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2.俺と桐谷の関係

俺は桐谷のことなんて好きじゃなかった。 ただ中学高校と同学年で同じ学校に通ったあいつとは、幼い頃から親同士が決めた許嫁の関係だった。 そして親の言いつけで大学卒業後一緒に住むようになって、俺の初めてを奪ったのはあいつだ。 その頃はまだ、桐谷の本性に気づいていなかった。 一緒に暮らし始めて最初のヒートで桐谷は俺を当然のように自分のものにした。 しかも、ゴムをするより気持ちがいいからと生で中出しまでされた。 まだウブで性的なことに疎かった俺は、恥ずかしいけど求められたのが嬉しくてあんな奴相手に少しときめいてしまった。あれでも乙種αなのでフェロモンに惑わされたのだ。 今思えば黒歴史でしかない。 とにかくその頃からあいつは俺が許嫁なのをいい事に毎度ゴム無しで中出ししてきた。俺はその度にアフターピルを飲んで、妊娠しやしないかとヒート後のホルモンバランスの崩れてる時期にビクビクして過ごさなくてはならなかった。  どうせ結婚するんだから妊娠してもいいと桐谷は思っていたようだが、俺は違う。 子どもを産む前に仕事である程度キャリアを積んでおきたかったから、卒業後すぐに20代で妊娠なんてしたくなかったのだ。 アフターピルはΩの場合あまり効かなくて、ヒートで中出しされたら薬を飲んでも高確率で妊娠してしまうと言われている。 だから俺は毎回びくついていたのだが、今思えば不妊だからピルなんて飲まなくても妊娠しなかったんだ…。 こうして不妊の兆候はずっと現れていたわけだ。 俺が不妊…Ωなのに妊娠できない…出来損ないのポンコツ… 「はは、俺が?」 甲種のΩだぞ?こんなことってあるのか…? 手の甲にポタリと水滴が落ちた。 我ながら思ったよりショックだったみたいだ。 しかも今後のことを考えたら本当に頭が痛くなりそうだ。 神崎の長男が出戻るんだぞ?親にどうやって顔向けしたら… しかもこんな時一番そばにいて欲しい婚約者がアレだ。 正式に籍を入れるまで首を噛まないというのが両家の取り決めで、つがいが成立してないのがまだ救いか。 「ふぅ…」 こんな時こそしっかりしないと。 俺は目元を拭って荷造りを再開した。

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