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37.好きは溢れるもの

”好き”が溢れないように我慢しなきゃ。  長の言うことは絶対だろうから、誰にも”好き”って言わないようにしよう。大丈夫、心の中で想うだけだから。それだけなら許してもらいたい。  翌朝、長が隣にいなかった。緩慢に上半身を持ち上げて、布団を見回す。長と僕が寝てもまだ余裕がある大きな布団で一人きりだった。  長がいない。 「ウイ様、目覚められましたか」  部屋の隅にはリンドルが控えていてくれた。それだけでもほっとしたが、長が隣にいなかったことがとても悲しかった。でも心配をかけてはいけないと思ったから、どうにか涙はこらえた。 「うん……リンドル、おはよう……」 「長殿は仕事だそうです。なんでも昨夜誤って仕事部屋を破壊してしまったそうで」 「は、破壊?」  びっくりして潤んでいた涙が引っ込んだ。 「はい。どうも興奮しすぎたりすると力加減を誤ってしまうようで。なのでカヤテ殿と共に仕事部屋の修理をしているそうです」 「そう、なんだ……」  それじゃしょうがないと思った。そして、簡単に壊してしまうとか長ならばありそうだなとも。 「ですので朝食は先にいただいてください。本日の仕事が終わり次第こちらにいらっしゃるそうです」 「わかりました」  リンドルに言われた通り朝食をいただいた。それからリンドルの腕に囚われた。 「ウイ様、中をキレイにしましょう」 「は、はい……」  にっこりして言われ、僕は逆らうことができなかった。  寝巻をはだけられ、全身状態を確認すると称して身体を舐めるように見られた。なんか、リンドルの視線は時々ねっとりとしているように感じる。なんといえばいいのか、とてもいやらしいのだ。いやらしいと言っても不快なものではない。ただ、僕が気にしてしまうだけで。 「肌が白いから、ちょっとでも赤くなるとわかりますね。……素敵です」 「そん、な……」  リンドルのようなキレイな人に言われるといたたまれなくなってしまう。 「ウイ様、乳首を育てる許可をください」 「ち、乳首を育てるって……」  更に熱が上がるのを感じた。 「毎日育てないと乳が出るようになりませんよ? 天使さまの乳は滋養強壮にいいのです。私も早く飲みたくてたまりません……」  そんなに楽しみにするものなのだろうか。僕は首を傾げた。 「いい、けど……」  長も僕の乳を飲みたいって言っていた気がするから、育ててもらった方がいいだろう。そのおかげで全身甘くなって、ひたすらに喘ぐことしかできなくなったとしても。 「ウイ様、ありがとうございます」  リンドルはとても嬉しそうに笑むと、僕の唇にちゅ、とキスを落とした。え、と戸惑ったところで胸に顔を落とされる。 「あっ……」  はむっと乳首を咥えられてびくっと震えた。 「ウイ様は感じやすくてかわいいですね……」  リンドルは嬉しそうにそう言うと、すぐにぺろぺろくちゅくちゅと僕の乳首を舐めたりしゃぶったりしはじめた。 「あっ、あっ、あっ、あっ……!」  乳首をいじられ始めてそんなに経ってないのに、僕は乳首をいじられるだけで甘さを感じるようになってしまった。甘さはすぐに腰の奥に届いて、そこから何か分泌されるような気がするから不思議だった。  リンドルは優しく乳首を舐めながら、もう片方の乳首も指先で優しくこねる。時折軽く引っ張られたりするとびくびく震えてしまう。ちゅううっと吸われ、甘噛みされたりと緩急をつけられて、僕自身がすぐに勃ち始めてしまった。 「ああっ……!」  乳首をちゅうっと吸われ、リンドルの手が僕自身をやんわりと握った。 「ウイ様は感じやすくてとてもかわいいです……」 「やぁあっ……!」 「嫌じゃないでしょう? 抱かれてたくさん感じるのがウイ様の務めですよ? いっぱいイッてもっと感じやすくなりましょうね」 「あっ……はい……」  そのまま僕自身もリンドルにしゃぶられてしまった。イカされて、尻穴も舐められて中を洗浄され、ふわふわした状態で長が来てくれるのを待った。  準備ができたから早く来てくれないかなって思う。  長に抱いてもらえれば”好き”って言わないようにがんばれる。だから早くいっぱい抱いてほしい。 「ウイ様、もう少ししたら長がいらっしゃいますから、そんなに切なそうな顔をしないでください」 「えっ?」  切なそうな顔ってどんな顔なんだろう。僕は両手で自分の頬を押さえた。とても熱い。こんなに熱かったら僕が長を好きだってバレてしまうのではないだろうか。 「リンドル、どうしよう……」 「どうかしましたか?」 「ぼ、僕が……旦那さまのこと好きってバレちゃう……」  リンドルは何故か自分の額に手を当てて天を仰いだ。そして彼は何故か寝室の入口の方を見やった。 「だ、そうですが……こんなにウイ様を好きにさせてどうするおつもりなのですか?」 「……え……?」  僕はおそるおそる入口の方を見た。襖が少し開かれていて、長の顔が半分ぐらい覗いていた。  ……どうしよう。  ぽろりと涙がこぼれた。

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