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気になる話 19

人の噂も七十五日とよく言うが、この男は365日以上噂話に乗せられたまま疑うこともなく今日を迎えた。その所為で、俺は余分な話をする羽目になったが。 肝心なことはまだ話せていないまま、時間だけが過ぎていくことに俺は苛立ちを感じていた。 「白石、怖い。お前オーラが怖い……でも、お前に関係ない女のことをなんで今更俺に聞くんだよ?」 隠すことのない殺気に気づいたらしい康介は、セットのドリンクを飲み干した後にそう尋ねてきたから。 「それ、それが本題。1年狩りの愛ちん、だったっけ?お前さ、その女の手口知ってるか?」 残り少ない時間を有効に使うため、俺はクソアマの情報を聞き出していく。 「んー、噂によると飲み会後に新入生の1年を拉致ってるらしい。歳上よりまだ何も知らない歳下の方が誘いやすいって話は聞いたことあるぜ、だから1年狩りの愛ちんって言われてんだと思う」 どうやら弘樹以外にも、無知な被害者が存在するようだ。弘樹がされた通りの流れで、おそらくこのクソアマは次々に男を狩っているのだろう。 「未成年に飲ませるだけ飲ませて拉致か……っつっても、ホラ吹き女の噂話なんて信用できねぇーけど」 俺とヤッたなんてデマを、先輩とグルになって流す女を信用しろと言う方が間違っている。そもそも、この女がやっていることを現行犯で目撃できれば、クソアマは間違いなく犯罪者だ。 未成年に飲酒させ、その後は淫行に及ぶなんて。男が女にしていたら確実に女は被害者と化し、そうしてどんな理由があれど男が100パーセント悪くなるというのに。 女は何をしても許されると思っているのか、またはヤらせてやっているスタンスなのか……たかが大学のサークル如きで女王様を気取っているなんて、なんとまぁ哀れな女なんだろう。 「アレだ、愛ちんは写真を残すらしいぞ。俺は見たことねぇけど……その写真を使って1年を脅して、セフレにして遊んでるって話だ」 「ふーん。なかなかのクズ女じゃん、しょーもな」 自分から狩りに出なければ、男が寄ってこない寂しい女だと自ら豪語して楽しいのだろうか。もし仮に、クソアマがそれで周りのヤツらにマウントポジションを取っていたとしても、俺には惨め以外の言葉が見つからない。 どうせなら、身も心も貪り食う勢いで俺を惚れさせる魔性の星くんみたいに……何もしなくても自然と男が寄ってくるような、人としての愛らしさを身に付けた方がいいのではないかと思ってしまう俺がいるけれど。 「ロデオにされた1年は、愛ちんに振り回されるのが嫌になってサークル辞めるか、そのまま虜になるかのどっちからしいぜ?」 俺の考えなど知る由もない康介は、お喋りマシーンのように話していくばかりで。 「なるほどな。どっちにもなれなかったお前に、俺から1つ頼みがあんだけどさ。康介、お前その女に会ってこい」 「おうッ!え、なんで?」 俺の目的を告げた途端、元気な返事をした後に首を傾げた康介は、ポカーンと口を開けた状態でなんとも間抜けな顔をしていた。

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