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魔王は勇者によって倒され、地上には平和な世界が戻りました

 キースは洞窟の壁に背をもたれさせて空を仰いだ。白灰色の洞窟内は晴天の光を受けて、意外にも薄明るかった。  ――この感じだと、暮らせますかねえ。  天気の悪い日は暗いかもしれないが、世界を回っている時に見つけた光苔を上手く配置すれば、それなりの明は取れるだろう。夜を過ごすにもそれは有効だが炎のように自由に消すことはできないので、眠る場所には光が届かぬよう扉のようなものを作って「寝室」を別にするのもいいかもしれない。  洞窟は奥深く続いているが、探索はまたの機会にして取りあえずの寝床を確保するか、とキースは腰をあげる。野宿には慣れているがここを終の棲家とするには少しばかりの快適さは欲しい。無人島での物資調達は困難だろうが、幸い時間だけはたっぷりある。それこそ、死ぬまでここにいるかもしれないのだから。  洞窟から外に出ると、周りの伸びすぎた草を剣で切り分けながら崖までたどりつく。目前に広がった海は空よりも青くて、胸を突かれた。  美しさを分かち合いたくて、思わず仲間と旅をしていた昔の癖で振り返る。 「海が……」  もちろん、そこには誰もいなくて、キースが刈り取ってきた草の束が山となっているだけだった。  ――ああ、一人でした。  独りを望んでいるはずなのに、身についた習性とはおそろしい。  一人笑いながら、刈り取った草を手に洞窟に戻る。取りあえずの布団確保だ。多少手触りは荒いが、それも含めて改良すればいい。長い孤独を楽しむには、やるべきことが必要だ。 「ま、今日の所は寝床確保ってことで」  多少の食糧は持ってきたし、火を起こすことも水を確保することも魔法でできる。どうせ時間はあり余っているのだからのんびりするか、とキースは草の上に横になった。青臭い。枯れ草にするべきか、と思いつつ、目を閉じた。

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