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第34話新たな恋敵⑥
ーー昨日、アリンの様子おかしかったな。
フェアンは仕事帰りに昨夜のアリンの様子を思い返していた。
休みのはずなのにロバートさんの用事に付き合うって何かあったんだろうか。俺はアリンに対して独占したい気持ちが凄く強い。それは日に日に増す愛情と共に強くなっている気がする。
ーーもしかしたら自分の独占欲に嫌気がさして隠し事をしているのか…?
これからも2人で過ごすには話し合いが必要だと感じいち早くロバートさんの店へ迎えに行くことにした。
「えっ来てない?」
「来てないも何も今日はアリン休みだよ?フェアン聞いてないのか?……それに今日は確か友達と遊びに行くって言ってたしなぁ。」
「友達…レイですか?」
「違う違う!えー…っと黒髪の…名前はマイトだったかな?その子と!」
!!!
ロバートさんから話を聞くと急いで家に帰った。しかし、家には誰も帰ってきた形跡はない。これはやばいと直感でアリンが危険だと感じる。
思いつく場所は全て当たった。レイの家にも行ったがレイは出てくれなくて、代わりにレイのお兄さんが出てきてくれた。話をすると仲間と一緒に探してくれるというので有り難くお願いした。
「どこに行ったんだ…アリン!!」
夜の闇に向かって叫んでも誰も答えてくれない。……だけどその時ふと思い出した。
「マイトと出会った場所…俺とアリンの思い出の場所…」
あそこしかない!!とフェアンは走り出した。
ーーー
「う…ん、ここどこ…?」
「起きた?アリン。覚えてない?ここ…チューリップ畑だよ。と言っても、もうチューリップはの時期は終わってただの土だけどね。」
「マイト…って、なにこれ!?マイト外して!!」
寒空の下、両手両足をロープで縛られているのに気付いたアリンは叫んだ。それに。はぁ…と深い溜息を漏らすとマイトは残念そうに告げた。
「……ごめんね、アリン。それは出来ないよ。だって君は今から俺に汚されるんだから。」
「…っ!なんで…そんな…」
「言っても無駄だろ?恨むならあのフェアンって人間を恨みなよ。」
そう言うや否や持っていたナイフで僕の服を切り裂いた。
太腿の皮膚がナイフに当たり血が滲み出る。やめて欲しくて泣き叫んでもこの広いチューリップ畑には誰もいなくて、ただアリンの泣き声が夜空に広がるだけだった。
ーー僕はここで殺されるんだろうか
涙で景色がぼやける中、最後にフェアンに会いたかったなぁと呟くと自分に馬乗りになったはずのマイトが自分の視界から消えた。
「えっ…?」
縛られている腕をなんとか動かして体を起こすとそこにはマイトに馬乗りになり殴り続けるフェアンの姿があった。
「フェアン…!や、やめて!」
僕の声は届いてなくて、いつも穏やかで優しいフェアンの目は血走り首筋や拳には血管が浮いている。
「フェアン!フェアンッ!!そのままだと死んじゃうよっ!」
アリンの声にやっと気がついたのかそこでやっとフェアンの手が止まった。
「アリン……?大丈夫なのかっ!!」
「フェアンッ…!」
マイトが落としたナイフでフェアンにロープを切ってもらいやっと2人は抱き合うことができた。
「痛って……やっぱ人間って俺らなんかより力強いんだな。一瞬気、失ってたわ…」
マイトの顔は腫れ上がり口の端から血を流していた。それでも体は無事なのかフラフラと起き上がるとフェアンは背中で僕を隠した。
「なんでこんなことをした。お前はアリンが好きなんじゃないのか?」
「好き?んなわけないじゃん!俺はアリンを利用しただけ!」
「お前ら人間が姉さんを利用したようにな!」
マイトのお姉さんは人間を怖がらない猫獣人だったそうだ。人間にも良い人がいるのよと言ってよくダリアのマーケットにも行っていたそうだ。ある時そのマーケットで優しい人間と出会いそして恋に落ち次第に体を許すようになった。だが、優しいと思っていた人間は実はただ猫獣人を体目的で遊んでいただけで、何も好きではなかったらしい。それを知ったマイトのお姉さんは恋人に不満を言うと暴言や暴力を振るわれるようになってしまった。そして病んだお姉さんは心を閉ざし家から出られなくなってしまった。それは今でもらしい。
その話の後すぐにレイのお兄さん達が駆けつけてきてくれて、叫ぶマイトを引きずるようにしてチューリップ畑から出て行ってしまった。
「フェアン…ごめんね…」
「アリンが無事ならもういい。さぁ帰ろう。」
ウンウンと頷き2人ともボロボロのまま家に帰った。
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