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第72話
自分の流している涙が、恥ずかしい話をした所為なのか、快楽に滲んでいるのかもよく分からない。
どちらでも二人にとっては大した違いが無いのかもしれない。
「あっ、あっ、それ、やらッ……。」
くちくちと音を立てながら後ろを解される。
風呂の淵に上半身を預けて尻を百目鬼に突き出してる。
泣いている所為で瞼も腫れぼったい。顔も何となく熱を持っているきがするし、体全体も熱い。
温泉に入っているからだけじゃなくて、泣いたからだってことをちゃんと知っている。
それに、もう一つ。
体をくまなく洗われて、それからなすがままにもう一度風呂につかってそれからこうやって後ろを解されてる。
「泡が風呂に入っちゃうだろ!?」
俺がそう言っても百目鬼は聞かなかった。
「ここ源泉かけ流しだから。」
というよく分からない答えが返ってきて中を探られるように撫でられる。
前回百目鬼のものがちゃんと入らなかったことは覚えている。
中をひろげないと無理だ。
理屈は分かっているけど、百目鬼の太い指が中をを広げるように撫でると、たまらなくなる。
逃げ出したいような縋りたいような。
見て欲しいような見ないで欲しいような。
前回より確かに官能を拾ってしまっていて、はしたない声が出る。
腰がゆるゆると震えて、前だって反応している。
そこをどういう風に使うかもう知っている体は、百目鬼を求めてしまっている。
百目鬼の指は官能を追うと言うよりは単なるマッサージに近い動きだ。
それでもそのぬるま湯の様な快楽を追って、小さく嬌声をあげてしまう。
「柔らかくなってきてる。」
俺に覆いかぶさるように後ろから抱き着きながら百目鬼が言う。
声が熱い。甘い。
その声を聞いただけでぞくぞくとする。
この体制は抱き着く先が無くて、手を伸ばした先に百目鬼がいて欲しいと思ってしまう。
――ピピピッ
目の前の脱衣室から音がする。
「ああ、時間切れだ。」
百目鬼が言う。
「へ?」
「タイマーセットしておいたから。」
ここ一時間だけだっただろ?と言われてようやくおもいだす。
百目鬼が指を抜く瞬間、物足りなさそうな嬌声が出てしまう。
「流すから。」
百目鬼に手を引かれてそれに従う。
相変わらず涙は止まらなくてぐずぐずだ。
綺麗に流してもらっている。という実感があまりわかない。
そのまま、浴衣を着せられて、二人で部屋に戻る。
目頭が熱い。
妙に甘えたいような不思議な気分になる。
部屋に戻ると、百目鬼から冷蔵庫に入っていた、オレンジジュースを渡される。
「ありがとう。」
一口二口飲んでようやく、水分が少し足りていなかったことに気が付く。
「こういう無防備すぎるのも考え物だな。」
よく分からないことを百目鬼が言う。
体中が甘く疼いているような気がした。
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