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3 夏休みは時間が余る

 夏休みに入るとほぼ連日ホテルへ通った。和泉は最初の頃よりは大人しくなり、減らず口も叩かないし、俺を殴ろうともしなくなった。今もそうだ。今俺は和泉をうつ伏せに押さえ込み、尻にペニスを突っ込んでズコバコやっているわけだが、こいつはひたすら従順に行為を受け入れている。   「おい、もっと締めろ……はッ、マジで具合のいい穴だぜ、こいつァ……」    上から叩き付けるように腰を振る。ギシギシギシギシ、ベッドがうるさい。床までもが軋んでいる。和泉はシーツを握りしめ、唇を噛んで揺さぶりに耐えている。意地でも声は出さないし、勃起もしないし、イかない。けれど俺は満足だ。今こいつを組み敷いているのは、他でもないこの俺なのだから。   「くぅッ……出るッ、出すぞッ……ッ!」    射精の瞬間ペニスを引き抜き、和泉の尻にぶち撒けた。引き締まった形のいい尻が、俺の体液に塗れる。濁った液がどろどろ垂れて、太腿までをも濡らしていく。アナルは既に満タンで、溢れた精液がベッドを汚す。   「はァ~~ッ、さすがにもう出ねぇ。キンタマ空っぽだ」    ベッドにごろりと仰向けになる。心地よい倦怠感に包まれて、このまま眠れそうだ。和泉は俺の様子を横目で確認し、のそりと起き上がった。ティッシュを取り、黙々と精液を拭き取る。溢れたものだけでなく、中のものまで掻き出そうとする。   「おいおいおい、せっかく中出ししたんだから、そのままにしとけよな。もったいねぇだろ」 「……腹が痛くなる」 「そりゃ好都合じゃねぇか。痛む度に俺の顔でも思い出してくれよ。今日のプレイでもいいぜ。結構盛り上がったよなァ?」    和泉は精液を腹に留めたまま、下着を履いて服を着た。少し漏れてしまったのか、不快そうに眉を寄せる。   「次はいつだ」 「もう次の話かよ。そんなに待ち切れねぇの? お前も案外楽しんでんだろ」 「予定を立てたいだけだ」 「ま、ここ最近ヤリ通しだったからな。来週まで休みにすっか。金もねぇし」    わかったと呟き、和泉は帰った。まだ二十分も残っているのに、気の早い野郎だ。いつものことだが。俺は時間いっぱいまで広いベッドを堪能した。        夕方。街を歩いていると、何やら騒々しい。人通りが多く、皆何やら浮き立っている様子だ。浴衣や甚平を着た子供とすれ違う。遠くからお囃子が聞こえる。    すっかり忘れていたが、今日は夏祭りだったのだ。道理で騒がしいわけだ。人の流れに沿って歩くと、ずらりと屋台の並ぶ通りに出る。路地にも屋台はあるが、メイン通りが一番混んでいる。俺も雰囲気に当てられて、ぶらぶらと買い食いをした。    ふと、見知った影を視界の端に見つける。和泉だ。ほんの数時間前まで一緒にいたあいつが、浴衣に着替えて沢井先生と歩いている。和やかなムード、リラックスした表情で、先生とりんご飴を分け合っている。一口齧ったりんご飴を先生の口元へ持っていって舐めさせて――笑っている。文句のつけようのない、柔らかく美しい笑顔を浮かべている。    俺は二人の後を()けた。買い食いをしたりゲームをしたり、二人は親しい距離を保ちつつ決して一線は越えなかった。花火の始まる時間になると、多くの観客と同様に花火の見える位置まで移動して、適当な植え込みに並んで座る。俺は背後からゆっくりと近付き、偶然を装って声をかけた。   「あれ、和泉くん?」    ビク、と和泉の体が強張るのがわかった。   「俺だよ、俺。同じクラスのさ」 「あ、あぁ……お前も、来てたんだな」 「うち、近くだからさ。あれ、そっちにいらっしゃるのは、もしかして沢井先生?」 「奇遇だね。こんなところで生徒に二人も会うなんて」    沢井は涼しい笑顔で言う。何が奇遇だ、白々しい。   「和泉くん、沢井先生と仲良かったんだね。知らなかった」 「そこでたまたま会ったんだよ。僕は元々一人だったし、和泉も友達とはぐれちゃったらしくてね。一人ぼっちじゃ寂しいだろう? せっかくの夏祭りなんだから」    俺は和泉に話しかけたのに、代わりに沢井が答える。