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第12話 宝物
また懲りずに次の日も俺は帰ろうとしない。これはもう帰りたくないのか……。自分の心を自分で確認しなきゃいけない様な事態に陥っている。俺の心は後に戻れなくなっているのかもしれない。
この倉庫内には奥に部屋が三つあった。
ビスのあちこちに打ちつけられた扉の内、一つはクローゼットルームのような、衣装部屋……?鏡が見える。紙の箱が積まれてる。
他一つは、ガレージや駐車場のような、工具やらタイヤやら大きい部品のようなものが沢山飾られている部屋。マウンテンの自転車もチラっと見える。
もう一つは……正夜が開けたのを覗く限りは、パソコンや機械系がズラっと至る壁に所狭く並べられて、机が置かれている部屋だ。書斎……勉強部屋……仕事部屋?作業部屋?と言った風情の。
その部屋一つを指して、正夜は顎をくいとしゃくりこう言った。
「あそこは絶対開けるな、の部屋だ」
なんだその名称。なら鍵くらいしろよ……と思った。
そしてふと思った。
あそこには俺の、あの、スケベなイヤらしい写真が、パソコンのデータの中に入ってるんじゃないの?
急に正夜の身体から電話音が煩く鳴り響く。
身頃の下部にあるポケットから電話を取り出し「僕、出てくるわ」と言って、慌てたそぶりで居なくなった。
急に部屋の中が静まり返り俺はポツンとした。
静かになると、部屋の中の明るさまで1トーン色調を落とされ、暗くされたような気さえする。
窓から漏れる日はまだ午後の光なんだが、…………ただでさえここは、無機質な、灰色の、常に隅は薄暗い、人の住む場所じゃない、倉庫なんだから。
◇◇◼️◇◇
「開けるな、というのは」
開けてくれってことだよ。
俺はソロリ、ソロリと、問題のドアノブに手をかけ、中に足を踏み入れた。
よくわかんないけど、正面の机の椅子に座り、机にあるパソコンをブンと立ち上げて見る。
これ……誰かがいじったことがわかるんだっけ?どうだったか。
立ち上げたところで、英数字の名前の羅列がついたフォルダ名や何やらが並ぶばかり、わかりやすいものは一切無く、そこで進行が立ちすくんだ。
Saku.とか、名前の付けられたフォルダなんかがもしあればわかりやすいんだが、どこも見当たらなかった。
椅子にもたれ溜息を思いっ切り吐いた。
何気無く机の引き出しを開けてみる。
そこには、光る円盤ディスクが無名で入っているディスクケースがあった。
ケースには「僕の宝物。絶対誰も見ちゃダメ」と書かれてある。
見ちゃ駄目というのは…………見てほしいってことだよな?
俺式の解釈で無理矢理捻じ曲げ、ディスクを透明なディスクケースから取り出し、パソコンに差し入れ再生した。
プレーヤー画面が開かれる。
なんだこれは………。
…………映像は、画質がとても粗く、ガサ付いていて、線が画面を割る様に時たま走り乱していたりする。データが傷ついているのか、それともビデオだったものを更にディスクに焼いたのか。黒線がたまに上下を流れ、色も乱れているし、見辛い。
どれも体格のいい大人の男が複数と、小学生高学年ほどの年端もいかぬ裸の少年が一人、映っていた。
痩せ細る少年の髪は肩ぐらいまで長く伸びて、目元に髪が長く鬱陶しげにかかっている。
口に何かをくわえているので、よく見てみたらそれは、男の性器だ。大人の男に押さえられている。
内容は……児童ポルノだ。
卑猥なタイトルと、チープなクレジットが人物に被さって映る。少年の上に『yoru』と表記されたアルファベットが流れ、男らの上にはふざけて付けたような猥雑な悪趣味のネーミングが被されて流れている。
