへーき!」 反射的に、レイが顔を上げて首を振る。 俺の前でよくする仕草だな。 どうも、レイは俺に心配されるのが辛いのか、平気だろうと平気じゃなかろうと、こんな風に返す。 「……言ったな?」 言質を取って、俺が暗く笑めば、レイはようやく不味い事を言ったという表情を見せた。 俺はレイの膝からおりると、そのまま元の壁に背を預ける。 両腕を広げて誘えば、レイは慌てて自身の腹を拭ってから、俺の上へと跨った。 なんて従順な姿だろうか。 これがあの、飄々として、ヘラヘラと軽口ばかり叩く三番隊の隊長だなんてとても思えないな。 レイは俺の物をおずおずと手に取ると、小さく悪態を吐きながらも自身の内へと入れる。 「……なんで、ルス、こんな元気なんだよ……っ、ん……ふぁ……ぁぁ」 ズブズブとレイの体重によってレイの中へと入り込む自身を眺めながら、俺は目を細めて言う。 「それは、お前が可愛すぎるせいだな」 言われたレイは、青い瞳を揺らして驚いたような顔で俺を見る。 「お……俺のせいかよ……」 拗ねるような言葉を吐きながらも、滲み出る喜びを隠しきれていない様子が、たまらなく可愛い。 「お前のせいだな」 俺が頷いて肯定すれば、レイは恥ずかしそうに目を逸らして呟くように言う。 「じゃ、じゃあ俺が……責任取んなきゃ、な……」 なるほど、そう来たか。お前は健気にも程があるんじゃないか? 俺がお前を求めるなら、いくらでも答えると言う事か。 どくり、と胸に熱がほとばしり、背を駆け下腹部に集まる。 これは、朝まで寝かせてやれそうにないな。俺はそう確信した。

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