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第40話

 自分は人の温もりに飢えていたんだろうかとアンリは考える。 だからこそ、レオンのことを疑いながらも、縋りつくように求めてしまったのだろうか。  ずっと認めたくなかった。気づかないままで、ひとりで生きていきたかった。  気づいてはいけないと、気持ちに蓋をしようとしたが既に遅かった。涙が一粒、頬を伝っていく。 「どうした……?」  何度も触れ合った身体だ。戯れの後でも痛みはないと彼は知っているのだろう。不思議そうに尋ねた。 「……俺は、ずっとひとりだったから」  だから、寂しかったのかもしれない。その言葉を、アンリは最後まで言うつもりあなかった。彼も訊こうとはしなかった。 「今は、俺がいるだろう」  それだけ言って、濡れた頬を指でぬぐう。そうしてまた、蕩けるような快感に、二人して溺れていった。

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