早送りしてシーン飛ばしをすると、同一人物であろう少年が、乱暴に髪を掴まれ、殴られながら、虐待のように犯されている場面や、這わされ背後から犬にのしかかられ動物の性器挿入を受けている場面、縛られてSM行為を受けている場面や、また四つん這いに這って犬の餌皿に置かれた排泄物らしきものを食べさせられている姿など、次々と目を背けたくなる他種多様なバリエーションの惨い性のシーンが数多く収録されていた。
ほぼ無音だったが、音声収録されていたシーンもある。
「yoru君……yoru君のなか、は気持ちいいねぇ…………」
粘つく声をかけられながら犯されている、そんな聞くに絶えない音声ばかりだ。
時たまに向けられる、見ているこちらが見えているかの様な、少年の視線、瞳。それが、泣くでも喚くでも無く、ただの色の無い無表情一面しかその瞳に浮かべておらず、返ってモニター越しの俺の背筋を凍りつかせた。
飛ばし飛ばし、途中まで見たけど、収録時間半分も行かない内に、映像を停止した…………。
ううっと、吐き気を覚えてつい消してしまった。
あれは、正夜だよな……?あの、少年の顔。
背は今より随分低いけど、そうだった。
深い息が一息流れる。
顔を下に向け、椅子に脱力している。気分が悪くなってまたうっとなった。
部屋から出ようと振り向くと、そこに正夜が立って腕組みしながら俺を睨んでいた。
俺は映像に夢中になって、正夜が帰ってきたのにも気付かなかったようだ。
「見たんだ。「絶対見ちゃいけません」と書いてあるものを。フーン、朔はそんな子だったんだね」
低く冷たい声で、突き放されたように言われる。
や、ごめん、だけど。それは。
「ご……ごめん……」
「いいよ。しまえって。それ」
手に持ち放しのディスクを、言われるがまま元あった引き出しにしまった。
奴は面倒くさそうに頭をかいている。
俺も慌てた。
「何これ。おまえ何でこんなことを……」
「両親に金と引き換えに地下流通モノポルノに出演させられたんだよ、取引されたそういう子供達が集められてるとこに暮らさせられて」
「そ、そうなんだ……」
正夜は僅かに声にも表情にも苛つきを醸しながら頭を掻いている。
「こっちこい、朔」
部屋から出る。鍵くらいしたらいいのに。この部屋。厳重に、幾重も南京錠なんか嵌めてしまえよ。そしたら俺も、見なかったのに。あんなの、見たくないよ……。
いつもの部屋に戻ったら腕を引っ張られてベッドに連れていかれ強引に押し倒されてしまった。
正夜を押しのけようとすると「気持ち良いこと、しよう」といって、俺を押さえつけては強い力でどんどん手を進めてくる。
やっぱりムシャクシャしたのだろうか。
いつもより、考えなしに触っている気がする。
こんな気持ちを誤魔化すためにする哀しい行為は嫌だよ。こいつは俺が泣いて、行為を止めるやつじゃないけど、止めさせたいわけじゃなくて、ただただ哀しさが溢れてきたからという理由で大泣きしてしまった。
ねぇ、誰か。
俺も情緒不安定になってる……?
しばらくの時がそのまま過ぎた。
……そんな調子で、何をしても脇目もふらずにわあわあ泣いている俺に苛立ったのか。
「……何で泣いてんの」
「……なっ……なんかっ……哀しいんだもんっ…………胸が痛いんだよぉっ………おまえも可哀想だしっ………俺の状態も悲しいしっ……全部、全部悲しい!全部悲しい!」
俺の言葉が終わると、これまでになかったくらいに乱暴に俺を手荒く扱ってきた。レイプするみたいに。
レイプするみたいに?そりゃ、最初からレイプだったんだ。でもこんなのはまるで本当のレイプみたいだ。本当のレイプって何だよ。そういやこいつは、最初に俺を襲った段階から、如何にも暴力的な強姦然とした強姦は行わない奴だった。だった筈なのに。
これはヒドい。
耳が潰れるんじゃ無いかってぐらい痛く頭を押さえつけて、噛み付く様に喉元に吸い付き、服を捲り上げ、乱暴に乳首を抓り、無理矢理服を剥ぎ取り、濡らしもしない所に強引に力任せに挿入してきた。
痛いー!
