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第3話「就寝前のもちもち」

「ってことがあった」 「鷹夜くんて俺のおっぱいそう言う目で見てたんだ」 「揉んで良い?」 「だーめ」 鷹夜の申し出をピシャリと断ると、小野田芽依(おのだめい)、芸名・竹内メイ(たけうちめい)はため息をつきながら、ソファに座る鷹夜の隣に腰を下ろした。 六本木の駅に近い40階建てのマンションの36階の一室、そこが俳優兼アイドルとして最近では「僕たちはまだ人間のまま」と言うドラマの主演を果たし、映画化も決まったと言う彼の住まいだ。 「長谷川さんかあ。あんまり聞いたことなかったね」 「んー、2つ上だから、羽瀬さんと同じ代の先輩。歳は35だけど」 「羽瀬さんはパチンコの人か。ふーん。賑やかになったね。男オンリーだけど」 「ね。相変わらず男臭い」 「鷹夜くんは臭くないよ?」 「は?」 久しぶりに明日からの土日休みが被った。 ドラマがひと段落した事もあり、芽依も月に数回は休日が貰えるようになったのだ。 テレビを見ながらソファに座り、足を上げて膝を立てながらコンビニのカップのバニラアイスを食べていた鷹夜は、芽依の発言にキョトンとしながらそちらを向いた。 「鷹夜くんは良い匂い」 「やめろ」 「何でー!せっかくの休みの前の夜なのにー!」 芽依は嫌がる鷹夜を無視して腕を広げ、そのまま彼を腕の中にスッポリと入れてしまう。 ギュムッと力を込めると「うッ」と苦しげな声が聞こえた。 「んん、良い匂い」 帰ってきて夕食を2人で食べ終え、まだ風呂には入っていない。 鷹夜からすればやめて欲しいのだが、芽依は構わず彼の首筋に顔を埋めて匂いを吸い始めてしまった。 芽依はスキンシップが激しい。 一緒にいられるとなるととにかく四六時中鷹夜とゼロ距離でいないと気が済まない。 「やめろってば。臭いに決まってんだろ三十路のおっさんだぞ」 「んん?好きな匂いだけどなあ。それに、こう言うケアめちゃくちゃしてるよね、鷹夜くん」 「誰相手にも臭いって思われたくないからね」 確かに鷹夜は会社でもよくトイレに篭って汗拭きシート等でケアをしている。 香水と言う色気のあるものとは縁がない代わりに、匂いや食事の仕方、異性との距離感と言う微妙なマナーは自分に厳しく正しているのだ。 芽依が顔を埋めた首筋からふんふんと音がして、明らかに荒い鼻息が鎖骨にかかってきてくすぐったい。 「やめなさいよ、食べてんの、アイス」 何とか芽依の腕から逃れようと、鷹夜は嫌な顔をしながら身体を捩った。 「んん、アイスひと口ちょーだい」 「ダメ」 「ひと口だから」 「そう言ってこないだ半分くらい食べてたよ」 「え。そうだっけ?いつ?」 「もう覚えてないけどさ」 口を尖らせながらも、鷹夜は芽依に求められるがままにパクパクと開けられた口に仕方なくアイスの乗った銀色のスプーンを近づけた。 「ありがと、ん」 「ひと口だけな」 「んー」 8月から付き合い始め、1か月と1週間程が経過した2人は随分と落ち着いていた。 喧嘩や何やはあまりなく、どちらかと言えばお互いに癒されるような事が多い。 鷹夜は驚く程に芽依の職業に対して偏見がなく、主演したドラマ「僕たちはまだ人間のまま」のラストで相手役の松本遥香(まつもとはるか)と言う鷹夜の事も知っている女優とのキスシーンすら、嫉妬もまったく抱かずにこれは芽依の仕事だと酷く納得して動じずにゆっくりと観れる程だ。 人の事だろうが自分の事だろうが、仕事とプライベートは完全に切り離して考えられる性格らしい。 そう言った点を少しドライだなと思いつつも、だからと言って決して自身を軽んじられている訳ではないと理解できている芽依もまた、鷹夜の仕事が忙しく会えない日が続いたとしても出来る限りワガママを言わないように努める事ができていた。 「ふぁ〜!ふぅ、めっちゃ眠い」 「ん、風呂入れてあるよ」 芽依の大きなあくびが終わる。 「うん。一緒に入ろ?」 「一緒に入ったら長くなるからイヤだよ」 「え、何でよ。眠くても鷹夜くんとエッチしたい」 「寝なよ。それこそ明日できるだろ」 「やだ。今日ヤる」 「んっ」 結局、鷹夜のカップアイスは半分を芽依に食べられてしまった。 雛鳥のように口をパクパク開けられるとどうにもこの図体ばかりが大きい歳下の恋人が可愛く見えてしまい、鷹夜が根負けしたのだ。 芽依が開いた脚の間に向かい合わせに座らされながら、鷹夜は正論を言っていた口をサッとキスで塞がれる。 すぐに舌が入ってきて口内を撫で回された。 「んふ、ンッ」 「ん、鷹夜くん。ねえ、エッチしようよ。舐めたいの」 「だから、疲れてる、んっ、だ、ろ?」 ハアッ、と口を開くと差し出した舌をぢゅうっと音を立てて吸われる。 これが気持ち良くて鷹夜の腰が跳ねると、芽依はそれを見逃さず、ニヤ、と笑って大きな手をすりすりと鷹夜の腰からその下に滑らせて行った。 「アッ、んっ」 「さっきちょっと眠かっただけだから。舐めたい」 「やだって、寝よう、って、、、尻揉むな」 「鷹夜くんさあ、お尻もちもちになったよね」 そう言いながら、芽依は鷹夜のズボンの中に突っ込んだ両手で彼の尻たぶをもちもちと揉んでいる。 指が沈む弾力のある肌が堪らない。 そして何よりしっとりしていながらもツルツルの尻肌だ。 「んっ、お前が揉むからだろ。夜毎に」 鷹夜は明らかに呆れ、楽しそうに尻を揉む芽依の手の温かさを感じていた。 尻が冷えていたらしい。 「高いボディソープも効果あったけど、お尻洗う用の石鹸使い始めたからかめっちゃもちもちになったのは自覚あるけど」 「最高だよ。生尻で尻枕してくんない?」 「絶対嫌だ」

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