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第3話「あいつに見られるなんて」
【side*奏斗】
最悪。最悪。最悪。
マジで最悪。
よりによって、あいつに見られるなんて。
ゼミのいっこ下の後輩。|四ノ宮 大翔《しのみや ひろと》。
ルックスは半端なく良い。すげえ目立つ。大学に入って三か月弱で既に有名人。漫画じゃあるまいし「王子」という言葉で呼ばれて違和感のない奴なんて、そうそう居ない。
あんだけ良い男だと、男には疎まれそうなのに、ゼミの中では性格も良いって評判で、とにかく凄く人にモテる奴。
だけどなんか。
何でなのか、自分でも分かんないんだけど。
オレはあいつのことが何か苦手で。
何がって。
……ものすごく、うさんくさいと感じてしまう。
でも、これは、オレしか思ってないみたいだけど。
短期間でどんどん評判が良くなる程に、ますます何だかなぁって感じで。
だから、とにかく絡まないようにしてたのに。
なのに。ほんの数分前。
男とラブホの部屋に入るとこ。
四ノ宮に見られた……。
マジで、神様、時間を戻してくれ。
そしたら、オレ、このラブホに入らないから。
◇ ◇ ◇ ◇
オレは、雪谷 奏斗 十九才。大学二年生。
ゲイ。受け。
人生、今が楽しければいい。
そう思ってる。
今が幸せじゃないのに、未来が幸せな訳ない。
幸せな今が繋がって、繋がって、繋がって――――……。
そしたらきっと、ずっと幸せでいられるはず。
幸せな今の為に、心がけていることはただ一つ。
「執着しないこと」
物でも人でも。執着しないで、心穏やかにいること。
その瞬間の優しさがあればいい。
抱き合って、その時だけ愛してくれればそれでいい。
ずっとの愛情を求めあって、
執着して、ずっとずっといつまでも一緒になんて。
執着すればするほど、その対象が居なくなった時、
きつすぎる。
オレはもう二度と、そんなことになりたくない。
だから、今が気持ち良ければいい。
どんなに体の相性が良くても、二時間限りの関係で終わり。
泊りで過ごすなんて、絶対にしない。
得体のしれない初めて会う奴はさすがに嫌だから、いつも決まったクラブに行って、なんとなく知り合いの知り合いとか、多少の繋がりがある奴を選ぶ。ゲイの奴もいるし、違う奴もいる、普通のクラブだけど、皆ゆるくて楽な場所。大体男に興味ある奴が声をかけてくることが多い。
オレが選ぶ相手は、なるべくモテそうな良い男。
何でって。
そりゃ経験が多い方が上手だし。
相手に困ってないから執着もしてこないし。
あ、ちなみにオレはめっちゃモテる。
ゲイの受けとして遊ぶなら、オレってイイんじゃないかな。
そこらの女の子より可愛いって、よく言われる。
肌白いし毛深くないし、髪の毛サラサラで、瞳が大きくて睫毛も長くて。
アイドルみたいとかお人形みたいとか、聞き飽きる位言われてきた。
可愛い系の受けを求めてる奴には、めちゃくちゃ褒められる。
抱き心地も良いみたい。
気持いいことは好きだし、残念ながら相手が多少下手でも、演技もできてしまうし。バレたことは無い筈……。
今迄、求めた時に、相手が居なくて困ったことは、無い。
で、数時間前クラブに行ったオレは。
今日も無事、イイ男をゲットした。
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