「痛いって!濡らさないのはやっぱり痛いって!正夜!!痛え!!」
「……じゃあ、泣くのを、止めろよ」
俺の涙はそんなに気に触ったのか。
正夜の動きが止まる。俺に被さったまま、表情は何も無く、俺の顔を見下ろしている。
一生懸命涙を止めるが、止めようとするほど、まだ出たがる涙がヒックヒックする。
涙なんて自分の意思で止め閉め出来るモノじゃ無いのだということを、俺の体は思い出した。
こんなに泣くのなんて、正夜と出会ってからだ。それまで滅多なことで、泣いたりなんかしなかったのに。
涙を堪える。堪えるのがまた悲しくて涙が出て行きたがりそうになるのだ。
「……………俺……、俺………、家に、帰るよ、今日、もう、これから……ひっく…………」
「朔…………」
「何日も……ひっく……泊めてくれて……ありがとうな……正夜……ひっく……かえ……る……」
正夜に逃げようとする俺の両肩を掴まれる。
「……朔はそれでいいの?家に帰って、また元の生活に戻ってけんの?」
捲り上げられた俺の胸に吸いつかれる。
「この身体は…………僕ナシで、平気でやれんの……?」
乳首に吸い付き、外してはもう片方の乳首を口に含んで吸い付く。
ゾワゾワする快感が走る。
「ん……っ」
それでも、俺は断らなきゃ駄目だ。
「やれるよ、大丈夫だよ、ここに来て、急に何かがそんなに変わるわけないっじゃん…………!!俺は、そんなに、変わってないよ……!!」
「母親は?家に帰ってまた僕にヤられたあの母親の顔を見ながら平然と暮らしてけるワケ?」
母について言われ、流石に瞬間的にカッとなる。
「あ!あんなの!いつものことだよ!一度や二度じゃ無いんだ……っ、母さんが浮気したのなんて!父親に捨て置かれて毎日暇そうに過ごしてんだから。あーあ、またか……!って、日常茶飯事だね!!」
強く正夜を睨みつけて、それから横に顔を背ける。
正夜は睨まれても睨み返してこなかった。
そしてそのまま何も言わず、胸を口で愛撫する続きを再開した。
「んくっんくっんんっ……ぁっ…ぁっ」
丹念に乳頭を舌で舐めくりこね回され、転がされ、歯と歯の間で潰され、口に含まれる。
片方の乳首を指でコリコリ捏ねられながら、唾液を乗せられ乳首を飴のように食べられる。
「…………ぅう………ん」
気付けば涙は止まっていた。
舌と手のひらはいつの間にや胸から俺の腹に移動し、手を当てられながら、薄く割れた腹筋をずっと舐められ、滑らかに舌でマッサージされる。
真ん中の線を舌で沿い、臍の周りを円を描く様に何周も舐められ、脇へと舌がいってはくすぐってまた戻ってくる。
入念に、時間をかけて、鳩尾から恥骨、脇腹、そして薄く盛り上がったシックスパックの一つ一つを、舌で輪郭を囲う様なぞり舐め、更にはその下の下腹にも移動していく。
腹を舐められただけでまるで頭の中身だけが一回飛んでイキそうになる。
両乳首にもまた両手が伸ばされ、両方の乳首をコリコリ捏ねられながら、凄く時間をかけて、腹を舌で愛撫されている。
もどかしい……けど、気持ちいい。
口から次々と嘆息が漏れるが、それは快楽を更にと要求するような溜息だった。
「あ……駄目だぁ……正夜ぁ……そんなことされたらぁっ……欲し…………っ」
駄目だ、欲しくなる、なんて言ってはいけない。喉仏で唾を飲み込み言葉を殺す。
正夜はそんな俺の言葉をそしらぬ顔で無視し、聞き流して、愛撫を続ける。
下腹に下がった舌がとうとう、乳首と腹の愛撫によって露骨に勃ち上がっていた俺のちんちんに触れた。
腹につくほどのそれを唇を当てるだけで、咥えずに、滑らすように唇を移動させていく。
(ソレ舐めてぇ………、舐めちまってよ……)
どれだけ心で願っても舐めてはくれない。
唇で裏筋をツツーっとなぞりあげたら、先端の鈴口の穴に舌を細めてネジ入れてきた。
「んンッ」
舌は細穴の中を動き、敏感な先を犯され、喉がしなる。
尿道を圧した舌が抜けるとじゅわりと透明な先走りが溢れた。
本格的に正夜の舌が俺のちんこを覆った。
ちんこは広げられた舌にベルベットのように包み覆われ、いたぶられるようにイキそうにはならない強さで弄ばれた。
同じ男にされるフェラはクソほど気持ちがいい。
俺の先走りを付け、指も尻の穴に勢い良くねじ込まれた。
咥えられながら二本の指で前立腺をゴキュゴキュされる。
身をよじる。
(あーっ!!クソォー!何でこんなに気持ちいいんだァーッ!!うわァーッ!!!もういやだァーっ!!)
その調子でずっと咥えられていたらついに俺の方から
「いっ……いれてっ………!!正夜、もう……お願いだから……入れて欲しい…………」
と腰を動かしながら欲しがり、ねだっていた。
でも正夜は入れようとしない。
そのまま指を下から入れ続けながら舐め続ける。
俺の足がピクピクなり、イキに近づくと、指の動きがわざと遅くなり、イケないように波を遠のけられる。
(くそぉー!何でっ……!!入れてくれないんだぁ!!)
ちんこが引き攣る。
タマが張って痛い。
身体は切ないほどに吐精を求める。
「ぁあアッ!!……好きだからッ、帰らないからッ……!ずっとこうしているからッ…入れてくれッッ!!!!お願いっ……だよ………」
ズルゥッ!と指が引き抜かれた。
舌も止められた。
でも正夜は何もしてくれない。
(…………………あ……れ…………)
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