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第1話 プロローグ
大学のキャンパスで、ふらっと現れた、ように見えた。
俺は、いつもの時間にいつものルートを通って、離れにある大講義室に行く。
季節が変わっても、天気が違っても、その曜日のその時間は、ほぼ同じだった。
だから風景は多少の季節感はあったが、通り過ぎる顔ぶれは変わることはなかった。
それが、その人は、ちょっと違和感を感じた、ような気がした。
俺が大講義室に向かう広い道を、その人は横の細い道からゆっくり出てきた。
ふっと、その人が顔をあげて、俺の存在に気がついたように、
すると立ち止まり、じっと俺の顔を見たんだ。
俺は、こんな人がここの大学にいたっけ…?って考えていたら、
その奥から、たしか先輩だったか、もう2人が後ろから歩いてくるのが見えた。
その足音を聞いたのか、その人はちょっと後ろをチラ見して、俺が来た道を進んでいった。
後ろから来た先輩たちは、なんだかニヤニヤした顔をしていたのがなぜか気になっていた。
「こういうのもいいよな。また明日も呼ぶか。」
コソコソ声というのは案外聞こえるもんで、そのセリフはハッキリと俺の耳に残った。
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