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第28話 僕たちは餌らしい
僕たちの社交界デビューは王様へのご挨拶と同世代の貴族仲間と知り合う事が1番の目的なんだって。
だから両親と挨拶回りはちょっとで良いし、知らない大人達も基本話しかけてこない。
話しかけても良いのはまぁ貴族学院生ぐらいまでってお兄様が教えてくれた。
僕のお兄様は今年から高等貴族学院生になっちゃったから、周囲で見守ってる感じ。
ちょっと不安を感じるとお兄様を探しちゃうけど、直ぐこちらに気づいて手を振ってくれるからその度に僕はホっとしてふにゃってなっちゃう。
でもこうして社交界デビューした僕らに、学院の生徒達が話しかけて下さって、更にその周囲をお兄様達や、大人が囲んでいるのを見てるとちょっと面白くなってしまった。
だって僕たちって獣に囲まれた獲物みたいじゃない?
実際こちらを見つめる眼差しが笑顔なのに怖い感じの人も多いし。
考えるとますます面白く感じて、クスクスひとり笑ってたら、ユア様達お仲間が何を笑っているのかって聞いてきた。
僕の笑いのツボの話をしたら、みんなして真顔になって頷きながら怖い事言うんだ。
『あながち間違ってないですよ。リオン様は特に。』
僕は思わずポカンとしちゃったけれど、え?僕たちって餌なの?何で?
えっと、社交界デビューって色々難しすぎる…。
「おい、リュード。お前わざと俺たちに隠してたんだろ。」
ヘンリックは広間の中心に居るリオンの方を見つめながら俺の肘を突つく。
「ほんとソレ。聞いてないんだけど。お前の溺愛する弟くんがあんなに天使みたいだなんて。
あー、話してみたいっ。今日、俺たちは話しかけちゃだめな日なんて、一体誰が決めたのよ。」
ジャックはワイングラスのフチを指で拭いながら口を尖らしている。
ていうかお前ギラついた目が怖いんだけど。
「お前と話したらリオンが穢れるだろ。
リオンは見かけだけじゃなくて、中身も天使みたいなんだから、お前の居る爛れた地上には降りてこないんだよ。」
まぁ最近のリオンは、俺を殺しそうな小悪魔になりつつあるけどね。
「でも実際今日デビューした中じゃ、沢山の御令嬢を押さえて断トツの注目度じゃないか?
いつもなら注目されるレベルの御令嬢達も、リオン様の前じゃ霞むっていうか。
見てみろよ、学院の奴らがリオン様を囲ってるぜ。あ、あいつ新しい生徒会長じゃない?
ヤバい、あいつら目つきギラついてるんだけど。」
今はリオンを取り囲む後輩のやつらを苦々しく思って睨みつけることしか出来ない。
取り囲まれて困り顔のリオンがキョロキョロと視線を彷徨わせたと思ったら、俺を見つけてパァっと嬉しそうな顔をした。
と思ったら、へにゃってとんでもなく可愛い顔で笑うもんだから、俺は瞬時に身体が熱くなって抱きしめたくなって大変だった。
隣が急に静かになったから怪訝に思って振り返ったらヘンリックとジャックが頬を赤らめてた。
「「やべぇ…。何だよあれ。反則だろ。」」
お前達ハモるなよ。コイツら無視だ、無視。
あぁ、リオンのこれからがほんと心配過ぎて辛い…。
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