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第1話
「暑いな」
「そりゃ夏だからね」
炎天下、縁側でアイスを食べながらそんな会話をする。
今日は夏休み初日。珍しく部活もなくてゆったり出来る一日だった。
「今日はなんで部活休みなの?」
「ああ。顧問の会議があるからだろ?」
「ふうん……。休みになって良かったよね」
「ああ。…………プールとか行くか?」
「やだ。暑いし、体が茹だる」
「じゃあバイキングとか行くか」
「……クロ、自分が行きたいトコしか言わないじゃん」
「じゃあ、お前はどこに行きたいんだよ」
「いや、そもそも家から出たくないし」
「えっ、こんな絶好のチャンスにどうして出掛けないんだよっ」
「だるい」
「……研磨君。それはよそうよ」
「だるいものはだるいんだから仕方ないよ。今日は一日ゆっくりしたい」
「そんなこと言わないで。なっ?」
「……」
「ほらほら、この間言ってたアップルパイのおいしい店とか行かないか?」
「……行く」
「じゃあ出掛けよう」
「……うーん」
「なっ?」
「………………うんっ」
どんなに暑くても、どんなに億劫でも、好きな物のためには頑張るのを知っているクロによって駆り出された研磨は、『ちょっと早まったかな……』と思いながらも口が緩むのを止められなかった。
○
電車に乗って炎天下の中歩き、店でも行列に並び、待つこと一時間。それでも残りわずかなアップルパイはとても美味だった。
「クロは食べないの?」
「俺は別にアップルパイじゃなくても大丈夫だから」
「そう」
やっとお目当てのアップルパイにありつけた研磨はとてもご機嫌だった。
それを見たクロも嬉しそうに店の二番人気になっているパンケーキセットを頬張る。
言い始めた以上お会計はクロ持ちだ。財布に入れてきた金額と今月の残り日数を計算して大丈夫と頷いてみせる。
「クロ」
「ん?」
「来月はさ、おれが奢るから何か食べたいものリクエストしてよ」
「え」
「何」
「研磨がそんなこと言うなんて」
「うん?」
「成長したなと思って」
「おれだってそのらいく考えてるから。クロにばっか金出させないからねっ」
ムクれながらも美味しそうにアップルパイを頬張る研磨はやっぱり可愛い。
あれこれ世話をしてやらなくちゃと思わせる何かを持っているとクロは考えていた。
「何がいい?」
「別に俺、『何かじゃないと』ってのはないから研磨が食べたい物でいいよ」
「じゃあまた同じようなカフェになっちゃうよ」
「いいよ。研磨と一緒なら」
「…………クロってホントにバレー以外欲がないよね」
「そうか?」
「そう」
「それでもいいじゃん。俺は研磨と少しでも長い間一緒にいられれば満足なんだし」
「…………ならいいけど」
「ああ。旨いな、これ」
「二番人気だからねっ」
「そうだな」
「うん」
二人してテーブルを囲むこのひと時がクロにとっては至福の時間だった。
いつも一緒だからいいじゃんと言うものではない。
いかに相手に喜んでもらうかがクロの考える時間の共有だったりしていた。
その後ゲームセンターに行って商店街を満喫すると自宅に帰る。
「クロん家今日も遅いんだろ? ならまた家で夕飯食べてけばいいじゃん」
「うんまあ……。おばさんがいいって言えばな」
「いいって言うに決まってんじゃん。クロって、そういうところナーバス」
「だって俺はお前の家族じゃないんだぜ?」
「エッチまでしてるのに?」
「ぇっ…………」
「一緒にお風呂に入って、一緒にベッドで寝て、挙句の果てにエッチまでしちゃってるのに何言ってんの?」
「ちょっ……ちょっと、研磨君?」
それ、お母さんに言ってないよね?