べらべらと流暢に嘘八百を並べている。内心嗤ってしまう。   「俺も、一緒に来るはずだった奴が急に風邪で来れなくなったんですよ。高校生にもなって風邪かよって揶揄ってやったんですけどね」 「夏風邪は拗らせやすいって言うからね。早く治るといいけど」 「おかげで俺も独りぼっちで寂しくって寂しくって……あ、そうだ! 和泉くん、ちょっと付き合ってよ」    和泉の腕をぐいと掴んで立ち上がらせる。   「あっちに、もっと花火が見えるスポットがあるんだ。行こうよ」 「けど……」 「二人で行っておいでよ。僕はここで十分だから」    渋る和泉の背中を、他ならぬ沢井が押す。無知とは恐ろしいものだ。   「それでは先生、また新学期に。和泉くん、行こう」    なおも乗り気でない様子の和泉を、俺は強引に連れ去った。    祭りのメイン会場を離れ、神社を囲う雑木林に入る。ぽつぽつと街灯はあるが、ほとんど役に立っていない。和泉は憔悴した面持ちで、抵抗もせず俺に引きずられている。瞳はすっかり伏せて、夜空を照らす花火の色を映さない。   「この辺でいいか。おい、(けつ)出せ」 「……ここでするのか」 「決まってんだろ。祭りっつったら浴衣で青姦。常識だろ。裾捲って、ここに手つけよ」    和泉は俯き、浴衣に手をかけてゆっくりと引き上げる。その動作があまりにも遅いので、苛立って頭を叩いた。   「おい、グズグズすんじゃねぇぞ、このノロマ。しゃんしゃんやれ」    裾が腰まで捲れると、肉付きのいい太腿が暗闇に浮かび上がる。こうしてみると案外白い。明るい電灯の下では気づかなかった。   「はァ? てめぇ、パンツなんか履いてんのかよ。浴衣の時はノーパンに決まってんだろ」 「そんな常識聞いたことねぇ」 「履いてねぇ方がエロいだろうが。先生だってきっと喜ぶぜ? まァどっちにしろ今から俺に食われちまうんだけどな」    浴衣の裾を帯に挟み込み、下着を脱がして草むらに放る。   「は? おいてめ、どこ投げて――」 「挿れるぞ」 「っ……」    有無を言わさず尻を左右に割り開き、猛ったペニスを挿入した。和泉は目の前の巨木に手をついて衝撃を受け止める。つい数時間前までしていたから、まだ柔らかいし微かに濡れてもいる。しかしあれだけ注ぎ込んだ俺の子種は、ほとんど綺麗に掻き出されていた。   「おいおいおい、もったいねぇから掻き出すなっつったろうがよォ。そんなんじゃいつまで経っても妊娠できねぇぞ?」 「男が……妊娠なんかするかよ……」 「んだよ、ロマンがねぇなァ」    しかし立ちバックというのはなかなかいいものだ。征服欲が満たされる。青姦というシチュエーションもまた、それに拍車を掛けている気がする。雑木林で立ちバックだなんて、それこそ野生動物ではないか。   「はァ……おい、こっち向け。舌出せ」    髪を引っ掴んで後ろを向かせ、乱暴に舌を捩じ込んだ。引っ込んだ舌を無理やり吸い出して舐め回す。混じり合った唾液がべたべたと糸を引く。   「ふッ……はは、りんご飴の味だな」 「……っ!」    揶揄して言うと、後ろが締まった。   「くく……ふふ、はははッ、俺ァずっと見てたんだぜ……! てめぇらが仲良くデートしてるとこをな!」 「……い、言うな……」 「ったくよォ、隙だらけで困るぜ。りんご飴食ってんのも、射的競ってんのも、俺ァ全部見てたんだぜ……! なァ、今どんな気分だ? 沢井はてめぇを見捨てたんだ。あいつが俺に、てめぇを投げて寄越したんだぜ。まさかこんなとこでこんなことになってるたァ思いもしねぇだろうな。あいつのかわいいはーちゃんがよォ……」    和泉は思い切り上半身を捻った。俺に殴りかかろうとする。しかし後ろ向きに挿入されている状態で何ができるというのか。俺は和泉の両手首を掴んで拘束し、右手は木の幹に押さえ付け、左手は後ろ手に捩じ伏せた。   「おいおい、暴れんじゃねぇぞ。どうせろくに力も入らねぇんだろ? 膝が震えてんぜ。てめぇは黙って(けつ)締めときゃいいんだよ」 「うるせぇ……くっ、放せ……っ」 「今夜はずいぶん女々しいなァ? 