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14.奇妙な繋がり
俺の質問に大迫が答えた。
「美耶様の暴行の件で犯人を追っていると、あの晩ダイニングバーであなたが2人組の男性と飲んでいたことがわかりました。そして、そこから調べ続けてその2人組に会いました」
「え、見つかったんだ」
「はい。昔の知り合いの伝 で防犯カメラを見させてもらったらすぐわかりました」
大迫は元刑事上がりの護衛だ。現職の警官に顔が利く。
「そうか…」
「そして、その2人に話を聞いた所、2人はある興信所から仕事を頼まれたと言うのです」
「興信所がなんでこんな仕事を?」
「光様が以前あなたのことを調べるのに使ったことのある興信所で、前科ありの怪しい男が独りでやっていました。その男は光様からあなたの誘拐を頼まれたようです。しかしさすがにΩの誘拐に関わるのは恐ろしくなって、前金を中抜きしてチンピラ2人に仕事を下請けに出し、自分は姿を消しました。その2人は人を誘拐した経験など無い素人でしたから、あなたはホテルから逃げられたわけです」
そうだったのか。
「そしてその2人に聞いた所、Ω向けの発情促進剤を興信所の男から受け取ったと言っていました。そこでなんとか男を探し出し、促進剤のことを聞いてみるとあるΩ女性の名前が出てきたのです」
「Ω女性?」
「上條麻友です」
「はぁ?なんで上條が?」
俺の誘拐になんで俺の部下――というか桐谷の浮気相手の名前まで出てくるんだ。
「今それを調べている最中です。上條は美耶様が思っている以上に曲者 です。ただの光様の浮気相手というだけではなさそうなので更に調査します」
「わかった…」
そして大迫は言いにくそうに口にした。
「それと、美耶様に暴力を振るった男についてですが…」
そこで言葉を切ってチラッと礼央の顔を窺った。
すると礼央がその先を引き取って言う。
「そちらの件はもう少し美耶さんが回復してからにしましょう。今日は美耶さんが驚くような話ばかりでお疲れだと思うのでこの辺でお開きにしませんか」
「わかりました。では私は引き続き調べて何かわかりましたら文月様にご報告します」
そして大迫は一礼すると部屋から去っていった。
「美耶さん、大丈夫?びっくりすることばかりで疲れましたよね」
「え?ああ。ちょっと驚いたけど…。まさかあの2人が桐谷の指示で俺を誘拐しようとしてたなんて思ってもみなかった」
もしあの2人から逃げてなかったら、男にレイプされるんじゃなくて桐谷に捕まってマンションで飼われてたのか…
うーんどっちもどっちかなぁ。
「礼央に拾ってもらえたからこっちの方が良かったか」
「え?なんですって?」
「いや…なんでもない。それにしても桐谷って俺のこと好きだったってことなのかな?」
「おそらくそうなんでしょう」
「ずっと嫌われてると思ってた。あいつはヒートの時以外は触りもしないんだ。キスなんてもう何年もしてなかったくらい。俺の発情しただらしない顔を見ると萎えるから正面ではしないって言って、セックスするときは必ずバックからだったし」
「美耶さん…」
「あ、ごめん。こんな話聞きたくないよね」
「いいんですよ、なんでも聞きます」
俺は礼央の顔を見た。
優しい目で見つめられるとなんとなく安心する。
「俺の顔が嫌いだって言ってたんだ。生意気で見てるとイラつくって。だから家でも殆ど顔を合わせなかった」
「そうでしたか」
「大迫はわかってて何も言わないでくれたよ。優秀な護衛だったな…」
俺はパッと思い浮かんだ記憶を淡々と話し始めた。
「あるとき珍しく仕事が早めに終わってね。大迫に車でマンションまで送ってもらって玄関に入ったんだ。そしたら女物のパンプスがあってさ。あー、俺が早く帰るの知らないから女連れ込んでるんだって思って…。直ぐに外に出て大迫に電話したんだ。用事があるの思い出したから車回して貰えるかって」
「それで?」
「うん、そしたら大迫は勿論ですって直ぐ引き返してきた。俺は友達もいないし用事なんて無いのはわかってるんだけど行き先聞いて黙って連れてってくれた。ホテルのバーで飲んで、そのまま泊まるから翌日新しいスーツ持って来てくれって頼んで」
礼央は俺の頭を静かに撫でながら聞いている。
「翌朝ちゃんとスーツをマンションから持ってきてくれた」
「さすがですね」
「うん。それで”女はまだいたか?”って聞いたら”何のことですか”って表情も変えなかったよ。きっと俺がホテルに泊まるって知って桐谷は女を泊めたはずなんだけど」
「ええ」
「優秀な護衛だよ、大迫は」
「はい」
「ごめん、疲れたからちょっと寝るね」
「はい。お休みなさい」
「お休み」
俺が眠るまで礼央は頭を撫でながら隣に座っていてくれた。
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