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第6話
「迷惑をかけられたおぼえはない。むしろ、もっと迷惑をかけるといい。俺は、お前のためなら何でもする。」
…すっごく、驚いた。驚きすぎて、思わず、今日初めて、フィアの目を見た。
…なに、なに、それ。優しい、目だった。しんぱい、されてる。今まで、誰にも向けられなかった目。…でも、でも、ちょっと違うけど、これ、みたことある。
これは、泣き止ませてもらった後に、フィアが見せる目だ。泣き止んでくれて嬉しい、って、表情に乗らない色を乗せた瞳。
なん、だろ。さっきから、フィアの一言一言に一喜一憂して、フィアに抱きしめられてる状況に今更気付いて赤面してる。
「スティー?」
目があったまま呆然としてたら、フィアに呼ばれた。
「スティー、大丈夫か。」
なに、なに、これ。ねぇ、フィア、こわい、。
「スティー?」
フィアの顔がどんどん近づいてる気がする。でも、なんか、反応できない。
いつもと、なにか、ちがう。
「ふぃ、あ。ぁんっ」
きす、された。それも、濃いの。
ぶわぁっ、て、なんか、きた。何か、注ぎ込まれてるような、錯覚を、する。ど、して…?なに、これ?
なき、たい。まるで、求められてる、みたいで…ひどく、くるしい。
「ぷはっ、ふぃ、あ…?ど、して…」
「さっさとお前を俺に渡しておけば良かったものを。どうして肝心な時に一人で泣こうとする?花街で遊んだあとはちゃんと俺のところに泣きにきただろう。お前は俺の妻だよな?それとも、政略だから認めないとでも言うのか?それこそ俺は認めないし、このまま逃げる姿勢を崩さないなら今ここに物理的に鎖で繋いでやるが??」
わ、わ、かんない。なに、どゆこと。一気に言わないで。さっさと俺を渡す、ってなに。俺を渡すと何かあるの。
肝心な時に一人でなく、のは、これ以上、フィアに嫌われるようなことしたくないから、で。
つ、なぐ、って。
「つないで、くれるの…」
「ほう?お望みか。」
腕を取られ、カシャン、と音がした。う、嘘でしょ?!どこから出てきたの?!あと、なんか、早くない?!
「はぁ。取って欲しけりゃ洗いざらい吐いた後にもう一度強請れ。」
そして、今から言う事をよく覚えておけ。
「スティー、愛してる。ちょうどいいから、今日はお仕置きがわりに俺にもお前を愛でらせろ。お前、本命以外に惚れられるの嫌いだろう?」
ここで、俺の頭はパンクした、いや、あまりにも俺の都合のいいセリフすぎて現実を受け止められなかった。
ここから、夢見心地な1日が始まる。
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