心までメスになっちまったか?」    俺は体を密着させて、和泉のうなじに歯を突き立てた。皮膚を食い破ると、血の味が口いっぱいに広がる。上から完全に押さえ込んで動きを封じ、激しく腰を打ち付ける。こいつの尻と俺の太腿のぶつかる生々しい音が、真っ暗な林の中に響く。遠くで鳴っている花火の音より遥かにうるさい。   「はァ、はは、沢井は今頃、一人で花火見てんだろうなァ……あ、おい、そんなに締めんな、出ちまうだろ……」 「くそ……早く、イけよ……」 「んなこと言っても昼間散々出したからなァ……お前、中に出されるの嫌なんだよな? 腹痛くなんだろ? 俺ってば優しいからよォ、お前の態度次第じゃ、また(けつ)にぶっかけてやってもいいぜ? どうするよ」    和泉は一瞬はっとするが、すぐにうな垂れて首を横に振る。   「浴衣が……汚れる……から……」 「へーェ……」    予想外の反応に口角が緩む。   「じゃあ、代わりにどうしてほしいんだ? 言ってみろよ」    和泉は悔しそうに唇を噛みしめる。   「……そのまま出せ……」 「あァん? 聞こえねぇなァ。おねだりすんならちゃんとしろよ。このままだと浴衣にぶっかけちまうぜ?」 「ぅ……く……な、なかに……」 「中にィ?」 「だ、せ……」 「だーかーらーァ! それが他人(ひと)にものを頼む態度かっつうんだよ!」    俺は和泉の髪を乱暴に掴み、千切れそうなほど激しく揺さぶった。ぐりぐりと腰を擦り付け、早口で捲し立てる。   「なァ、言い方ってもんがあんだろ? わかるよなァ? おら、早くしねぇと出ちまうぞ。このままだと外にぶち撒けるぜ? 大事な浴衣が俺のザーメンで汚れちまってもいいのかァ!?」 「……っ……な、なかに……だして…………ください…………」    乱れた呼吸の合間、掠れた声を震わせて、和泉はようやっと呟く。脳の血管がぶち切れるほど興奮した。   「はッははァッ! いいぜ、たっぷり種付けしてやる!」    ヘロインだかコカインだか知らないが、そういうヤバい覚醒剤をやったらこういう気分になるのだろうということを、俺は今身を持って体感している。脳汁がドバドバ溢れて気分が高揚しまくり、心拍数は爆上がり、わけもわからず腰を振りまくり、和泉のうなじを噛み砕く。   「おら孕めッ! 孕めよッ……!!」    たっぷりの精液を子宮に叩き付けた。これだけ出せば確実に孕むだろう。和泉の腹の奥で、俺のペニスがドクドク脈打っている。それを和泉も感じているのか、眉を顰めて歯を食い縛る。目の前の巨木に爪を立てる。   「はァ……ふふ、ははは……種付け中出しセックス、サイッコーに気持ちいいな。なァ、和泉?」 「ぅ……るせぇ……も、抜けよ……」 「なァ、お前もよかったんだろ? 中に出してって、てめぇがねだったんだぜ。この淫乱が、外だからって興奮したのかよ」 「そうじゃね――んっ……おい、また……」    復活したペニスで再び中を掻き混ぜる。和泉の腰が逃げるが、がっちり捕まえてピストンする。   「今更一発も二発も変わんねぇだろ。出したばっかのザーメンで滑りもいいしよ。なァ、もっと楽しもうぜ。せっかくの祭りなんだからよォ……」    卑猥な水音と肉のぶつかる音とが、響き渡る虫の声を上書きする。和泉は観念したように瞼を閉じた。        翌週、熱が下がらないから行けなくなったと連絡が来た。でたらめ言うな、這ってでも来いと返信すると、三十九度近い熱でまともに動けないから無理だと返ってくる。証拠を出せと言うと、体温計の写真が送られてくる。高熱だというのは本当らしかった。俺は心が広いので、治ったら二回分ヤリまくるからなと言って許してやった。    突然予定が空白になってしまって暇なので、様子を確認しに行った。和泉の家のそばの曲がり角で、電柱の陰に隠れてこっそり覗き見る。和泉の部屋は二階にあり、窓が半分ほど開けられて、ふわりと舞い上がるカーテンの隙間に沢井の姿が見えた。

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