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第6話 想いを募らせ(陽一郎視点)

 願いが通じたのか、それ以降友渕は陽一郎に対して、熱意溢れる『応援』をしてくれるようになった。  初めてのチェキ会で持ち帰った写真は、陽一郎にとって大事なものの一つになっていた。ライブがある日は、自宅に飾っているその写真を眺めて、パワーをもらっている。  実際にライブが始まり、自分に向かって手やサインライトを振ってくれる友渕の姿が見えると、心が躍る。スタッフから「いつも来てくださってる彼、今回も物販で陽一郎さんのグッズ全種買いされていきましたよ」と聞けば、自分への熱い気持ちがひしひしと伝わってくる。  イベントを重ねていくたびに、友渕と楽しく会話ができるようになっていることが、とても嬉しいと思ってしまう。  そんな日々を過ごしているうちに、陽一郎の友渕への想いは、日ごとに大きくなっていった。  この想いは、性欲にも直結してしまう形で表れてしまう。 「はっ……、ああ゛っ♡友渕さん……っ♡」  ライブやイベントなどで友渕の姿を見た後は、特に抑えることができない。罪悪感に苛まれながらも、自宅で自慰をすることが欠かせなくなってしまった。  熱く昂った逞しい陰茎を扱けば、先走りがダラダラと溢れ出る。目を閉じれば、その日に見た友渕の姿が鮮明に思い出せる。  自分だけを見て、この身体に触れてほしい。少し冷たい友渕の身体に、自分の体温を分けてあげたい。友渕の自分に対する思いを、全身で受け止めたい。 「う、ぁ♡」  そう思うと、自分が友渕に抱かれているという妄想が自然と湧いてきて、身体が疼いて仕方ない。  ローションをつけた中指で、ヒクつく後孔の縁に触れる。何度も触れてきたそこは、キュンと指を咥えこもうとしてくる。 「んゔ……っっ♡♡」  指に少し力を入れれば、あっさり深く挿しこむことができてしまう。 「友渕さん……♡んお゛ぉ……♡♡」  クチクチと音を立てながら、後孔に挿しこんだ指を動かす。自分の指を、友渕のほっそりとした手だと思いながら刺激すると、快感が背筋を駆け抜ける。  ──握手するときに触れる友渕さんの指で、俺のナカをこうして触れてほしい。 「んあ゛っ♡♡」  無意識に指をきゅぅぅと締めつけてしまう。快感が強すぎて避けがちな前立腺に指が当たり、快感に身震いする。  友渕のキラキラと輝く純粋な眼差しが、情欲に染まるとどうなるのだろう。自分が楽しいと感じている友渕の大げさな物言いは、セックス中も変わらないのだろうか。  陽一郎の頭の中は、友渕が自分を抱いていると妄想した時の姿でいっぱいだ。 「イきそ……、っ、うゔ♡♡」  後孔だけでなく、そそり勃ちながら先走りを垂れ流している陰茎も一緒に扱き、絶頂への階段を登っていく。 「い、ぐっ♡♡っっ〜〜〜!♡♡」  留めておけない友渕への想いが溢れ出すように、陽一郎は精液を迸らせながら達した。 「ぁ、ぁ♡……はぁ、何やってんだ俺は」  余韻に浸る間もなく、罪悪感と虚無感が襲う。  後処理をするときに感じる、この虚しい時間が嫌だと思っているのに、止めることができない。  この気持ちは、消さなくてはならないのだろう。だが陽一郎にとっての『初恋』は、もう消すことができないほど、濃く色づいてしまっていた。  そんな中、動画配信サイトでグリスタの公式チャンネル開設が決まった。自分たちのことをもっと知ってもらい、ファンとの距離を縮めようという狙いだ。 「動画……これを使えば、友渕さんに気持ちを伝えられるかもしれない」  陽一郎は、友渕が自分に会いに来てくれるのを待つだけの現状を、なんとか変えたいと思っていた。  事務所には内緒で、メイキング動画をまとめたサイトを自力で作った。そこからリンクを繋ぐ、裏チャンネルと称した特別なサイトも作ってみた。 「やればできるものだな」  友渕からなにも反応がなかったとしても、自分の想いを伝えられればそれでいい。  本来であれば、特定のファンに向けた動画を作るなど、あってはならないこと。陽一郎にとって、まさに最初で最後の賭けである。  動画を見た結果、友渕が愛想を尽かしてしまい、二度と会えなくなる可能性だってある。そもそもリンクを繋げた特別なサイトを、友渕が発見できるとは限らない。  ──半端な動画を作っても、後悔するだけだ。  友渕に伝えたい気持ちを込め、かつ直接『好き』とは言わない。  このルールを決め、陽一郎は自分の欲望を曝け出した、友渕のためだけの動画を撮るに至ったのであった。

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