思わず問い正したい気持ちを抑えて顔を引きつらせたクロだったが、そこはそこ。うまいことクリアして今無事に食事風呂を終えてベッドインの最中。
「明日は部活あるよね?」
「ぁ、ああ」
「朝から? 昼から?」
「ああ、朝から」
「だったら、早く寝ないと。おやすみ」
「ぁ、ああ。おやすみ…………」
「ぅん」
チュッと唇と唇を重ねてくる研磨を思わず抱き、締めてしまう。
「クロ?」
「ちょっとだけ。ちょっとだけしよう」
「……明日部活なのに?」
「うん」
「クロ、ちゃんと責任取ってよ」
「うんっ」
○
「ぅっ……ぅ……んっ」
小さく、囁くように研磨が吐息を吐く。
布団の中で下半身だけを脱いでモノをしゃぶられているからだ。クロはけして研磨の嫌がることはしない。だからおしゃぶりも乱暴ではなく執拗だった。
しっとりと濡れたソコには指ももう入れられている。大きく開いた脚の間に入り込んだクロは慣れた手つきで内腿をさすると頬ずりをした。
「ぅっ……んっ……んっ……クロっ、おれもぅ……っ」
「分かった。実は俺もなんだ」
タイムリミット。ふたりともそろそろ限界が近づいてきている。
一度出してしまってから再度と言う手もあるのだが、布団の中での行為は汗だくで思考を鈍らせる。
それに早くしたいと言うのもあって忙しない。クロは起き上がると研磨の脚を担ぎゴムを取り出して自分に取り付けた。
研磨は暑さと熱気で朦朧としながらもこれから起きることへの期待のまなざしでそれ見つめていた。
「今日は……付けるの?」
「明日、体動かすだろ? 中に残ってたら辛いかなと思って」
「朝までには出ちゃうと思うけどね」
「でもな」
「……そういうトコ、好き」
「ばか」
首に手を伸ばして来る研磨に近づきながら、同時に我慢出来ずに秘所への挿入も開始する。
「あっ……んっ! んんっ! んっ……!」
「苦しい?」
「ジェル付いてるから…………大丈夫。もっと来て」
「ああ」
ググッと挿入しながら近づくと耳に研磨の荒い息がかかる。
「研磨っ……大丈夫か?」
「だい……じょうぶっ…………」
ギュッと抱き付き脚を絡ませてくる研磨にちょっと安心したと同時に「可愛い……」と思いながらもどんどん奥へと突き入れる。
奥ももうこれ以上は無理と言うところまで突っ込んでしまうと、そこでやっとちょっと休憩する。それもこれも強がりを言っている研磨への配慮だった。
クロとしてはそうやって我慢しているのも実は辛いのだが、翌日の研磨の体を考えるとこれがベストだと思えるから我慢出来る。
「クロ……も……動いていいよ……」
「でももう少し」
「……早くやって、早く終わろ。でないと明日ヘバるのも早いと思うから……」
「……分かった」
ググッと引きずり出すと「ぁぁぁっ」と研磨が小さく口走る。
その声を聞いてしまうともうクロのほうの我慢が利かなかった。
一度出し入れを開始すると、それは中に出すまで終われない。だんだん動きも激しくなって欲望を露わにする。
「んっ、んっ、んんっ!」
「あっ……んっ、あんっ、ぁぁっ……んっ!」
相手が抱きつきながら腰をくねらせる。それに付き合って突き上げると研磨は身を震わせて喘いだ。
「あああっ……んっ! んっ! んっ!」
ビクビクッ! と捕まえた魚の如く大きく震えた研磨は、自らのモノに触らず体に押し潰されたまま果てた。
それと同時に締め付けもキツくなったせいでクロもほどなくしてドクドクッと脈打って果てた。
「早いね」
「どなたかが『早くやって早く終わろう』とか言ったんじゃなかったっけ?」
「おれですよ」
「でしょ。なら満足でしょ?」
「うん。でも、ホントはまだ物足りないんだよ?」
言いながら尻から萎えたモノを引き抜くとゴムに手をやってそれも取り去る。
「おれの、汚れちゃった」
「……ぁ、うん」
