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第204話
「涼くん!莉緒の隣に座って!」
「だから涼の隣は俺だって!」
あれから結局、莉緒ちゃんの部屋で光生と3人で遊んでいた。夜ご飯ができてリビングに行くとまた2人は喧嘩をしている。
「こら!2人とも喧嘩しない!」
怒られている光生と莉緒ちゃんの不満そうな顔はそっくりでつい笑ってしまいそうになる。
「もう!涼くんの隣にもうひとつ椅子置かさせてもらいなさい!そうすれば喧嘩にならないでしょ!」
光生と莉緒ちゃんの間に座っている俺はこれでいいのだろうか。これじゃまるで俺が誕生日みたいだ。
「莉緒、兄ちゃんがご飯とってあげる。」
そう言ってお皿に入れてあげる光生はなんだかんだ優しいみたいだ。
「兄ちゃんなんか大っ嫌い!にんじんばっかり入れてる!」
前言撤回だ。きっと莉緒ちゃんが苦手らしいにんじんをわざとたくさん入れているんだ。どこまでも子供な光生に呆れてしまう。
「莉緒ちゃんにんじん嫌いなの?」
「……うん、、ちょっとだけ嫌い、、」
ちょっとだけなんてかわいすぎる。元気のない莉緒ちゃんは光生ににんじんをたくさん入れられてしまったお皿を泣きそうな顔で見ている。
「ちょっとじゃないじゃん。いっつもひと口も食べてないし。」
またそんないじわるばかり言う光生を睨めばフンッと顔をそらされる。
「じゃあ俺が莉緒ちゃんの分も食べよっと!」
光生にいじわるをされシュンとしている莉緒ちゃんのほっぺたをツンツンと触るとにんじんを食べる俺のことをじーっと見つめてくる。
「んふふっ、おいしい!」
「………本当?じゃあ莉緒も食べる!」
そう言って口をあーんと開けるから小さいにんじんをそっと口に入れてみるともぐもぐと愛おしいくらいにかわいく食べてくれる。
「莉緒ちゃんすごい!にんじん食べられるじゃん!」
「えへへっ!涼くん大好きっ!!」
キラキラした顔でそう言ってくれる莉緒ちゃんがかわいくて仕方ない。
「涼くんすごいわ!莉緒がにんじん食べるところなんて初めて見た!」
褒めてくれる光生のお母さんは俺の手を握りブンブンと振ってくる。
「本当に涼くんのおかげね!ありがとう!」
そこまで感謝しなくてもと思いながらもお礼を言われるとやっぱり嬉しい。
「俺もにんじん食べられないから食べさせて。」
忘れていた。振り向けば不機嫌そうに口を開ける光生がいる。
「光生!嘘つかないの!あんたは何でも食べられるでしょ!」
すぐにまた怒られている光生はさらに機嫌が悪くなってしまった。
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