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第52話捕らわれの真実

 あどけない顔をにこりと微笑ませ、ククは健気な魔の者の子を演じる。  どう見ても純粋で人が好さそうなか弱き存在に見えるが、その正体は魔の者の王クウェルク様だ。結界石で魔力を封じられていなければ、ここにいる誰よりも一番の強者。  知らぬということは恐ろしいものだ。  そう思いながら連れて行かれた所は、二階に上がって突き当りの部屋。この宿屋の中で一番の大部屋だと思われる所だった。  寝台の数は六台。退魔師たちの数を賄うには足らない。宿を貸し切り、他の部屋もすべて使用できるようにしたのだろう。  そういえば宿屋の受け付けには誰もいなかった。一般人を完全に排除し、襲撃された際の被害が出ないように心を配ったなら、昔よりも退魔師たちも成長したものだと思う。  まあ俺たち魔の者に対しての扱いは、今も昔も変わらないだろう。  きっと俺たちは縛られて床に転がされ、部屋の隅で一晩を過ごすことになる。  そう考えた矢先──ドンッ!  強く背中を突き飛ばされ、俺は寝台の上へ倒れ込む。 「クッ……急に何を──」  体を起こそうとした俺を、若い退魔師が即座に押し倒して組み敷いた。 「何って、アンタら夜に力が強くなるんだろ? だったら今の内に弱らせて、逃げ出さないようにするんだよ」  若い退魔師の後ろから、他の退魔師が二人ほど俺たちを覗き込んでくる。その顔はどれもいやらしい笑みを浮かべ、目を色めき立たせていた。  ……ぞわり。  嫌な予感が俺の背筋を凍らせた。 「まさか……」 「抵抗するなよ? 俺たちだって魔の者を相手にするなんて反吐が出るんだ。だからお互いに少しでも良い思いができるよう、抵抗するんじゃないぞ」  これから何をされるのか察しがつき、思わず俺の顔が嫌悪で歪む。その時、 「きゃっ……や、やめて……っ、いや……っ」  隣の寝台から高い悲鳴が聞こえて思わず目をやれば、俺と同じようにククが退魔師どもに組み敷かれ、今まさに嬲られようとしている最中だった。  これがこいつらのやり方か。  手慣れた様子を見る限り、今に始まったことではないのだろう。  魔の者が退魔師に捕らわれ、協会へ連行されてしまえば、二度と同胞の元へ帰っては来なかった。ひどい拷問を受けた末に滅されてしまうのだろうと思っていたが──見目の良い者は男女問わずに同じ目に遭ったというのか。  俺の脳裏に人だった頃の記憶がよぎる。  理由があれば何をしても構わないというのが人間なのか?  卑劣な手が俺の襟元を掴んでくる。  咄嗟に首を振り、脚をばたつかせて抵抗してみせるが、退魔師たちに足首へ結果石を散りばめた細い鎖を巻きつけられ、俺の動きは封じられてしまった。  脚が岩にでもなったのかと思いたくなるような重さ。自分では情けなく震わせることしかできない。  しかし若い退魔師はいとも簡単に俺の脚を開かせ、間に割って入る。

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