9 / 9
おまけ! -3
「うわああぁぁあああぁぁ!」
飛び起きて見た世界は、暗闇だった。
視界は閉ざされているけれど、うっすらと浮かび上がってきた景色には見覚えがある。
「あ……ゆ、夢……?」
はああああ……よかった。
心からよかった……!
「けど、なんて夢だこんちくしょう……!」
今だにドクドクと速い鼓動を打つ心臓を撫で下ろしながら、深い息を吐く。
すると、隣に転がっていた長細い輪郭がもそもそと動いた。
「ん、佐藤くん……?」
「あ……ごめんなさい、起こしちゃいましたね」
「それはいい、けど……どした? 怖い夢でも見た?」
寝ぼけ眼のまま、理人さんが長い腕を伸ばして俺の頭を撫でてくれた。
まるで、子供によしよしするみたいに。
「プッ、ありがとうございます。落ち着きました」
「ん、おやす……あ、そういえばさ」
「はい?」
「佐藤くんは、どうなの?」
え。
――佐藤くんはさ、その……ど、どうなの。
いや、違う。
これはただのデジャヴだ。
正夢なんかじゃない!
むしろ、そんなことになんて俺がさせない!
絶対に……!
「ど、どど、どどどど、どう……って……?」
「おしり。ツルツルなのか? それとも、もじゃもじゃ……?」
「……」
これも、夢……だよな?
夢の中の俺が夢を見ていて、その夢から覚めたけど俺自身はまだ夢の中だから、こうやって頰を思いっきりツネっても絶対に痛くなんてないはず――
「いって……!」
「佐藤くん?」
「…………」
「佐藤くーん?」
「………………」
「なあ、佐藤くんもおしり見せて?」
頼む。
お願いだ。
早く目覚めろ、俺!
fin
ともだちにシェアしよう!