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Going out with you ⑱
空港の中まで見送って~、と黒埼が駄々をこねたので、仕方がなく駐車場へ車を停めて、一緒に空港内に向かった。
黒埼がチェックインを済ませている間、ソファで座って待っていると。
「あれ? 晃良くん?」
前方から自分の名前を呼ばれた。ふと見上げると、見覚えのある顔が立っていた。数秒考えてその顔が過去に付き合った男の1人だったと思い出す。確か、2回ぐらい関係を持ったところで、急に別れを切り出された相手だったはずだ。2年くらい前だったか。
「おお。久しぶりだな。」
「こんなところで、どうしたの?」
「知り合いの見送りだけど……出張?」
「ああ、うん。さっき帰ってきたところ」
スーツ姿の元彼を見て、確か商社マンで海外出張が多かった奴だったな、と薄らと記憶が戻った。
「ところで晃良くん……彼とはまだ続いてるの?」
「は? 彼?」
「うん。別れたとき、いたんだよね? もう1人」
「……いや、いないけど……どういうこと?」
「え? だって……晃良くんの彼氏って人が現れて、半分脅されてさぁ、何も言わずに別れろって言われて。だから俺、嫌だったのに渋々別れたんだけど……」
「…………」
「え、じゃあ、今、晃良くんってフリー? もしそうならさぁ、今度……」
元彼は嬉しそうに話を続けていたが、ふと何かに気づくと顔を強ばらせ、急に言葉を止めた。その視線の先は晃良の後ろに位置している。
晃良はそこで全てを悟った。
「……悪いけど。『今度』はないみたいだな」
「……うん、そうみたいだね……。じゃあ……」
元彼はそそくさと逃げるように去っていった。
「おい、黒埼。どういうことだ」
「え? 何が?」
「いつからお前は俺の恋路を邪魔してたんだ」
「えー、邪魔してないって。俺のアキちゃんを自分のもんだと思ってるみたいだったから、違いますよって教えてあげただけ」
アキちゃん、可愛いいからすぐ男が寄ってくるし、さばくの大変だったけど。と何の罪悪感もなさげに黒埼が言って、隣に座った。
「だから、いつからだよ」
「え? えーっと、いつからだったかなぁ。俺が自由に日本に来れるようになってからだったからぁ、20代始めぐらいからかな?」
「そんな前から……」
ということは。今までなぜか関係を持つとすぐに振られていたことの全ての原因は、晃良自身ではなく、この目の前のストーカー男のせいだったということか。
以前、涼が大阪時代から黒埼を見かけていた、と言っていたことも納得がいく。
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