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第10話

 ◇  縛られたままの手や、開かれた脚が痺れている。  浅く荒い呼吸を繰り返し、リュドラーはうつむいていた。あれからずっと従僕に胸の尖りを刺激され続けている。従僕は一定の間隔で入れ替わり、そのたびにリュドラーは蜜酒をわずかに与えられた。 「は……、はぁ、あ……、ふ」  何度目の交代なのか。  リュドラーはもうわからなくなっていた。  窓から差し込む光はやわらかな色から濃いオレンジに変化している。その間、リュドラーはずっと胸の先をいじられ続けていた。脚の間では隆々と男の証がそびえ立ち、脈打っている。先端からトロトロとこぼれる蜜は下生えを濡らして蜜嚢を伝い、イスの座面にシミを作っていた。 「……っ、は……、ぅ」  いつまでも与えられぬ絶頂にジワジワと侵食されて、リュドラーは甘美なけだるさに包まれていた。いじられ続けた胸の先は過敏になり、ほんのわずか、指紋で触れられるほどのかすかな刺激でさえ陰茎をうずかせた。そのくせ指が離れると、もどかしさを訴える。  自分の体が自分のものではないような錯覚に、リュドラーはゆっくりと騎士のプライドを剥がされていった。 「……、う、ふ………」 「さあ、これを」  交代の時間かと、リュドラーは顔を上げた。目の前に差し出されたのは、陰茎を模した象牙の器だった。内側が空洞となっており、そこに従僕が蜜酒を注ぐと先端からこぼれる構造になっている。  リュドラーは口を開き、舌を伸ばした。その上に蜜酒がしたたる。 「んっ、ふ……、ぅ」  先端を舐めるリュドラーの口内に、象牙の器の張り出し部分までが押し込まれる。クビレに唇をかけて、リュドラーは蜜酒に喉を鳴らした。従僕がわずかに器を動かし、リュドラーの上あごや頬裏をこする。リュドラーの舌は自然と動き、器を舐めた。 「んっ、ん……、ふ……、んぅ、う」  象牙の器をしゃぶるリュドラーの視点はぼやけ、意識が混濁しているのが見て取れた。 「リュドラーは大丈夫なのか。あれは、なにを飲ませているんだ」  覗き穴の向こうで、休憩だと言って連れてこられたトゥヒムは声を震わせた。 「ただの蜜酒だ。薬漬けなどと無粋な真似をするつもりはないよ」  サヒサが軽く答える。 「だが……」  トゥヒムはリュドラーに目を戻した。トロリとだらしない顔で陰茎型の器をしゃぶる彼は、トゥヒムの知るリュドラーとはかけ離れていた。 「あれから、ずっと淡い快楽を味わわせ続けていたのだよ。――そのせいで、ああなっている」 「あれから、ずっと――?」 「そうだ」  トゥヒムはリュドラーを見つめた。破かれたシャツから、ピンと尖った色づきが見えている。それは真っ赤に熟れて、存在を主張していた。肌がうっすらと汗ばんでいるのが、窓から差し込む光の反射でわかる。シャツの裾を押し上げている陰茎は、たっぷりと濡れていた。 「彼はずっと、快楽を吐き出せないままだ」  サヒサがトゥヒムの肩に手を乗せた。トゥヒムはじっとリュドラーを見つめている。 「あの器は、なんだ。どうしてあんな形をしている」 「訓練だよ」 「訓練?」 「男をしゃぶる、訓練だ」  静かに目を見開くトゥヒムに、サヒサはうなずいた。 「彼の口で、されてみたいとは思わないかね。――あんなふうに」  トゥヒムの唇から熱い息がこぼれ出た。サヒサはトゥヒムの形のいい耳に唇を寄せて、低くささやく。 「彼が君の足元でひざまずき、口を開いてしゃぶるんだ。……想像をしてみたまえ」  ゴクリと喉を鳴らしたトゥヒムは、あわてて首を振った。 「そのようなこと、私は――」 「素直になるといい」 「あっ」  股間を握られ、トゥヒムはちいさな悲鳴を上げた。 「こんなに硬くして……」 「こ、これは」 「うろたえなくともいい。――自然な反応だ。リュドラーはとても魅力的だからな」  クスクスと喉を震わせるサヒサの瞳に、深く暗い光が宿っている。トゥヒムは唇を引き結び、すこし迷ってから問うた。 「サヒサも興奮をしているのか」  サヒサは笑みを深くした。 「従僕の股間を見たまえ」  言われるままに、トゥヒムはリュドラーに蜜酒を与えている従僕の股間に目を向けた。ズボンが押し上げられているのが、ハッキリとわかった。 「誰もが興奮をしているのだよ。……リュドラーの肌を蹂躙し、屈服させ、己の欲を突き立てて乱したい、とね」 「そんな……、私は、そんな……」 「おや。まだ経験をしていない、か。――まあ、あの王妃ならばそうだろうな。正式な妻を得るまではと、メイドに処理だけされていたのだろう。繋がり、征服する喜びを知らないとは、あわれなことだ。……だが、面白いな」 「なにが面白いんだ」  サヒサは慈悲深い顔でトゥヒムの肩を引き寄せた。 「リュドラーは女を抱いたことがあるだろう。だが、男に抱かれた経験はない。トゥヒムはどちらも抱いてはいない。――互いのはじめての相手として、申し分のない組み合わせだと思ったまでだ」 「……私に、リュドラーを抱けと?」 「ほかの者に、その役をゆずるかね?」  トゥヒムはしばらくサヒサを見つめ、リュドラーに視線を戻した。 「なぜ、器をあんなふうに動かして飲ませるんだ」  話題をそらされても、サヒサは気にしなかった。 「ああして、口の中を愛撫している。しゃぶることは気持ちのいいものだと、彼に教えているんだよ。力づくで快楽を覚え込ませ、プライドを粉々に砕いて屈服させる方法もあるが、うつくしくない。――すこしずつ教育をしたほうが、楽しみも長く続くというものだ。なにより、トゥヒム。君がきちんと商人の学を修めるまでの時間を、彼は稼がなくてはならないからね。彼を教育する楽しみは、トゥヒムの養育費だ。それを彼はわきまえて、ああしておとなしくしているんだよ」 「私の、せいか」 「彼が望んだことだ。このほかに、君が処刑されずに済む方法はない。普通は君たちをかくまおうなどとは思わないからな。――彼は覚悟を決めた。君もそれを受けて、覚悟を決めたのではないのかね」  トゥヒムは横目でリュドラーを見ながら、下唇を噛んだ。 「そんな君たちの関係をうつくしいと思うからこそ、互いのはじめての相手をと提案しているのだ。――それとも、拒否をしてリュドラーを従僕のだれか……、あるいは、好色な貴族か商人に、まずは抱かせることにするかね」  トゥヒムはきつい目でサヒサを見ると、覗き穴に視線を戻した。リュドラーが茫洋とした顔で象牙の器をしゃぶっている。

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