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第80話
自分ばかりが気持ちよくなるのは負けているみたいで嫌だった。
百目鬼より自分ばかり興奮しているのも負けているみたいで嫌だ。
百目鬼ももっと俺を欲しがって、俺に感じて欲しい。
わがままな願いだとは思う。
実際息が上がってるのも俺の方だし、恥ずかしい声を上げているのも俺だ。
それに突っ込まれる方だということ自体には別に不満はない。
最初からそうしたいと百目鬼は言っていたし、そういう前提で俺も最初から考えていたのかもしれない。
縋りついていた手を放して、百目鬼の二の腕をつかむと、少し押す。
簡単に百目鬼は離れる。
「もうそろそろまどろっこしいのはいいだろ。」
四つん這いになって、百目鬼に尻を見せる。
太ももにローションがたれる。
自分がどんな姿をしていれば煽情的なのかも知らない。
そもそも女がそういう風にしているところしか想像できないし、同じことをして百目鬼が喜ぶのかもよく分からなかった。
卑猥なことは百目鬼に言われたことがあるが、百目鬼の頭の中の俺がどんなふうに百目鬼を誘っているかをよくは知らない。
何度も想像した、と言われていた百目鬼の頭の中の俺は、どんな格好で彼を誘っていたのだろう。
彼の頭の中と同じくらい性的になれればいいと思う。
百目鬼が我慢できない位に。
「後ろからの方が、入れやすいっていうから。」
奥までちゃんと入れてもらいたい。
百目鬼も俺で気持ちよくなって欲しい。
今日三回目だというのにギチギチに立ち上がっている百目鬼の起立を振り返ってみる。
「せっかく、ゴム買ってきたんだからちゃんと使うことしようか。」
俺が言うと、百目鬼は舌打ちをする。
「だから、お前は自分の言動がどういう結果を招くかよく考えろ!」
吠えるように言われる。
「信夫さんにだけは言われたくないんだけどな。」
それとも「もう我慢できない。」って言ってあげた方がいいか?
最初の告白の言葉を思い出してそう言う。
「お前、俺の頭ん中でいつもどんな目にあわされてるか知らないだろう。」
言われてないことは、知るはずが無い。
「やってみればいいだろう?」
やりたいことをやればいい。
何度も言ってるじゃないか。
そんなに、俺にしてみたいことがあるならぐだぐだ言ってないで実際にしてみればいい。
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