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第3話

放課後柔道の練習場を借りることになった。 勝って良いところを見せたいという設定なのか、柔道部員は妙に好意的で部外者の俺が使うことを許可してくれた。それが快くなのかは知らないし、正直興味がなかった。 それよりもこの馬鹿みたいな罰ゲームをひっくり返したいという気持ちで頭がいっぱいだった。 「俺も見に行こうかな。」 友人が言う。完全に野次馬のノリでクラスメイト達がどうするというのを聞いてアホらしいことをやめさせるためにアホなことをする自分に溜息をつく。 「でもさあ、百目鬼って全国大会常連なんだろ。瞬殺どころか一之瀬怪我でもするんじゃねーの?」 そう言われて百目鬼が全校集会でよく表彰されていたことを思い出す。 実際強いのだろう。 試合をやっているところを見たことはないし練習を見たこともない。 けれど、体つきは明らかに鍛えられたものだった。 別にこんな罰ゲームで交流を深めなくていい位には、強いのだろう。 「まあ、何とかなるだろ。」 俺が答えると「どっから来るんだよその自信。中二病かよ。」と言われた。 「でも、寝技とか気持ち悪くねえの。」 いつもの発言を思い出したのか顔を少しゆがめて聞かれる。 ああ、そういうネタのために試合に持ち込んだのかもしれないと思った。 「あんなの罰ゲームかなんかだろ。」 俺は溜息をもう一度付いてそれから残った紙パックの牛乳を一気飲みした。 実際のところなんとかなるであろうという自信はあった。 それは百目鬼が俺のことを好きかもみたいな訳の分からないことに由来する話じゃなくて、もっと別の理由だった。 試合はそんなに酷いことにはならないだろう。 そういう確信があったから、話にのったのだ。

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