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第52話ルーカス

王宮に戻って3ヶ月。 フェアンもといリヒテルと、タイラー、エリックは週に一度の密会を行っていた。と言ってもこの3ヶ月リヒテルは書類に追われ、タイラー、エリックは異動となったばかりで調査は進まず3人ともモヤモヤした気持ちのままだった。 それが、先日エリックがルーカスの護衛に就いたことで事態は急展開した。 初めルーカスはエリックがリヒテルの護衛だった事から自分の護衛に連れて行くことを渋っていた。だがこの数ヶ月でエリックはルーカスや他の護衛の仲間と打ち解ける事ができ、それがきっかけでエリックはルーカスの公務ではない護衛を頼まれることになったのだ。 「いいか、エリック。これから行くところは誰にも言うなよ。他の仲間にも、もちろん陛下やリヒテル様にもだ。」 護衛仲間の1人が言った。 3人という極少人数で行われるルーカスの護衛は夜遅くのことだった。ルーカスの服装も平民のような服と黒のマント変装していて、もちろんエリックもいつもの制服ではなく平民の服装に変装させられていた。 門を出て王宮の裏道を通ると護衛の1人が馬を用意していて、遠出になる事は一目瞭然だった。 「お前はルーカス様の後ろにつけよ。」 そう言われ後ろから馬でついていくと、寂れた路地裏にたどり着いた。 「あの…ここは?」 要件を言われず着いてきたエリックは不審そうに尋ねた。 「いいから黙ってついて来い。」 護衛仲間に言われて着いていくと視線の先に黒いコートに黒い靴、黒のカウボーイハットを目深にかぶった、いかにも怪しい男が立っていた。 「貴様!何者だ!」 後ろにいたエリックがルーカスを守ろうと懐にさした短剣を手に取り駆け出そうとした瞬間後ろから思いっきり引っ張られ尻餅をついた。エリックは驚き引っ張られた方を見るとルーカスが眉間に皺を寄せエリックの襟を掴んでいてのだ。 「エリック、五月蝿いぞ。お前は他に誰か見ていないか見張るよう連れてきたのだ。わかったなら後ろに控えろ。」 「ルーカス様……。」 ルーカス直々に言われてしまえばそうするしかなく黙ってことの成り行きを見守っていた。 「これはこれは、ルーカス様。こんな所までようこそおいでくださいました。」 ニヤニヤと笑う男をルーカスはじろりと睨むと冷たく言い放った。 「なにがようこそだ。私はお前に大金を払ったんだぞ。それがこんな失敗になるとはな!……どう落とし前つけてくれる。」 「崖から落ちていくのをみたもんで、てっきり……。でもこちらの失敗には変わりませんからね。お詫びとして貴方様のお願い、なんでもお聞きしましょう。」 ルーカスは暫く考えこんだ後、男に向かって言った。 「その言葉、信じていいのだな。……なら私の願いはただ一つだ。…リヒテルを殺せ。」

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