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No.31 無題

妖が住まう山だと知り、喰われるために俺は入山した。自分で命を絶つ勇気がないから喰ってもらおうと思って。だが俺を迎えたのは通り雨だけ。落胆して山小屋の軒へ駈け込めば、和装の男が俺を見ていた。中へどうぞ。優しい声色とは裏腹に、瞳の奥に怪しい光を見る。彼に喰われたくて俺は中へ誘われた。

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