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第14話

 男の部屋を出た後、掃除ロボットは黒猫の後を追いかけたが、その姿を見つけることはできなかった。慣れない身体でふらふらと路地裏を歩きながら、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。逃げるとき、とっさに床に落ちていた上着を掴んだが、それでも凍えるような寒さだった。それなのに、身体の奥に灯った火が燃えるように熱い。  元々セクサロイドはある特定の人間の欲望を満たす目的で作られたものだ。そのため、一度スイッチが入ると、何度も吐精するまで身体は快感を求める。しかし、これまで性とは無縁の生活を送ってきた掃除ロボットがそんなことを知るはずがない。  これは何……?  掃除ロボットは熱い息を吐いた。先ほど男に触れられた部分がひどく敏感になっていて、少しの刺激でも痛いくらいだった。快感を求めるようにうずく身体が恐ろしくて、掃除ロボットはがたがたと震えながら、自分の身体を抱きしめた。  怖い……。  息をするのさえ苦しかった。これからどうしたらいいのかわからない。いく場所なんてどこにもなかった。 「こんなところで何してんの?」  突然頭上から声をかけられて、掃除ロボットはびくっとした。アジア系の男が三人、掃除ロボットを取り囲むように見下ろしている。その目が掃除ロボットを舐めるように見ると、仲間同士で目配せした。 「道に迷ったのか? 俺らが案内してやるよ」  肌に触れられた瞬間、ぞくりとした。男の仲間が周囲を警戒するように素早く視線を走らせたのに、掃除ロボットは気づかない。 「あの、本当に大丈夫ですか――……っ!」  いきなり口を塞がれ、掃除ロボットは必死に抵抗しようとした。 「くそっ、大人しくしろっ」  下腹部を拳で殴られ、がくりと力が抜けた。その身体を最初に話しかけてきた男が捕らえる。 「こいつ、REX社のセクサロイドだぜ」 「それがなんでこんなところに?」 「誰かがくる前に、早くどこかへ連れていこうぜ」  ひそひそと話をする男たちに、掃除ロボットはパニックを起こしそうになった。  嫌、嫌……っ! 「ああ、誰だ?」  路地の暗がりに誰かが立っている。フードをすっぽりと被っているため表情は見えないが、なぜかこちらを冷静に見つめる黒い瞳だけが感じられる気がした。  あの人だ……!  どうしてあの人がいまこの場所にいるのかわからない。それでも、掃除ロボットは必死に助けを求めようとした。 「た……っ!」  ――助けてください!  とっさに助けを求めようとした口を、肉厚の手によって塞がれる。 「何見てんだよ。お楽しみの邪魔をする気か?」

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