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――なんだよ、これ。
此花光 は、ショーウィンドウの前で足を止めた。
黒縁眼鏡と不織布マスクで隠した顔を硝子に押し付け、中にある商品を覗き込んだ。
キラキラ光る硝子の向こうには四角い箱型の照明器具が展示されている。
春の新作を謳ったシリーズ商品。
数種類のバリエーション展開がなされた器具にやわらかな明かりが点っている。
その一つ一つを目で追ううちに、光の身体から血の気が引いていった。
指の先が小刻みに震え、喉がからからに乾く。
――なんなんだよ、これは。
正月明けの郊外型ショッピングモールは、真新しい空気に包まれていた。連休初日の午後、通路を歩く人の数は祭りの日のように多い。
吹き抜けの天井からきらきらと日差しが降り注ぎ、華やいだ空間を家族連れやカップルがにこやかに言葉を交わしながら歩いてゆく。
立ち止まる光を迷惑そうに避け、人の波が割れる。
大柄な中年女性に肘で押され、光はショーウィンドウ脇の狭い窪みに押しだされた。
若い女性グループや身綺麗な装いの主婦たちが目の前を通り過ぎ、色とりどりの商品を指さしながらショップの中に吸い込まれていく。
頭上にはロゴをあしらった銀色の文字。
LA VIE EN ROSE ――薔薇色の人生……。
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