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第178話 光生side

今日も1人で家に帰りボーっとしていると突然スマホが鳴る。震える声で名前を呼ばれたかと思えば泣いているのか弱々しく会いたいと言う涼にすぐに家を飛び出す。 「そういえばどこにいるか聞いてなかった。」 迷うことなく家に向かっていたけどまだ部活は終わってないだろうしそもそもなにか俺に話があって連絡したんじゃないかと思えてきた。 「まさか本当に振られるとか、、?」 最近はほとんど話せていなかったし謝れてもいない。そんな状況で星くんのバスケをしている姿なんて見れば俺のことに興味がなくなるなんてことは絶対にある。もし振られたとして俺は聞き分け良くちゃんと返事をできるのだろうか。 「涼っ…!」 ポツンと玄関の前に立っている涼のそばに近づいた瞬間気持ちがブワッと溢れて気づいた時には引き寄せて抱きしめていた。 「光生……本当に来てくれたの…?」 「ごめん……ずっと謝りたかったのに遅くなって本当にごめん……」 きっとこんなにきつく抱きしめれば苦しいだろうしそれに外で触ればまた怒らせてしまう。それなのにどうしても離せない。涼の体も声も匂いも体温も感触すべてが俺の胸をいっぱいにする。 「……うぅっ…光生……ごめんね…っ…」 わんわんと泣きじゃくる涼に何もしてあげられない。こんなに泣かせるまで傷つけていた俺は最低だ。 「なんで涼が謝るの。全部俺が悪いのに。」 もういいかげん離してあげないと優しい涼をもっと困らせてしまう。これ以上俺のことを嫌いになってほしくなくてゆっくりと引き離すと涼は近づいてきてそっとキスをしてくる。 「……え?」 「…っ……あのね……この前は光生のことが嫌で引き離したとかじゃなくてっ……大好きだから…本当に恥ずかしくて……」 俺の腕をギュッと握りそんなことを言ってくる涼に頭が追いつかない。 「……でも今度からはこうやって外でキスできるようにがんばって慣れるから……まだ俺のこと嫌いにならないでほしい……」 遠慮がちに抱きついてくる涼の体は震えている。どうやら俺はいろんな勘違いをしていたらしい。 「そんなのずっと慣れなくていい。それにそんなことで涼のこと嫌いになんて絶対にならない。」 「……本当?俺のこと嫌いになってない?」 さっきまで泣いていたからか目はこれでもかと潤んでいてすごくかわいいけどもう絶対にこんなに泣かせたりしないと心に誓う。 「うん。涼のことずっと大好き。」 ギュッと抱きしめ返せば同じように抱きしめてくれる涼が目の前にいることがたまらなく嬉しい。 「光生……俺の部屋来て……」 いや突然そんな甘えた声で言われても心の準備ができていない。今の状況で部屋に行けば絶対にいろいろと我慢できなくなるし仲直りをしてすぐに手を出せばここに来たことがそれ目的だと勘違いさせてしまいそうだ。また変な誤解をさせたくないのに手を繋がれ家の中に連れて行かれてしまう。

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