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番外編:意地っ張り

※時系列本編の中の多分契約より前だと思います。  寝苦しい夜だった。  一総は夏休み前ということもあり夜9時過ぎまで生徒会の仕事を片付けていた。  学園は22時にはすべての鍵が自動でしまってしまうため、深夜は仕事ができない。  自室のある階にエレベーターが止まり、一総は自室に向かう。  すると部屋の前に影を見つけ一瞬警戒したがすぐにそれが誰かに気が付いて緊張を解いた。 「中に入って待っていればのに。」  一総がそう声をかけると、しゃがみ込んでいたその人物、木戸理一は面倒そうに顔を上げた。  遅くともエレベーターのドアが開いた瞬間には一総の存在に気が付いているはずなのに声をかけられてから渋々という体で顔を上げる理一に一総は思わず口角が上がる。  二人で扉の前に並んで鍵を開ける。  勝手知ったると靴を脱ぐとリビングに向かう理一を見て、その慣れが嬉しいと理一は思った。  クーラーの電源を入れると涼しい風が出てくる。  ソファーにだらりと座った理一が目をつぶる。 「今日は実家、じゃなかったのか?」 「あー、予定が早めに終わったので。」  疲れている様で、抜けきっていない変な敬語もどきか全く出ない。  目をつむっているのを良いことに一総は理一の唇にそっとキスを落とす。  本気で疲れているのか理一はされるがままだ。  一つずつシャツのボタンをはずしてインナーをめくりあげられる段になって漸く理一は瞼を上げて一総をその瞳にとらえた。 「疲れてるんすけど。」  理一が言う。 「わかってる。まあ、無理をするつもりもないし、俺の異能は知っているだろう?良い疲労回復になる。」  それに、こうやって疲れていて自己回復機能が働きづらい時でないとできないこともあるし。その言葉を一総は理一には伝えなかった。  一総はソファーの背もたれを倒すと、そのまま理一に口づけた。  濃厚な口付けはくちゅくちゅといういやらしい音がするほどで、数分もたたないうちに理一の表情はとろりと蕩けた。  一総が唇を離すとつうっと唾液が糸になって二人の間を伝う。  それでもぼんやりと一総を見上げる理一の意識を浮上させるように、たくし上げられてあらわになっている胸の突起を少し強めに摘まむ。 「くぅ、んっ。」  子犬が鳴く様に啼く理一に一総は気を良くする。 「理一はなんだかんだ言って快感に弱いな。」  一総は理一にたたみかけるように言う。  立ち上がってきた突起の周辺をもみ込むようにしたり、突起をこするようにしたり、時々引っ張り上げるように摘み上げたり。  クニクニと固くなってきたしこりを押し潰してみたり。  絶妙な力加減とタイミングで理一を追い詰めていく。  先程までつつましやかだったそこは今ではまるで存在を主張するように少し赤みがかってぷっくりと膨らんでいる。  それを捏ねくり回すようにすると、声が抑えられない理一は、吐息とも喘ぎとも取れるような声を上げた。  一総がのしかかるように覆いかぶさって理一のそこに口をつけると、歯を立てる。  常であればたとえ傷がつくほど噛んだとしても数秒で自然治癒してしまう理一だが疲労のため治癒もままならない。  傷がつかず且つ快感を得られる絶妙な強さで一総は理一の乳首を甘噛みする。 「あっ、あっ、あっ……。」 「ジンジンするだろう。たまらないよな。 ほら、俺に無意識に腰をこすり付けてる。」  自分の腰がゆらゆらと切なげに揺らめいている事に気が付いて理一はさっと顔を赤らめる。  手早く一総が理一の下肢をあらわにすると、そこはすでに涙を流して悦んでいた。  ゆるゆるとこすり上げると、理一は体を震わせる。 「もう、もういいからっ!!」  切羽詰まった様子で理一は一総を止めた。  一総は理一のこういった取り繕えなくなった姿が好きだった。  一総はそのまま理一の足を抱えるように持ち上げると片手で器用に自分の学生服のベルトをはずしジッパーを下ろした。  室内には二人の荒い息遣いしか聞こえない。  ずぶずぶと音を立てて一総の自身が呑み込まれていく。 「あ゛っ、あ゛ーー。」 「すぐ気持ちよくしてやるから。」  さすがに全く慣らさず挿入しているため、理一がくぐもった声をだす。  髪の毛を撫でてやりながら一総は安心させるように言った。  すべてが収まると、一総は唇に、首筋に無数に唇を落とす。  それはまるで暗示の様に、媚薬の様にじわじわと快楽を理一に伝えていった。  理一の中がまるで一総を誘う様にうねる。  一総が腰を使い始めるとそこからはもう、快楽しか追えなかった。 ◆ 「ほら、水。」  投げてよこされたペットボトルを受け取るとうつ伏せになった理一は恨みがまし気に一総を見上げた。  腰がだるくて起き上がれないのだ。  そんな普通の状態が理一は面映ゆい。 「まあ、一晩寝れば翌日には持ちこさないから。」  笑って一総が言った。 「そもそも、俺ほとんどの傷が翌朝に持ち越しませんよ。」  理一は溜息をつきながら、ペットボトルの蓋を開けた。

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