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第30話
家に着いたときには大分もう薄暗くなっている。
彼は今日部活の大会で疲れている。
ピザでも取って、ゆっくり話をすべきなのかもしれない。
だけど、何を? 百目鬼は何かを話してくれるだろうか。
無理だろうなと思う。
大して長い時間一緒にいる訳じゃないけれど、その位のことは分かる。
多分彼は何も話しちゃくれない。
普通に考えれば明日は部活の休養日だ。
自分が正しいことをしているなんてみじんも思ってない。
俺自身が短気で禄でもないってことには、最近ちゃんと気が付いている。
それを全部わかっててあえて愚かなことをしようとしている。
「俺の部屋、二階の西側だから。」
だから、リビングには案内してやらない。
二人で、俺の部屋に行ってそれからすぐに「シャワー浴びるからその辺座って待ってろ。」と言う。
エアコンはちゃんと入れた。
百目鬼は何か言おうと息を吸い込んだ様子は見て取れるのに、何も言わない。
ほら、何も言わないじゃないか。
何が百目鬼をそう頑なにさせるのかはよくわからない。
だけど、どうしようもないなと思う。
なにか彼を頑なにさせるものがあって、だからこそあんな馬鹿げた告白をしたのだろう。
◆
シャワーは思ったより時間がかかる。
シャワーと言うよりも前準備にだけれど。
台所で、冷蔵庫から麦茶をコップに2杯。それを自室に持っていって片方を百目鬼に渡す。
自分の分を一気飲みして、それから百目鬼がコップに口をつけたのを確認した。
さすがに脱水症状とかは笑えない。
几帳面な百目鬼の事だ。部活の大会中の水分補給はきちんとしているだろうけど、念のためだ。
「とっとと、それ飲んで始めようか。」
「は?……何を。」
百目鬼は訝し気にこちらを見る。
ゴクゴクと百目鬼が麦茶を飲むのを確認した後、これから自分がしようとしていることを口にした。
「何って、セックスするんだろ?」
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