「舐めて?」
「……いいよ」
「じゃ、『お互い様』でいい?」
「はいはい」
69の姿勢でお互いのモノをしゃぶり合ってまた気持ちを高ぶらせる。だけど今度はそのまま口での奉仕を繰り返した。
「んっ……んっ……んっ」
研磨の舌先が繊細にモノを這う。レロレロしながら歯で甘噛みされて指でしごかれ、挙句にやさしく袋を揉みしだかれると天国のような気分になってしまう。
「あっ……ぁ……ぁ」
「ふふっ」
しゃぶっていた口を疎かにしていたクロはハッと我に返ると、研磨にも同じことを返してみたのだが、いかんせん相手のほうが上手だった。と言うか、研磨のほうが繊細なところを攻めるのが上手いのだ、きっと。クロは抵抗をやめてされるがまま相手の口の中に二度目の射精をした。
「クロ、最後までちゃんとやって」
「すみません。研磨さんのお口が大変お上手だったので翻弄されてしまいました」
「……なら許す。もう、クロ言い訳が上手いっ」
下半身中途半端なままの研磨がペタンとシーツに座りながらモノを握り締める。
「なら、そのままでいいから見てて」
「ん? うん」
何をするのかな……と思っていると、研磨はそこで目を綴じると自慰を始めた。
「んっ……ん」
「研磨君?」
「いいから見てて」
「分かりました」
座り込んだまま自分で自分のモノを両手で握り締める。もう少し奥へと手を進め、片手でモノをしごき、片手で袋を掴むとやんわりと揉みだした。
「ぁっ……ぁ……ぁぁっ」
腰をくねらせて上下しながら自慰をする。
モノを滑らせる指が平たいところだったり先端だったり、時には爪を立てたりして弄んでクロに見せつけてきた。だけどなかなか射精出来なくて悲しくなったのか、研磨はパチリとかわいらしく目を開けると口をへの字にしてクロを見つめてきた。
「クロ。して」
「ぇ、何を?」
「ちゃんとHして。おれを満足させて」
「……仰せのままに」
そんなことを口にするなんて……と思いながらも、ニッコリとほほえみながら覆い被さったクロは、今度は生身のモノを研磨に挿入しだした。
やっぱりちゃんとしないとなっ…………。
「あっ……! ぁぁっ……」
「いい?」
「いいっ。結局……これ、だね……」
「加減しちゃ駄目か」
「んっ……んんっ、んっ!」
それから先は正面からガンガン攻め立てる。
角度を変えて突き上げて、時々股間のモノをしごいてやるのも忘れずに突っ込みを持続する。
「あっ……あっ……あっ……んっ!」
抱き上げて自分の上に乗せると腰を掴んで下から突き上げる。ねじ込む勢いで突き上げると研磨はまた自分のモノを持つことなく二度目の射精をしていた。
「うううっんっ! んっ! んっ!」
「くぅっ……っ…………」
研磨の体の力が抜ける。それを抱き留めて首筋にキスをした。
「満足?」
「……まあまあ」
けどその唇は微笑んでいるのを見ると合格点にはなっていると思う。研磨の手がギュッとクロの首に抱きつく。
「拭いて」
「はいはい。綺麗にしてからさっさと寝ようか」
「うん」
拭いてと言いながら、お互いに体を拭き合うとシーツを取り替えて抱き合って眠りにつく。
「目覚まし大丈夫?」
「六時にしてある」
「じゃ、おれは六時半に起こして。おやすみ」
「分かった。七時な」
つまりギリギリまで寝ていたいと言う意思表示をした研磨に神対応するクロ。そしてそれはいつも現実となっている。時にはなかなか起きてくれないので、背負って部活にgoと言う日もあるくらいだ。
それでも全然嫌じゃないクロと、連れて行かれればそれなりに活躍する研磨。凸凹具合がピッタリと合っているからお互いを許せるふたりだった。
終わり
タイトル「夏だね -夏休み部活前日夜話-」
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