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第52話

「おい、相手がぼろ雑巾みたいになってるんだし、そろそろやめとけ。」  理一は声がした方を向く。  やや呆れの見える声と顔で一総が言った。  なんで呆れられているのかがよく分からない。理一はもう一度もっている物を引きずりあげる。 『やめろ。』  もう一度一総が言った。直ぐに力を使ったのだと気が付いた。  ドサリ。  手に持っていたものを落とす。 「やりすぎなんだよ。別に完全に排除する必要が無いこと位分かっていただろ?」  一総は理一が落とした人間を確認する。  息はある。 「大丈夫か?自我は保ててるか。」  理一は瞬きを何度もしてから答える。 「大丈夫じゃないのかもしれないけれど、とりあえず自分が今何をしたかは理解できてる。」  そうか。一総は片手で理一を抱きしめる様に引き寄せる。それから、背中を何度かとんとんと優しく叩いた。 「お疲れ様。後よく耐えた。」  理一が目を見開く。 「こいつら引き取らせたらゆっくりしようか。」  一総が目を細めて蠱惑的に笑った。  理一が昂りを鎮められていない事を察してなのだろう。その誘いが正直ありがたかった。

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