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Ready to fight ⑱

「だけど、どうやって俺のスケジュール把握してんの? ここで話してない予定とかも知ってるときあるじゃん、お前」 「えー、それも言わなきゃだめ? ここに付けてるやつだけの話じゃないの?」 「教えてくれてスッキリしたらもう何も言わないから」 「……本当に?」 「うん」 「アキちゃんのPCをちょっと覗かせてもらってんの。アキちゃん、スケジュールアプリ入れてるよね? 携帯と同期できるやつ」 「ああ……そうだな。よく分かんないけど、尚人に入れてもらったな。それに予定は全部入れろって言われて。仕事のスケジュールとか尚人たちと共有できるからって」 「それを見させてもらってんの。だから、アキちゃんの休みも把握してるんだけど」 「見るって……。ハッキングしてんの?」 「まあ……そうなるかな」 「頭いい奴嫌いだわ……」 「俺はアキちゃん好きだけどぉ?」  わけの分からない返しをされて膨れた顔で黒埼を睨んだ。途端、黒埼が嬉しそうに言った。 「アキちゃんのその拗ねた顔、可愛いな。写真撮っていい?」 「だめ」 「えー、いいじゃん」 「だめ」 「アキちゃん」 「なんだよ」 「チューしよ」 「……は?」 「今日来るの遅くなったからデートももうゆっくりできないし。お家デートにしよ。で、いつもの約束のチュー」 「はあ……」 「ほら、しよ」  対角に座っている黒埼が体を起こして顔を近づけてきた。いつもの癖で、アホかっ、と言いそうになる自分を抑えた。自分はもう、うじうじするのも拗ねるのも止めたのだ。  軽く顔を傾けて、期待した顔でこちらを見ている黒埼を見つめる。自分の気持ちに素直に。  よしっ、と気合いを入れて顔をゆっくりと近づける。黒埼の唇へと自分の唇を優しく重ねた。気持ちを込めて軽く唇を押しつける。ゆっくりと離した。至近距離で見つめ合う。ふっと黒埼が笑った。 「なんか……エロいキス」 「んなことないだろ。ちょっとくっつけただけじゃん」 「それが逆にエロい」 「わけ分からん」 「で、アキちゃん。アキちゃんは?」 「は? 何が?」 「俺のこと好き?」 「……どうしたんだよ? 急に」 「急じゃないって。さっき俺、好きって言ったし。だから、アキちゃんも聞かせて」 「えー……」 「えー、じゃなくて。アキちゃん言ってくれたことないじゃん。照れて言えないのは分かるけど1回くらい聞きたい」  ほんと、我儘ってか、勝手だよな。  けれど。ここらで1つ、しておいてもいいかもしれない。  自分なりの、宣戦布告。  もう迷うこともないし。黒埼が逆に音を上げても、自分は黒埼を想い続けるだろう。  晃良は再び、真正面にある黒埼の唇に軽く口づけた。そのまま黒埼の耳元へ顔を近づけて、はっきりと言葉にする。 「好き」  だから。覚悟しろよ。  そう、心の中で呟きながら。  黒埼が驚喜の顔で勢い良くコタツから飛び出し、晃良を押し倒したタイミングで、ただいまぁ~、と後ろから有栖の声がした。

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