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第50話デリアのマーケットへ

「でも!みんなの為にやりたいんだ!」 結局アリンの熱い思いにレイの方が折れることになった。 「わかったよ!ったくしょうがねぇな……。」 「っ!ありがとうレイ!!」 アリンはその場で飛び上がり今日1番の笑顔を見せた。 それから実行に移すのは早かった。まずロバートさんに訳を説明し毎週土曜日は仕事を休ませてもらうことにした。はじめ、ロバートさんもナタリアさんもデリアのマーケットに行くのを心配して反対したが何度も説得しレイも必ず一緒という条件でやっと許可を得られた。 そして、フェアンに会えるかもしれないという希望でアリンはみるみる元気を取り戻していった。体力を戻す為にご飯もしっかり食べられるようになり、ベッドで寝られるようにもなった。 「いよいよ明日か、アリン。」 「はい!」 金曜日、帰り支度をしている最中にロバートさんがアリンに話しかけた。 「それにしても顔色も良くなって……元気になって安心したよ。」 「あ、その……ご心配おかけしました……」 確かにアリンのやつれ具合は相当で、自分の姿を鏡を見て驚いたこともある。 ロバートさんは申し訳なさそうに縮こまるアリンの肩をポンと叩いた。 「お前が元気になったんならそれでいいんだよ!……それよりさ、明日行っていきなり会えるとかじゃないと思うんだ。その、もしかしたら……」 そこまで言うとアリンはロバートさんの口を手で塞いだ。 「わかってます。会える可能性は低いし、もしかしたら一生会えないってことも。……それでもいいんです。」 「一目だけでも見れたら幸せです。悲しいお別れになってしまったから出来るなら最後に愛してると伝えたい……それが、僕の生きる希望なんです。」 ふふっと笑うとアリンは塞いでいた手を離した。 お疲れ様です、と鞄を持ち出ていく足取りはとても軽やかだった。 ーーー 「おいアリン、へこたれてんじゃねーぞ!」 土曜日。アリンの家の納屋から引っ張り出してきた荷車をアリンがひき後ろからレイが押している。やっと体力が戻ってきたとは言え、もともと小柄なせいもあってかまだ道中の半分しか進んでいないのにもう息が上がっている。 「しょうが、ない…じゃん!今日が…はじめてなんだし!」 はぁはぁと苦しそうに息をしていると、突然重みがのしかかった。思わず足を止めるとレイが荷車の持ち手を持った。 「俺が変わるから。お前は横にいろ。」 それだけ言うとレイはグングンと前へ進んでいった。 初めてのデリアのマーケットは2人にとって驚きそのものだった。肩と肩がぶつかり合うほどの人混みに、ノスティアでは見られないような食べ物や雑貨。そして猫獣人以外の獣人も2人は初めてのことだった。 「なんか、凄いねっ…!色んな人がいるし、見たことのないものたくさん売ってる…!」 「そ、そうだな!買うもの忘れないように早いとこ行こうぜ。」 緊張と興奮で頼まれていた物を買うのにだいぶ時間が掛かっていたがなんとか、買い物を済ますと2人はマーケットから一本それた道沿いの端っこに座り込んだ。 「ちょっと疲れちゃったね。でも、頼まれてた物全部買えたし良かった。」 「あぁ。そうだな。」 蝉の鳴き声が響きわたるなか2人の中に沈黙が流れた。

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