69 / 239

Going out with you ⑭

 デザートも食べ、ゆっくりと食後のコーヒーを飲んでレストランを出た。レストラン周辺の店を目的もなくただ見て回った。  近くに大きめの公園があったので、少し散歩をして時間を潰そうと、公園に足を踏み入れる。その頃にはあと1時間ほどで空港に向かわなくてはいけない時間になっていた。 「あれ? 祭り?」  公園の開けた広場で何かを催しており、色々な屋台が出店していた。どうやら昔ながらの屋台や食べ物を楽しむための小さなイベントらしかった。平日の午後なのに、カップルや子供連れ、お年寄りなどでイベントは盛況していた。晃良たちも、屋台を見て回る。 「おっ、射的」  屋台の1つが、温泉街などでよく見かける射的の店だった。丁度学校帰りの時間だったためか、小学生の男の子たちがその店に群がるように集まっていた。小遣いを出して射的に挑戦しているらしい。  弾は10発。標的を10個倒せれば、1等。あとは倒れる数で賞品が決まるようだった。賞品は今どき珍しくシンプルなものばかりだった。大抵1等となるとゲーム機などが主流だが、この店の1等となっていたのは、とてつもなく巨大なぬいぐるみだった。その種類の違うぬいぐるみたちを眺めていると、ふと気づいた。 「なあ。あれ、お前に似てない?」  ぬいぐるみの1つが白ギツネだった。シュッとした輪郭に、細い目。すましていてあまり可愛らしいとは言えないその顔に、晃良はなんとなく愛着を感じた。 「えー、似てないって」 「そうか? あの、ちょっとふてぶてしそうな顔とかそっくりだろ」 「アキちゃん……何気にディスるのやめて」  そんな会話を店の前でしていると、小学生の集団の一番後ろで、その白ギツネのぬいぐるみを物欲しそうに見つめている体の小さな男の子に気づいた。一瞬、女の子と思うくらい華奢(きゃしゃ)な可愛らしい子だった。その男の子の隣に、友達であろう背の高い凜とした顔つきの気の強そうな男の子も立っていた。 「あれ、欲しいの?」  背の高い方の子が小さな男の子に話しかけた。 「うん……。でもお金ないから」  そう小さな男の子が答えると、背の高い男の子はポケットからお金を取り出して数え始めた。 「だめだ。ここで使うと、たこ焼きが買えない」 「うん、分かってる。たこ焼き2人で食べるの楽しみにしてたもんね」 「買いに行こう」 「うん」  そう会話をしながら、2人は射的の店を離れていった。

ともだちにシェアしよう!